“Baby G”の開発状況は? 来日したメルセデスAMGの開発トップにインタビュー
2025.11.12 デイリーコラム 拡大 |
ジャパンモビリティショー2025の開催に合わせて、メルセデスAMGのCEOにしてメルセデス・ベンツのトップエンドモデルの開発を統べるミヒャエル・シーベ氏が来日。自動車メディアとのグループインタビューに応じた。ショーで披露した「コンセプトAMG GT XX」に込めた思いや電動化時代のAMGの在り方、そして気になる“Baby G”の開発状況などを伺った。一人語りのかたちでお届けする。
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異次元のパフォーマンスを持つモデルを導入
こうして日本にまた来られたこと、そしてAMG GT XXのお披露目ができたことを大変光栄に思います。AMG GT XXは「AMG.EA」というAMG独自開発の電気自動車(BEV)専用プラットフォームを使ったコンセプトモデルですが、これをベースにした量産型を2026年度中にも公開する予定です。
AMGは今後も2つの軸で商品を展開していきます。ひとつはハイパフォーマンスエンジンを搭載したモデルの継続開発で、新世代のV8エンジンの開発はすでにほぼ終了しています。もちろん環境性能を備えながらもAMGの名に恥じない動力性能も持ち合わせています。今後もわれわれの本拠地であるアファルターバッハで生産する内燃機関(ICE)を搭載したモデルを続々と発表する予定ですし、そのための投資もします。もうひとつの軸はBEVのモデルです。AMG GT XXはアキシャルフラックスモーターと高性能バッテリーを採用しており、これがゲームチェンジャーになると考えています。
AMGは本格的にBEVの世界に入っていきますが、これまでのBEVとはまったく異なる、異次元のパフォーマンスを持つモデルを提供していきます。そこに使われる技術は、レース活動での経験と実績に裏打ちされたものでもあります。世の中のBEVモデルはどれもそこそこの加速性能を有しています。が、それを何度も繰り返すと熱が発生する場合があります。AMGでは、加速と減速を繰り返すサーキットというシチュエーションでもモーターとバッテリーが問題なく使える技術により、本当の意味でのBEVのハイパフォーマンスモデルを完成することができました。
AMG.EAを使ったSUVも登場
特にバッテリーに関しては、直接冷却という方法を採用しています。バッテリーは人間に少し似ているところがあります。人間は心地よい環境下では十分なパフォーマンスを発揮できますが、凍えるような寒さや灼熱(しゃくねつ)の暑さではパフォーマンスが落ちてしまいます。バッテリーも同じです。そこで適正な温度管理をすることで、常に最高のパフォーマンスが発揮できるようにしています。
アキシャルフラックスモーターはYASA製で、メルセデスの100%子会社です。メルセデス以外の某イタリア車メーカーにもモーターを供給していますが、AMGの場合はフロントアクスル、リアアクスル、そしてそれがAMG.EAのプラットフォームに載るというトータルのパッケージとしてYASAと開発を進めてきましたし、生産に関してもわれわれの専用の工場で行います。その点で、われわれと他メーカーとの違いがあると考えていますし、大きなアドバンテージともいえるでしょう。
AMG.EAのプラットフォームはまず4ドアクーペで登場し、そのすぐ後にSUVモデルも追加する予定です。いまだにSUVは根強い人気があるので、SUVも用意することにしました。将来的にAMGはさまざまなパワートレインやボディータイプを用意することで、多くのお客さまのご要望に応えていくつもりです。そしてどのパワートレインを選んだとしても、とてもエモーショナルな乗り味を感じていただけることでしょう。このエモーショナルな体験には、例えばBEVでもV8のような動力性能だけでなくサウンドも含まれます。BEVのモデルでもV8のようなサウンドを味わっていだだくことが可能なのです。
“Baby G”の開発は順調に推移
新型V8の開発に至った経緯は、2027年から2028年に施行されるといわれているEU7のレギュレーションを満たす必要があったからです。今後、マーケットでBEVが占める割合が増えていくことに疑う余地はありませんが、国や地域によってそのスピードはさまざまです。われわれは、北米や中東の地域では今後もしばらくはICEモデルの需要が一定量は見込めると予想しています。また、充電に関するインフラ整備もまだ思うようには進んでいませんので、それ以外の地域でもICEの需要はしばらくあると考えられます。われわれは今後も、レギュレーションへの対応と顧客のニーズの両方に応える開発に取り組んで参ります。
お客さまからは、もっと標準仕様のメルセデスとは異なるデザインが欲しいという要望があります。そこでAMGは今後、メルセデスは違ったオリジナルデザインのモデルを増やしていくつもりです。たとえラインナップを拡充しても、AMGとして共通する乗り味は不変です。それはAMGが長年にわたって培ってきたレース活動から量産車へのフィードバックというストラテジーに沿ったものです。この先の2~3年以内には数多くのAMGモデルが登場します。2カ月に一台くらいのペースと想像していただいて構いません。
私はAMGのほかに「Gクラス」も担当しているので、最近はGクラスのオープンモデルと“Baby G”のことばかり聞かれます(笑)。開発は順調に進んでいてどちらもとてもクールです。「コンバーチブル」は近々に発表できるでしょうし、今回はアメリカでも販売予定です。小さいGクラスも間もなく公開できるでしょう。デザインだけでなく性能に関しても、現行のGクラスに可能な限り近づけました。やはりあのカタチと走破性がGクラスの象徴ですし、MANUFAKTURプログラムも用意する予定ですのでご期待ください。
(まとめ=渡辺慎太郎/写真=メルセデス・ベンツ、webCG/編集=藤沢 勝)

渡辺 慎太郎
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