日産セレナNISMO(FF/CVT)
マイルド亭主関白宣言 2017.11.21 試乗記 ファミリー層に人気の「セレナ」に、威厳とスポーティーさを備えた「セレナNISMO」が登場。専用サスペンションで15mm車高を下げ、排気音にもこだわったヤル気系ミニバン、その走りとは? 日産のテストコース「グランドライブ」で試乗した。そこそこ威厳のあるオトーサンに
自動車メーカーが自社のモータースポーツ部門や関係会社と連携して、高級スポーティー仕様を開発するのは世界的な流れだ。メルセデス・ベンツとAMGやBMWとM社の関係は言うに及ばず、スバルはSTIブランドを前面に打ち出し、トヨタもGRというブランドを立ち上げた。
確かに、「F1直系の技術」とか、「WRCで得たノウハウを注入」といったうたい文句にクルマ好きは弱い。ちょいとばかり高くてもつい財布を開いてしまう傾向は、自分にも思い当たるフシがある。
日産にも以前からNISMOモデルが存在したけれど、さらに連携を強化するために2017年4月にNISMO CARS事業部を立ち上げた。ここに日産、NISMO、オーテックジャパンのスタッフが集まり、モータースポーツで培った技術やノウハウを生かしたスポーティー仕様を開発することになる。
今回試乗したセレナNISMOは、NISMOブランドの魅力をファミリー層にまで広く伝えるために企画されたモデルで、2016年8月にフルモデルチェンジを受けた現行セレナがベースとなる。
パワートレインにはセレナの主力であるマイルドハイブリッドシステム「S-HYBRID」を搭載。外観は「ハイウェイスター」を基に、前後バンパーやリアスポイラー、フロントグリルがNISMO専用デザインとなっている。
日産のテストコース「グランドライブ」で試乗をスタート。オプションのレカロ製シートは、乗降性を考慮してサイドサポートの張り出しを控え目にした専用タイプで、実際に乗り込みは容易。アルカンターラと本革を組み合わせた専用ステアリングホイールは握り心地がよく、スエード調のドアトリムの内装と相まって、高級な雰囲気を醸す。
走り出してみると、勾配のある比較的タイトなコーナーをスムーズにクリアしたことに好印象を持つ。ロールはよくチェックされていて、グラッと傾くことなく、ステアリングホイールを切れば切った分だけ素直に曲がる。
これは、後に中高速コーナーを組み合わせたS字カーブでも同じ印象を得たが、そう感じた理由はいくつか挙げられる。
まず、車体の各部にクロスバーやサブメンバーなど、合計で15カ所の補強をしている。補強によってボディーのねじれが減り、結果的に足(サスペンション)がよく動くように調教されている。そのサスペンションは車高を15mmダウンした専用セッティングで、これが姿勢変化を少なくすることに貢献している。
タイヤがどの方向を向いているかをくっきりと伝える、手応えのしっかりしたステアリングホイールのフィーリングも好ましく感じたが、果たしてパワステのセッティングも専用にチューニングされているとのこと。
コース内には首都高速のつなぎ目のような段差や、洗濯板状の荒れた路面も用意されていたけれど、乗り心地も悪くない。
レスポンス重視のセッティングが施されたエンジンとCVTがもたらす加速がシャープに感じたのは、専用のマフラーからのヌケのよい音によるところも大きいだろう。
日産のホームグラウンドでの試乗だからいいところばかりが見えたのかもしれない。けれどもスポーティーかつ、濾紙(ろし)で濾(こ)したように雑味を取り除いた洗練を感じさせた……、という結論で終わろうとしていたけれど、最後に後席に乗ってちょっと印象が変わった。
運転席ではあまり感じなかった路面からの突き上げを、後席ではかなり感じる。それから、レカロ装着の前席と違って後席は平板な形状だから、横Gがかかると体をホールドするのが難しい。動きがシャープになってオトーサンは楽しく、後席も快適で家族円満、というマジックはなかなか難しいものだ。
『巨人の星』の星 一徹とまではいかないまでも、『サザエさん』の波平さんぐらいの亭主関白にふさわしいと思う。マスオさんだとちょっと難しい。
(文=サトータケシ/写真=阿部昌也/編集=大久保史子)
【スペック】
全長×全幅×全高=4805×1740×1850mm/ホイールベース=2860mm/車重=1720kg/駆動方式=FF/エンジン=2リッター直4 DOHC 16バルブ(150ps/6000rpm、200Nm/4400rpm)/モーター=交流同期電動機(2.6ps/48Nm)/トランスミッション=CVT/燃費=--km/リッター/価格=341万9280円
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【試乗記】 2026.8.17 BMWの新世代電気自動車の第1弾である「iX3」がいよいよ日本の道を走り始めた。さすが「ノイエクラッセ」をうたうだけあって、内外装だけではなく、運転感覚もまた新しい。「Mスポーツ」グレードの仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・トライデント660(6MT)【レビュー】 2026.8.15 英トライアンフのミドル級ネイキッドスポーツ「トライデント660」が、大幅に進化。エンジンを強化し、フレームやサスペンションを見直すなど、全方位的に走りに磨きをかけてきた。速さと乗りやすさを同時に追求した一台の、ライドフィールを報告する。
-
トヨタRAV4 Z(4WD/CVT)【試乗記】 2026.8.12 トヨタの人気SUV「RAV4」が6代目へと進化。どれくらい人気なのかは本文をご覧いただきたいが、日本だけでなく約180もの国と地域で愛されているモデルゆえに、その仕上がりはとにかく手堅く、そして隙がない。街から高速道路、さらに山道まで走り回って、気になったのはわずか1カ所のみだった。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.8.11 新型電気自動車「ES90」は、ボルボが「フラッグシップクロスオーバー」と紹介する新種の5ドアハッチバックモデル。「SPA2」プラットフォームによるゆとりあるボディーと、ボルボの次世代電気自動車アーキテクチャーの織りなす走りを報告する。
-
テスラ・モデルY Lプレミアム(4WD)【試乗記】 2026.8.10 日本でも好評を博す、テスラのSUVタイプの電気自動車「モデルY」。その6人乗り・ロングボディー仕様が「モデルY L」だ。実際に機能性や走りに触れてみると、決して「補助金頼み」とは言えない、同車の人気の理由が分かってきた。
-
NEW
マツダCX-5 L(4WD)【試乗記】
2026.8.19試乗記マツダの販売の中軸を担うミドルクラスSUV「CX-5」が、3代目にフルモデルチェンジ。その完成度にはどうしても期待してしまうところだが、実車の仕上がりはどうだったのか? 絶対に失敗の許されない、マツダの基幹車種の実力に触れた。 -
NEW
第125回:「日産エルグランド」と「メルセデス・ベンツVLE」(後編) ―古豪復活と新勢力の出現で進むミニバンデザインの多様化―
2026.8.19カーデザイン曼荼羅帰ってきたキング・オブ・ミニバンこと新型「日産エルグランド」に、メルセデス・ベンツが世に問うた乗用MPVの「VLE」。古豪の復活とニューモデルの登場で、高級ミニバンのトレンドはどう変わるのか? オラオラ系が幅を利かすミニバンデザインの未来を考えた。 -
NEW
新型「キックス」がスマッシュヒットの日産 次なる一手のコンパクトミニバンとはどんなクルマか?
2026.8.19デイリーコラム新型「キックス」が好評の日産が、次はコンパクトミニバンの発売をプランしているという。日産の国内ラインナップには(なぜか)なかったジャンルのモデルだが、果たしてどんなクルマになるのだろうか。「シエンタ」「フリード」といった強力なライバルに、どのような武器を手に挑むのだろうか。 -
トヨタbZ4XツーリングZ(FWD)【試乗記】
2026.8.18試乗記クルマの進化か、充電インフラの進化か、それともCEV補助金拡充の効能かは定かではないが、ようやく日本の電気自動車(BEV)も普及期を迎えつつある。ことに「bZ4Xツーリング」は豊かな一充電走行距離と優れたドライバビリティーが自慢のトヨタの最新作だ。FWDモデルの仕上がりをリポートする。 -
「シフトパドル」に代わる、より優れたCVTやATの変速デバイスはありうるか?
2026.8.18あの多田哲哉のクルマQ&AAT車の手動変速装置は今、パドルタイプのものが主流になっている。今後、これに代わる変速デバイスは登場するのだろうか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんが「変速と運転の今後」について語る。 -
第342回:どうしてこんなに高いんですか
2026.8.17カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。BYDが日本の軽自動車市場に向けて独自開発した電気自動車「ラッコ」が上陸した。早速、愛車「ダイハツ・タント」の後継として検討すべく、近所のディーラーで試乗することに。果たしてその印象は?








































