トヨタ流のクリスマスプレゼント?
立て続けの“電動化”記者会見にみるトヨタの思惑
2017.12.25
デイリーコラム
トヨタの真意は何か?
トヨタが12月13日、パナソニックと「車載角形電池事業の協業について検討を開始した」と発表した。
この会見が始まる少し前、会見会場内からは新聞やテレビ局の記者らが「どうして、いまさら?」とヒソヒソ話するのが聞こえてきた。そもそも、トヨタは1998年からプライムアースEVエナジー社(旧パナソニックEVエナジー社)からハイブリッド車向けの電池の供給を受けており、その数は累計で1200万台分を突破している。すでに2社は強い関係で結ばれているのだ。
こうした両社の強固な関係が、今後どのように変化するのか?
集まった記者のトヨタ・豊田章男社長とパナソニック・都賀一宏社長への質問は、その点に集中した。
それに対して、両社長は来るべきEV時代を見据えて、「高性能な電池の安定供給を確保することが目的」と言うのにとどめた。また、豊田社長は電動車の販売目標台数について、2030年までに現在の年間147万台の3倍以上となる550万台を想定していると述べた。内訳としては、EVと燃料電池車の合計で100万台と見込む。
では、なぜこのタイミングでトヨタとパナソニックは電池開発と製造について連携強化を公表したのか? 最大の理由は、ジャーマンスリーと自動車部品の2トップがこの1年ほどで急に仕掛けてきた、「EVシフト」戦略に対するけん制球だと筆者は見る。
拡大 |
“ジャーマンスリー+部品2トップ”へのけん制球
ジャーマンスリーとは、ダイムラー、BMW、そしてフォルクスワーゲングループ(VW)の自動車大手3社。自動車部品2トップとは、ボッシュとコンチネンタルである。これらドイツの5社は、世界自動車産業界においてのリーダーである。
その中核であるVWが、2015年にディーゼルエンジンの排出ガス規制に関する大スキャンダルを起こした。だが、それから1年後の2016年6月、VWは中期経営計画「TOGETHER – Strategy 2025」で、EVシフトを宣言。すると、ディーゼル不正問題がメディアの中で徐々に風化し、代わってEVシフトが書き立てられるようになった。
時期を同じくして、ダイムラーは次世代事業の戦略を「CASE」と命名する。コネクテッド、オートメーテッド(自動運転)、シェアリング、そしてエレクトリフィケーション(EV)の頭文字を取ったものだ。
こうした動きが、ドイツ自動車産業界の軸足となり、それが日米へと波及したことに、トヨタ幹部は驚いたに違いない。この動きは技術開発を優先したものではなく、企業イメージを意識したマーケティング戦略の意味合いが強かったからだ。
近年、トヨタはEVについて、国や地域が定める販売規制への対応を第一に考えてきた。それが、米カリフォルニア州のZEV法(ゼロ・エミッション・ビークル規制法)と、中国が2019年から実施するNEV法(ニュー・エネルギー・ビークル規制法)だ。これら2つの法律では、EVや燃料電池車などの電動車の販売台数をメーカーそれぞれに義務付けている。
トヨタとしては、ZEV法とNEV法へのベストマッチを考えて事業戦略を練っていたところ、ドイツ勢がEVシフトというマーケティング戦略を一気に仕掛けてきたのだ。
拡大 |
内製化か自前主義からの脱却か
上記の会見の5日後、トヨタは電動車に関する今後の事業を説明する会見を開いた。その中で、EVは2020年以降に中国を皮切りに導入し、2020年代前半に、日本、インド、アメリカ、欧州に順次導入することを明らかにした。また、燃料電池車も2020年代に乗用車と商用車での商品ラインナップを増やすとした。
こうしたなかで、今後課題となるのが電動パワートレイン関連部品の安定的な確保だ。最も重要な部品が、電池である。13日の会見で、パナソニックの都賀社長は、現在テスラに供給している円筒形リチウムイオン二次電池はそろそろ性能限界にきており、その先には角形リチウムイオン二次電池の開発と製造が必須となると述べている。また、トヨタがこれまで基礎開発を続けてきた全固体電池については、豊田社長も都賀社長も初期的な量産は2020年代前半に可能だが、量産効果が出るのは当面先という考えだった。
こうした自動車メーカーと電池メーカーとの関係は、この5年ほどの間でさまざまな動きがあった。ダイムラーや日産は自己資本を投入した内製化を進めてきたが、日産は電池事業を中国の投資会社に売却した。またBMW向けでは、ボッシュと韓国サムスン電子の合弁企業SBLiモーティブが解散し、現在はサムスン電子がBMWのEVとプラグインハイブリッド車向けのリチウムイオン二次電池を供給している。
今後、EVシフトが本格化する中で、電池について自前主義を貫くのか、それともトヨタのように大手電機・電池メーカーとの強固な連携を目指すのか、自動車メーカーによって選択の差が出てくるだろう。
(文=桃田健史/編集=堀田剛資)
拡大 |

桃田 健史
東京生まれ横浜育ち米テキサス州在住。 大学の専攻は機械工学。インディ500 、NASCAR 、 パイクスピークなどのアメリカンレースにドライバーとしての参戦経験を持つ。 現在、日本テレビのIRL番組ピットリポーター、 NASCAR番組解説などを務める。スポーツ新聞、自動車雑誌にも寄稿中。
-
実に3年半ぶりのカムバック 「ホンダCR-V」はなぜ日本で復活を果たしたのか?NEW 2026.3.6 5代目の販売終了から3年半のブランクを経て、日本での販売が開始された6代目「ホンダCR-V」。世界的なホンダの基幹車種は、なぜこのタイミングで日本復活を果たしたのか? CR-Vを再販に至らしめたユーザーの声と、複雑なメーカーの事情をリポートする。
-
ついにハードウエアの更新も実現 進化した「スバルアップグレードサービス」の特徴を探る 2026.3.5 スバルが車両の機能や性能の向上を目的とした「スバルアップグレードサービス」の第3弾を開始する。初めてハードウエアの更新も組み込まれた最新サービスの特徴や内容を、スバル車に乗る玉川ニコがオーナー目線で解説する。
-
始まりはジウジアーロデザイン、終着点は広島ベンツ? 二転三転した日本版「ルーチェ」の道のり 2026.3.4 フェラーリ初の電気自動車が「ルーチェ」と名乗ることが発表された。それはそれで楽しみな新型車だが、日本のファンにとってルーチェといえばマツダに決まっている。デザインが二転三転した孤高のフラッグシップモデルのストーリーをお届けする。
-
F1で絶体絶命!? アストンマーティン・ホンダになにが起きているのか? 2026.3.3 2026年のF1開催を前に、早くも苦戦が伝えられるアストンマーティン・ホンダ。プレシーズンテストでの大不振はなぜ起きたのか? ここから復活する可能性はあるのか? 栄光と挫折を繰り返してきたホンダが、ふたたびF1で輝くために必要なものを探った。
-
“エネマネ”時代に突入! 2026年のF1は「F1ではなくなる」のか? 2026.3.2 レギュレーションは大幅変更。ホンダがアストンマーティンと手を組み復帰を果たすF1の2026年シーズンは、どんな戦いになるのだろうか? 本番前のテストを経て開幕戦が近づいてきた今、その“見どころ”についてリポートする。
-
NEW
BYDシーライオン6(FF)
2026.3.6JAIA輸入車試乗会2026“中国の新興ブランド”BYDにあこがれは抱かずとも、高コスパの評判が気になる人は多いだろう。では、日本に初導入されたプラグインハイブリッド車のデキは? 初めて触れたwebCGスタッフがリポートする。 -
NEW
実に3年半ぶりのカムバック 「ホンダCR-V」はなぜ日本で復活を果たしたのか?
2026.3.6デイリーコラム5代目の販売終了から3年半のブランクを経て、日本での販売が開始された6代目「ホンダCR-V」。世界的なホンダの基幹車種は、なぜこのタイミングで日本復活を果たしたのか? CR-Vを再販に至らしめたユーザーの声と、複雑なメーカーの事情をリポートする。 -
NEW
「ジープ・アベンジャー4xeハイブリッド」発表会の会場から
2026.3.5画像・写真ジープブランドのコンパクトSUV「アベンジャー」に、4WDのハイブリッドバージョン「アベンジャー4xeハイブリッド」が追加された。その発表会(2026年3月5日開催)の場に展示された同モデルの外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
スバル・トレイルシーカーET-HS プロトタイプ(4WD)【試乗記】
2026.3.5試乗記スバルから本格的な電気自動車の第2弾となる「トレイルシーカー」が登場。前後のモーターから繰り出すシステム最高出力はドーンと380PS。ただし、それをひけらかすような設定にはしていないのがスバルらしいところだ。スノードライブの印象をお届けする。 -
NEW
ホンダ・インサイト
2026.3.5画像・写真4代目はまさかの電気自動車(BEV)! ハイブリッドからBEVへ、4ドアセダンからSUVへと変身して、「ホンダ・インサイト」が復活を遂げた。ドアトリム/ダッシュボードヒーターにアロマディフューザーと、新たな快適装備を満載したその姿を、写真で紹介する。 -
BYDシーライオン7 AWD(4WD)
2026.3.5JAIA輸入車試乗会2026堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。
































