新型「X3」は「7シリーズ」の兄弟車?
BMWの新世代プラットフォーム戦略を考える
2017.12.04
デイリーコラム
これまでとは全然違う
新型「BMW X3」の試乗会に参加して、相当に驚いた。自分の抱いていたイメージとあまりにかけ離れていたからだ。
欧州では夏前にデビューを済ませている新型BMW X3について、筆者は今年9月のフランクフルトモーターショー取材で現物を目にしている。しかし、そのときの印象は「先代モデルとあまり変わってないなあ」というもの。今回の第3世代モデルへの進化は、あまり大きなものではないと思い込んでいたのだ。
しかし、それが大間違いであった。新しいX3は、非常にコンフォートだった。インテリアの質感は高く、静粛性も高い。乗り心地も十分に快適だ。アクセルを深く踏み込んでいけば、BMWらしいスポーティーな動きも見せるが、全体としての印象は“スポーツ”ではない。
もともとX3は、スポーティーセダンである「3シリーズ」から派生したモデルで、他のオフローダー然としたSUVとは一線を画す快活な走りが特徴だった。誕生当初はBMWのSUVのエントリー車種でもあったから、なおのこと若々しさが強調されていたのだろう。「X1」の登場もあって2代目のモデルでは「コンフォート路線に寄ってきたな」と思ったが、それにしても最新モデルは予想以上に、良いモノ感たっぷりの高級SUVとなっていたのだ。走ってみて、ものすごくクオリティーが高くて驚いた。それこそ「オーバークオリティーじゃないの?」と思うほどに。
だが、よくよく考えてみれば、その変化も当然だったのだろう。なぜなら、新しいX3は3シリーズの派生モデルではない。プラットフォームには最新「7シリーズ」と同じものが使われているのだ。
“伸縮自在”の新しいFRプラットフォーム
もちろん、まるっきり同一のものが使われているのではない。しかし、基本となる部分は同じ。新世代のプラットフォームはトレッドもホイールベースも変更が可能で、広くさまざまなFRモデルに展開できるようになっている。昨今のプラットフォーム共有化をBMWも大々的に採用してきたのだ。しかもFR用とはいえ、BMWのラインナップでは3シリーズから将来登場するであろう「8シリーズ」までカバーできる。なんと広いレンジに対応できるプラットフォームなのかと驚くばかりだ。
この新しいプラットフォームを、BMWは7シリーズに次いで今年の「5シリーズ」にも採用。そして3番目の採用となるのが、新型X3というわけだ。7シリーズにも使われるものなのだから、コンフォートに仕上げようとすればいくらでもできる。そんなもともとの資質が、新型X3の走りに表れたのだろう。
この先に登場するであろう新型3シリーズにも、同じプラットフォームが使われるのだろうが、その走りは新型X3同様にコンフォートなものになるのだろうか? それとも、逆にスポーティネスを強調したものになるのか? はたまた、コンフォートとスポーティネスを高次元で両立させるのか? X3というヒントがあるだけに、次期3シリーズへの期待は高まるばかり。3シリーズから独立した新型X3に乗り、逆に3シリーズの未来を思う。そんな新型X3の試乗会であった。
(文=鈴木ケンイチ/編集=堀田剛資)

鈴木 ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。