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いよいよ神奈川県にも開通した新東名
その車線数に隠された秘密とは!?

2018.02.14 デイリーコラム 清水 草一
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新東名そのものがムダだった!?

NEXCO中日本が建設を進めてきた新東名高速道路・海老名南JCT―厚木南インター(約2km)が、2018年1月28日(日)15時に開通した。「いよいよ新東名が神奈川へ!」というわけだが、今回開通したのは、わずか2kmの盲腸線。厚木インター周辺の混雑を若干緩和する効果はあるが、ネットワーク効果は、2020年度に予定されている新東名の全線開通まで待たねばならない。

といっても、新東名が全線開通しても、その「全線」とは、(名古屋方面から見て)海老名南JCTまで。そこから先、東京方面は調査中で、計画すら策定されていない。全国の高速道路で最も渋滞の激しい東名の海老名JCT―横浜町田インター間(現在の渋滞の先頭は大和トンネル付近)は、新東名はカバーしないので、渋滞は緩和されるどころか、中途半端な複線化で上り線の合流渋滞が増加し、ストレスが増す恐れもある。大きな期待は禁物だ。

ところで、新東名を走っていると、車線数がしょっちゅう変わることに気付くはずだ。いったいどうして? と、疑問に思われた方も多いのではないか。

実はこれ、道路公団民営化の“遺産”である。

もともと新東名は、全線片側3車線で計画されていたが、2001年から始まった道路公団民営化議論の過程で、新東名の存在そのものが「ムダ」と糾弾された。

ところが客観的データを見ると、新東名の存在意義は大きく、建設続行となったが、コストダウンのため、片側3車線から2車線に減らすことが決まったのである。

「なぜそんなバカなことを!!」と言うなかれ。当時の世論では、高速道路建設はすべて利権まみれの赤字垂れ流し公共事業で、建設中止こそ正義という空気だった。車線数が減らされても、建設続行が決まっただけで御の字と、私は大いに胸をなでおろしたものである。

つまり新東名は、「全線片側2車線」のはずなのだが、実際には片側2車線と3車線が混在している。なぜなのか?

2018年1月28日に開通した新東名高速道路の海老名南JCT-厚木南IC区間。いよいよ東京方面の末端からも延伸が始まった。
2018年1月28日に開通した新東名高速道路の海老名南JCT-厚木南IC区間。いよいよ東京方面の末端からも延伸が始まった。拡大

世論が正しいとは限らない

実は御殿場―浜松いなさ間(146km)に関しては、2003年末、民営化委員会の答申により車線数減が決まる以前に工事に着手していたため、全線の基本構造が片側3車線のままなのだ。そこを無意味に2車線に減らしている。

ただし、それではあまりにもったいないということで(?)、約38%の区間に「付加車線」が設けられた。その付加車線がある区間は、事実上片側3車線になっている。

付加車線のあるなしはどうやって決められたかというと、「公安委員会と協議の結果、インターチェンジの前後やSA・PAの前後に設置されております」(NEXCO中日本)。つまり、合流抵抗を減らすためというのが大義名分だ。

付加車線設置区間の分布を見ると、上下線とも7カ所だが、区間は微妙にズレており、基本的には合流前より合流後に距離を長く取るよう配慮されている。

ユーザーとしては、そんな些細(ささい)なことより、「せっかく片側3車線で造ったんだから、全線3車線にしてくれ!」と言いたいところだが、なにせ建前上、新東名は片側2車線。当時の世論はそれでも「ムダだ」と批判の嵐だったのだから、これを覆すには、再度大きな世論の盛り上がりが必要だ。

ところで、今回開通した海老名南JCT―厚木南間は、現状なんと片側1車線である。2020年度中に御殿場JCTまで開通する際には、区画線を引き直して片側2車線になるが、御殿場―浜松いなさ間と違い、基本設計が片側2車線なので、それ以上の拡幅はほぼ不可能。

実は新東名は、最初に着工された御殿場―浜松いなさ間以外は、すべて基本設計から片側2車線に変更され、コストダウンが図られている。

これを政治の誤りと、ひとごとのように言うべきではない。犯人は大マスコミが作り出した世論だ。15年前の「高速道路悪玉論」という世論が、新東名を狭めさせたのだ。

世論とは、間違った方向に流れることもあるのである。

(文=清水草一/編集=藤沢 勝)

御殿場―浜松いなさ間については、全線が片側3車線を基本構造として備えているが、トンネルの中など、ポールを立てて2車線に制限している区間が多い。
御殿場―浜松いなさ間については、全線が片側3車線を基本構造として備えているが、トンネルの中など、ポールを立てて2車線に制限している区間が多い。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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