自動車メーカーと部品サプライヤーの立場が逆転!?
EV化が進んだ先の自動車産業の構造とは?
2017.11.13
デイリーコラム
「EVシフト」の“見当違い”
最初にひとこと申し上げたい。
2017年夏以降、テレビ、ネット、そして経済雑誌等で「EV(電気自動車)シフト」に関する報道が急増しているが、そのほとんどはEVシフトの本質について“見当違い”をしている。
EVシフトに注目が集まったのは、英国とフランスそれぞれの政府が今年7月に「2040年までにガソリン車およびディーゼルエンジン車の販売を禁止する」との方針を発表したことが大きなきっかけだ。また、インドでも「2030年までに自国で販売するすべてのクルマをEVにする」といった野心的な施策を実行に移そうという動きが政府の一部にあることが、大きなニュースとなって取り上げられた。
さらに、中国では自動車メーカーに対してEV、プラグインハイブリッド車、燃料電池車などの販売を義務化するNEV法(新エネルギー規制法)が2019年から実施されることにもメディアの注目が集まっている。
まるでこうした動きにシンクロ(同期)するように、2017年9月の独IAA(国際自動車ショー:通称フランクフルトショー)ではドイツメーカーを中心に、EVの量産車やコンセプトモデルの発表が相次いだ。
このような世界全体での事象を、多くのメディアが「次世代のEV技術が確立されたためだ」と説明するが、それが“見当違い”なのだ。
筆者は世界各地で定常的にEVに関する取材を続けているが、EV技術のキモであるリチウムイオン電池の体積あたりのエネルギー密度を大幅に拡大する技術が量産ベースにのったとか、急速充電器の最高出力を大幅に上げることに量産メーカー各社が合意したという類いの話を、最近では聞いたことがない。トヨタが2020年代前半に量産を目指している全固体電池についても、量産効果があがって普及するのは、実際には2020年代後半になるだろう。
では、最近のEVシフトの正体とは何か?
それは、ジャーマン3(ダイムラー、BMW、フォルクスワーゲングループ)が仕掛けた大規模なマーケティング戦略である。もちろん、上記のような各国の国内政治の案件への対応や、EVに関する法規をクリアするということが大前提にあるのだが、それ以上にジャーマン3の企業戦略という面が極めて強い。
そのため、日系自動車メーカー各社は「EVの技術革新がさほど進んでいない現時点で、まさかジャーマン3がここまで攻勢に出るとは!?」と、想定外の市場の動きに驚いているというのが自動車産業界の実態である。ちなみに、筆者は平素から日系自動車各メーカーの役員らと各種案件に関して意見交換する機会を得ている。
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