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第484回:根は真面目
発売前の「三菱エクリプス クロス」に雪上で試乗

2018.02.21 エディターから一言 高平 高輝
「三菱エクリプス クロス」
「三菱エクリプス クロス」拡大

三菱にとって久々のニューモデルとなる「エクリプス クロス」。カッコ優先(!?)のSUVがはびこる昨今、三菱は一体どんなSUVを世に問おうとしているのか? 雪の上で試乗してみると、“四駆”に一家言を持つ彼ららしい真面目さが浮き彫りになってきた。

試乗会場は新千歳モーターランド(北海道千歳市)。通常はダートコースだが、冬季はご覧のとおり、一面の雪。
試乗会場は新千歳モーターランド(北海道千歳市)。通常はダートコースだが、冬季はご覧のとおり、一面の雪。拡大
デザインコンセプトは“VIBRANT & DEFIANT”(「躍動、そして挑戦」と訳される)。この角度から見ると、アッパーボディーのウエッジシェイプがよくわかる。
デザインコンセプトは“VIBRANT & DEFIANT”(「躍動、そして挑戦」と訳される)。この角度から見ると、アッパーボディーのウエッジシェイプがよくわかる。拡大
ボディーのスリーサイズは4405×1805×1685mmで、ホイールベースは2670mm。試乗した最上級グレード「G Plusパッケージ」(4WD仕様)の車重は1550kg。
ボディーのスリーサイズは4405×1805×1685mmで、ホイールベースは2670mm。試乗した最上級グレード「G Plusパッケージ」(4WD仕様)の車重は1550kg。拡大
 
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心機一転のニューモデル

派手なティーザーキャンペーンを見ていささか不安に感じていたのだが、カッコだけのクーペSUVではなかった。それどころか、スタイリングも間近で見るとごくまっとう、三菱としては頑張ったのかもしれないが、無理やりルーフを低くしたわけでもなく、後方視界もしっかり確保されていた。エクリプス クロスの中身は、実用性と機能性を真面目に考慮した扱いやすいサイズのコンパクトSUVである。

発売は3月ということで、今回は新千歳空港近くの雪上特設コースで三菱自慢のS-AWCの実力を体感してほしいという狙いらしい。一般道ではリスクが大きくて試せないことも、整備されたクローズドコースなら、もうちょっといってみるか、とトライできることが最大のメリットだ。試乗車はエクリプス クロスを中心に、来るジュネーブショーに出品されるという「アウトランダーPHEV」のマイナーチェンジ版を含めた新旧「アウトランダー」も用意されていた。どちらも現時点ではあくまでプロトタイプというが、特にエクリプス クロスは日本でまだ発売されていないのが不思議なほどの完成度だった。

エクリプス クロスは三菱にとって久しぶりのニューモデル、振り返れば2012年発売のアウトランダー以来(PHEVは2013年)である。もちろんその後、日産にも供給する軽自動車の新型モデルが発売されたが、その軽自動車がいろいろと問題を起こした結果、日産グループ入りしたわけだが、その間開発陣は集中して仕事をすることも難しかったのではないかと想像する。本当にこれっきりにしないとせっかくの技術がもったいない限りだ。

三菱 の中古車

活発で使いやすい4気筒ターボ

エクリプス クロス用4B40型1.5リッター4気筒直噴ターボエンジンも久々の新型エンジンだ。海外向けには2.2リッターディーゼルターボ+8段ATモデルも用意されるというが、日本向けは当面いわゆるダウンサイジングターボの1.5リッター4気筒+8段スポーツモード付きCVTに限られる。75.0×84.8mmというボア×ストロークから見て、かつて「スマート・フォーフォー」に積まれていた4A91型をベースにしているようだが、吸気ポートとシリンダー内への直噴用とダブルのインジェクターを備え、ウエイストゲートも電動式と最新のトレンドを取り入れている。レギュラーガソリン仕様ながら最高出力/最大トルクは150ps(110kW)/5500rpmと240Nm(24.5kgm)/2000-3500rpmを発生させるという。

低い回転域から十分なトルクを生み出すターボエンジンと、CVTではあるがATのようにメリハリの利いた変速制御を狙ったというトランスミッションのおかげで、確かに軽快でレスポンスもキビキビしている。雪上での試乗だけだから、正直自信はあまりないが、ノイズや振動も抑えられており、非常に健康的かつ実用性に優れたエンジンだと思う。4WDモデルの車重は1500kg強というが、それに対しては十分以上に感じた。シフトパドルも標準装備されるものの、これを背の低いハッチバックなどに積んでマニュアルギアボックスで乗ったらさぞ楽しいだろうな、と余計なことまで夢想してしまった。

最低地上高は175mm。アプローチアングルは20.3度、ディパーチャーアングルは30.8度確保されている。
最低地上高は175mm。アプローチアングルは20.3度、ディパーチャーアングルは30.8度確保されている。拡大
三菱の各車に採用されるS-AWCとは、前後駆動力配分に加え、左右駆動/制動力配分が可能な4WDシステムのこと。もちろん「エクリプス クロス」にも搭載されている。
三菱の各車に採用されるS-AWCとは、前後駆動力配分に加え、左右駆動/制動力配分が可能な4WDシステムのこと。もちろん「エクリプス クロス」にも搭載されている。拡大
「エクリプス クロス」のS-AWCのコンセプトは、「多くのお客さまにリーズナブルな価格でS-AWCの良さを堪能してもらうこと」にあるという。
「エクリプス クロス」のS-AWCのコンセプトは、「多くのお客さまにリーズナブルな価格でS-AWCの良さを堪能してもらうこと」にあるという。拡大
「エクリプス クロス」では、電子制御カップリングを備えた4WDをベースに、ブレーキ制御のAYCとASC(アクティブ・スタビリティー・コントロール)を組み合わせたシンプルな構成が取られる。
「エクリプス クロス」では、電子制御カップリングを備えた4WDをベースに、ブレーキ制御のAYCとASC(アクティブ・スタビリティー・コントロール)を組み合わせたシンプルな構成が取られる。拡大

しっかり使えるリアシート

“クーペライク”などという言葉に好意を持てない私は、ちょっとだけ心配していたのだが、実際にはドライバーズシートからの視界は良く、室内も明るく、クーペという言葉から想像する密室感などはまったくなし。視点が高いうえに、水平基調のインストゥルメントパネルはすっきり整理され、奇をてらっていない点が好印象である。パネルが立ち上がる方式のカラー・ヘッドアップディスプレイも備わるが、ナセル内の主メーターも簡潔で見やすい。かつて劇画調というか、メカメカしさが特徴だった三菱も様変わりである。

後方視界も斜め後方視界もまったく問題ない。スタイル優先のおしゃれSUVなどでは、ルーフ後端部を下げたり、リアウィンドウを寝かせたり、さらにはリアドアのアウターハンドルをCピラーに隠したりといったデザイン処理のために、どうしても視界が悪化しがちだが、エクリプス クロスはその悪弊(とあえて言おう)に手を出さなかった。ハッチゲートガラスは上下2段式として後方視界を確保している。その分だけもちろんコストは増すが、目をつぶって済ますことはできなかったという。

リアシートの居住性についても同じ、ウエッジシェイプが強調されたエクステリアから想像するほど天井は低くないし、ボディーサイドの絞り込みもきつくないので後席は広くルーミーだ。そのうえリアシートは200mmの前後スライドが可能で、バックレストも9段階(16~32度)にリクライニングできる。どう考えてもまっとうな実用的コンパクトSUVである。

インストゥルメントパネルには水平基調のデザインを採用。立体的なシルバー加飾を施し、スポーティーさと上質さを表現している。中央にスマートフォン連携オーディオ用のディスプレイが備わる。
インストゥルメントパネルには水平基調のデザインを採用。立体的なシルバー加飾を施し、スポーティーさと上質さを表現している。中央にスマートフォン連携オーディオ用のディスプレイが備わる。拡大
オーディオの操作は、センターコンソールに配置されたパッドタイプのコントローラーを介して行う。
オーディオの操作は、センターコンソールに配置されたパッドタイプのコントローラーを介して行う。拡大
後席にはリクライニング機構のほか、前後スライド機構が備わる。
後席にはリクライニング機構のほか、前後スライド機構が備わる。拡大
クーペフォルムを採用すると、後方視界の悪化が懸念される。「エクリプス クロス」ではリアウィンドウを上下2段にすることによって後方視界を確保している。
クーペフォルムを採用すると、後方視界の悪化が懸念される。「エクリプス クロス」ではリアウィンドウを上下2段にすることによって後方視界を確保している。拡大

軽快リニアに反応する

ラインナップにはFWD(前輪駆動)も用意されているが、試乗できたのは三菱自慢のS-AWC(スーパー・オールホイールコントロールシステム)を備えた4WDモデルのみ。3種類のドライブモード(オート/スノー/グラベル)をセンターコンソールのスイッチで選択可能、電子制御カップリングによって前後の駆動力配分をコントロール、さらにブレーキ制御によるAYC(アクティブヨーコントロール)機能を盛り込んだものだ。圧雪が磨かれて滑りやすくなったコースでも安定感はあるいっぽう、ターンインもリニアで嫌みのない挙動を示した。ひたすら安定方向に抑えるのではなく、ドライバーの曲がりたいという意思にできるだけ応えようとしてくれているのが分かるのだ。車両統合制御に長年取り組んできた三菱ならではの軽快さと言えるかもしれない。

間もなく発表される予定の新しいアウトランダーPHEVは従来の2リッターに代えて2.4リッターアトキンソンサイクルエンジンを採用、バッテリーもリアモーターも強化したというが、残念ながらタイトな雪上コースでは従来型PHEVとの違いを明確に感じることはできなかった。新たに追加されたスノー/スポーツのドライブモードを選んでみると、レスポンスに優れるフロント&リアモーター(前後は独立制御)が瞬時に応えてくれるのは分かるが、さすがにエクリプス クロスよりずっと重く大きいだけにスタビリティー重視といった感じ、めったなことでは破綻させない制御の優秀さを確認したにとどまった。

かつては“生活四駆”というジャンルがあり、それは駐車場からの脱出や雪の坂道での発進の際だけ主に4WDの効果を発揮するという簡便なシステムを装備した4WDモデルだったが、新型エクリプス クロスは実用性だけでなく、軽快にスポーティーにも走りたい雪国のドライバーにとってちょうどいい相棒になるような気がする。

(文=高平高輝/写真=三菱自動車/編集=竹下元太郎)

今回は3月のジュネーブショーに出品される予定の「アウトランダーPHEV」2019年モデルにも試乗することができた。エクステリアではLEDヘッドライトとフォグランプベゼル、ラジエーターグリル、フロントおよびリアのスキッドプレートのデザインが変更されている。
今回は3月のジュネーブショーに出品される予定の「アウトランダーPHEV」2019年モデルにも試乗することができた。エクステリアではLEDヘッドライトとフォグランプベゼル、ラジエーターグリル、フロントおよびリアのスキッドプレートのデザインが変更されている。拡大
2019年モデルではエンジンが従来の2リッターから2.4リッターに拡大されている。フィン形状の新デザインアルミホイールとリアスポイラーも2019年モデルの識別点。
2019年モデルではエンジンが従来の2リッターから2.4リッターに拡大されている。フィン形状の新デザインアルミホイールとリアスポイラーも2019年モデルの識別点。拡大
駆動用のリチウムイオンバッテリーの容量を約15%向上させて総電力量を13.8kWhに。最高出力も約10%強化されている。さらにジェネレーターやリアモーターの出力も約10%高められている。これらの改善により、より力強い走りを実現した。
駆動用のリチウムイオンバッテリーの容量を約15%向上させて総電力量を13.8kWhに。最高出力も約10%強化されている。さらにジェネレーターやリアモーターの出力も約10%高められている。これらの改善により、より力強い走りを実現した。拡大
雪煙を上げながらレフトハンダーを豪快に抜けていく「アウトランダーPHEV」2019年モデル。
雪煙を上げながらレフトハンダーを豪快に抜けていく「アウトランダーPHEV」2019年モデル。拡大
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