ホンダF1の何が問題だったのか?
マクラーレンとの「2度目の結婚」を振り返る
2017.12.01
デイリーコラム
遅れを取り戻すのが難しい現代のF1
元世界王者のフェルナンド・アロンソに「(下位カテゴリーの)GP2のエンジンだ!」とこき下ろされ、かつてともに頂点を極めたマクラーレンには三くだり半を突きつけられたホンダ。「F1第4期」で、ホンダのプライドとブランドは大きく傷ついた。いったい何が問題だったのか。
1988年からの5年間80戦で44勝、合計8タイトルと「最初の結婚」で大記録を打ち立てたものだから、2015年に「マクラーレン・ホンダ」が復活した時には誰もが大きな期待を寄せた。だが「2度目の結婚」となった3年間60戦では、最上位が5位(3回)、コンストラクターズランキングは6位(2016年)がベスト。優勝はおろか表彰台にすら届かないという残念な結果だった。
マクラーレン・ホンダは、どうしてここまで苦戦したのか。振り返れば、最強タッグとみられていた2社の前途は、当初から雲行きが怪しかった。2015年の冬のテストではトラブル続きでまともに走れず、初年度はぶっつけ本番、実戦で解決策を施していく1年となった。この年はアロンソ、ジェンソン・バトンという名手をもってしても大苦戦、チームは前年のランキング5位から9位に転落。ホンダは信頼性に加え、特に熱エネルギーを電気に替える新技術「MGU-H」に難儀した。
現行のF1パワーユニットは、ひとたび問題が起きるとその解決が難しいという状況にある。コスト抑制の観点から実走行テストの回数は極端に少なく、開幕前に2回、開幕後も数回しか用意されていない。さらにパワーユニットの主要6コンポーネントを規定の4回以上交換するとグリッド降格ペナルティーを食らってしまうため、矢継ぎ早に改良部品を試すということもできない。内燃機関たるエンジンに加え、発電機構、蓄電装置やターボ、それらの制御ユニットと、ただでさえ複雑怪奇なパワーユニットの開発には多くの足かせがあるのだ。
2年目の2016年は復調しランキング6位となったが、今季は再び信頼性と遅さに泣き、9位に戻ってしまった。これは今年からパワーユニット開発規制(トークンシステム)という足かせのひとつがなくなり、パワーユニットの根本的な問題解決に向けて大胆な改良が加えられるようになったからである。
そもそもホンダの準備不足ということもあった。2014年から始まった1.6リッターV6ターボハイブリッド時代の雄であるメルセデスは、ルール施行の数年前からパワーユニット開発に着手していたといわれている。一方ホンダは「第3期」(2000~2008年)から6年間のブランクを挟んでいたばかりか、F1復帰を正式表明した2013年5月から2年もしないうちに新規のパワーユニットを実戦に投入。ライバル3メーカーに対して、相当な遅れをもって戦わざるを得なかった。
さらにマクラーレンとの協議の末、マシンを極限にまで高効率に仕上げるための「サイズゼロ」というコンパクト化にもチャレンジすることとなり、ハードルは一段と高まった。ホンダのF1復帰プロジェクトは、当初から「二兎(にと)を追うものは一兎も得ず」だったのかもしれない。
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