CESで示された空気に逆行!?
北米自動車ショーに見る保護主義の気配
2018.01.22
デイリーコラム
AutoMobili-Dは今年も期待外れ
冷たい雨に見舞われた後、半袖でも十分なポカポカ陽気となった2018年1月12日のラスベガス。CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)も残りわずかとなった頃、北東部のミシガン州デトロイトへと飛んだ。
NAIAS(北米国際自動車ショー)は、日本では「デトロイトショー」という名前で知られる、1907年初開催という歴史を誇る名門自動車イベントである。この時期のデトロイトは日中でもマイナス10度前後になることは珍しくない。特に今年は大寒波の影響で、NAIAS開催の10日ほど前は、マイナス25度という極寒だったそうだ。
さて、今年もNAIASは併催イベントのAutoMobili-Dから始まった。これはラスベガスのCESを強く意識したもので、次世代自動車産業について産学官が連携して考えていこうという試みだ。自動車産業には今、電動化、自動運転化、通信によるコネクテッド化、さらにライドシェアリングなどの新しいサービスの創出という、時代変革の大波が押し寄せている。そんな中、“モータウン”としてアメリカ経済を支えるこの地で、オートモービルからモビリティーへの大転換を提唱しようというのだ。
2年目となる今回も、昨年と同じく基調講演やパネルディスカッション、またベンチャーや大学、自動車部品メーカーなどによる特別展示などが行われた。だが客足はというと、昨年の第1回同様、基調講演の一部が満席となったが、多くのセッションでは空席が目立った。特別展示会場もどこもガラ~ンとして活気がない。やはり、トラディショナルなモータウンにITなどの新技術は不似合いなのだろうか? 「来年はここでの出展はないと思う」と漏らす自動車部品メーカー関係者もいたが、来年はAutoMobili-D自体の開催が危ぶまれるだろう。
本会場の主役は、デトロイトスリー
一方、1月15日にプレスデー初日を迎えたNAIASの本会場では、例年通りネクタイ姿のビジネスマンたちの姿が目立った。彼らはメディアではなく、自動車メーカー、自動車部品メーカー、そして全米各地の自動車ディーラーの関係者だ。NAIASはアメリカ自動車産業界にとって業界新年会のような位置付けだ。アメリカの自動車ディーラーは基本的に独立資本のため、メーカーはディーラーに対してNAIASの場を利用して、昨年の業績報告と今年の投入する新製品に対する抱負を述べるのだ。
出展車を見ると、当然ながら主役は地元デトロイトスリーだ。以前はビックスリーと呼ばれていたが、いわゆるリーマンショックの後、ゼネラルモーターズ(GM)と当時のクライスラーが経営破たんしたことを受けて、デトロイトの地場メーカーという意味合いとしてデトロイトスリー(GM、フォード、FCA)という表現がメディアで使われるようになった。
今回は、GMとFCAがフルサイズピックアップトラックをモデルチェンジ。すなわち「シボレー・シルバラード」と「ラムトラック」が外装、内装、パワートレイン、そしてコネクテッド関連の装備を刷新して登場したのだ。ピックアップトラック王者である「フォードF-150」への強い対抗心の表れである。
一方フォードは、「マスタング ブリット」の“再生”で注目を集めた。ブリットは1960年代に名優スティーブ・マックイーンによるカーチェイスで話題となった人気映画を基に企画された、マスタングのスペシャルバージョンである。今回、“オリジナル”とともに出展された現行型「マスタング ブリット」の発表式では、マックイーンの孫にあたる女優がプレゼンターを務めた。
拡大 |
会場にただよう保護主義の空気
フォードとFCAはCESにも出展しており、NAIASでも自動運転実験車両などの展示を行っていた。それでも、主役は間違いなくトラディショナルな“アメ車”だ。おととしからCESを欠席しているGMも、今回のイチ押しはシルバラード。完全自動運転車の導入は発表したが、それは本会場での展示ではなかった。ドメスティックで保守的な展示が幅を利かせる流れの裏には、どことなくトランプ政権がゴリ押しする「メイド・イン・アメリカ」「バイ・アメリカン」といった保護主義の気配が感じられる。
こうした状況下でも、日系メーカーを見るとトヨタがレクサスの次世代フラッグシップSUVの姿を示唆する「LF-1リミットレス」を、ホンダが新型「インサイト」を、日産が次世代SUVの「クロスモーション」を出展。だが、スバルから新型車の発表はなく、マツダは欠席、そして三菱は本会場外の通路に歴代車を3台並べるにとどまった。
ジャーマンスリーも、「メルセデス・ベンツGクラス」「BMW X2」「フォルクスワーゲン・ジェッタ」などを発表するも、発表の内容からは「トランプ政権の顔色を見ながら」といった慎重な事業戦略を進めているように思えた。
このように、注目される展示の傾向や、ショーに対する出展者の姿勢を見るにつけ、今年もデトロイトのNAIASは、ラスベガスのCES(の自動車関連展示)とは対照的な印象だった。
(文=桃田健史/編集=堀田剛資)
拡大 |

桃田 健史
東京生まれ横浜育ち米テキサス州在住。 大学の専攻は機械工学。インディ500 、NASCAR 、 パイクスピークなどのアメリカンレースにドライバーとしての参戦経験を持つ。 現在、日本テレビのIRL番組ピットリポーター、 NASCAR番組解説などを務める。スポーツ新聞、自動車雑誌にも寄稿中。
-
日産は“再挑戦”でホンダは“終了” 新型「エルグランド」発売に見る、プレミアムミニバンの今NEW 2026.7.20 トヨタが圧倒的なシェアを占める上級ミニバンの世界において、新型「エルグランド」で復権をねらう日産。しかし、なぜフルモデルチェンジは16年ぶりになったのか? ホンダはどうするのか? この市場の今を考察する。
-
新型「アルピーヌA110」はどんなクルマに? グッドウッドを駆けたテストカーから読み解く 2026.7.17 アルピーヌが次期型「A110」を示唆する「A110フューチャー」を初公開。グッドウッドで走る姿を披露した。そこから分かる未来のA110の姿とは? 電動化がアナウンスされているが、エンジン車の設定はあるのか? 公式発表とテストカーの姿から深掘りする。
-
九州・熊本で開催 「Lamborghini Summer Days 2026」で極上なる猛牛の世界観を知る 2026.7.16 ランボルギーニが1泊2日の無料招待制イベント「Lamborghini Summer Days 2026」を、九州・熊本で開催。上天草の自然とともに最新モデルの走りと独自の世界観を味わう特別なツアーの詳細を報告する。
-
スライドドアはいつから? 「日産エルグランド」登場前夜の国産ミニバン史 2026.7.14 間もなく「日産エルグランド」の新型が発売される。これに限らずわが国は多くのブランドが多くのモデルをラインナップするミニバン王国なわけだが、そもそも国産ミニバンはどのようなかたちで始まり、どのような進化を遂げてきたのだろうか。多人数乗車モデルの歴史を解説する。
-
みんなで乗れるアメリカンSUBARU 3列シートSUV「アセント」はどれだけ大きいのか? 2026.7.13 アメリカで生産されているスバルの3列シートSUV「アセント」が、日本でも2026年後半から販売される見込みだ。一体どんな魅力の詰まったクルマなのか、発売を前にその特徴を予習しておこう。
-
NEW
第340回:一にエンジン、二にカッコ
2026.7.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。マツダ渾身(こんしん)のラージ商品群を応援するカーマニアのひとりとして、「CX-60」と「CX-80」の動向は常に気になっている。3列シートSUV、CX-80の最新モデルにあらためて試乗して感じたこととは? -
NEW
日産は“再挑戦”でホンダは“終了” 新型「エルグランド」発売に見る、プレミアムミニバンの今
2026.7.20デイリーコラムトヨタが圧倒的なシェアを占める上級ミニバンの世界において、新型「エルグランド」で復権をねらう日産。しかし、なぜフルモデルチェンジは16年ぶりになったのか? ホンダはどうするのか? この市場の今を考察する。 -
NEW
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】
2026.7.20試乗記3000台の限定で販売される新型「インサイト」は、クロスオーバー風のフォルムと、これまでのホンダ車にはなかった内外装のデザインテイストが新鮮だ。中国で生産され、日本独自の名前が与えられた新型電気自動車の走りと仕上がりを、ロングドライブで確かめた。 -
ポルシェ911カレラT(後編)
2026.7.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルとSTIでクルマの走りを鍛え、モータースポーツにも積極的に取り組んできた辰己英治さん。彼の目に、“スポーツカーの水準器”こと「ポルシェ911」はどのように映ったのだろう? 走りの楽しさを追求した「カレラT」グレードに乗っての印象を聞いた。 -
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。




