ドゥカティ・スクランブラー シックスティー2(MR/6MT)
スクランブルな人生(?)に福音を 2018.04.14 試乗記 トラッカースタイルが人気を博す「ドゥカティ・スクランブラー」のなかでも、最もコンパクトなエンジンを搭載した「シックスティー2」。シンプルさが身上のエントリーモデルは、「普通二輪免許で乗れる」という以外にも選ぶべき理由のある一台に仕上がっていた。実は由緒正しいモデル
scramble. scrambling. scrambler.
スクランブルは戦闘機の緊急発進。スクランブリングは登山で手を使って斜面を登ること。要はごちゃまぜ&何でもアリという意味で、オートバイの分類で使用されているスクランブラーも、そういうスタイルを指す。って、こんな説明じゃさすがに不親切ですよね。
スクランブラーの発祥はアメリカらしい。未舗装のオーバルコースをぐるぐる回るフラットトラックレースを好んだ連中は、その辺にあった普通のバイクをレース用車両に改良したそうな。軽量化を目的にできるだけパーツを取っ払い、横滑りにも対処しやすいアップライトなバーハンドルを使用。だいたいそんな感じ。細かいことはどうでもよかった。
が、競争は激化と拡大が常なので、各メーカーがフラットトラックレースに適したモデルを提供するようになった。で、ドゥカティも1962年にOHC単気筒の、その名も「スクランブラー250」をアメリカで発売したのである。
そんな往年の文化やスタイルを現代によみがえらせたのが、今日のドゥカティ・スクランブラーだ。とはいえ、新しいスクランブラーも軽量化を図ったシャシーにドゥカティおなじみのLツインを搭載するという、文脈的にはかつてのそれを正しくたどっていて、前から「何かおもしろそうだぞ」という匂いがプンプンしていたのである。
免許がどうあれ、これはこれで正しい
そうした懐かしい匂いをかがせようとしたのか、はたまたちょっとピンボケ感が恒常化しているwebCG編集部だからか、彼らが用意したのは、1100版も800版もあるのに、「中免で乗れんすよ」とホッタ青年が得意げに紹介した400版だった。名称は「Sixty2(シックスティー2)」。60の二乗って何それ? と思ったが、先に触れた初代スクランブラーを発売した“62年”にちなんでいるらしい。イタリア人はけっこう律義だ。
さておき、このルックスはいい。1100や800になると、それなりのゴージャス感を出すためにさまざまな装飾を施しているが、400もといシックスティー2はオレンジ×ブラックという素朴な配色がむしろ新鮮に映る。そもそも60年代から70年代中盤まで製造されていたスクランブラーも最大排気量は450だったのだ。免許制度がどうあれ、やはり文脈的にこれはこれで正しい。
またがっても走らせても、いたってシンプル。眼下にあるのは、かなり手前に引き寄せられたバーハンドルと丸型メーター1個だけ。乗車姿勢は上体が立つので、高速道路では走行風をもろに受けそうだけど、倍以上の86psを発生する1100ならともかく、399ccのシックスティー2なら不満の域には達しないはずだ。
スロットルの反応というか、パワーの出方も同様。決してグゥワグゥワしない。「モンスター」の400版に初めて乗ったときは、「ドゥカでこの程度?」と多少がっかりしたが、こちらはなんせスクランブラーだ。まず誰もしないと思うけれど、仮に未舗装路に乗り入れるならシックスティー2の40psでもきっと手に余るだろう。
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“最良の相棒”に求められる条件
だから重複するが、これはこれで十分なのだ。常に楽な姿勢で、「事と次第によっては振り回しちゃうぜ」という余裕を抱きながら乗るには、あるいはシックスティー2は最良の相棒になるだろう。
これはオタメゴカシの評価ではない。非専門家の自分が二輪の記事を書くときは、「たった1台のオートバイを選ぶなら」という個人的なルールを基にしている。金銭的にも時間的に可処分がないこの自分のルールなので、どこか貧乏くささが拭えないにしても、仕事やらプライベートやらがごちゃまぜになった現在の生活において、気軽にスクランブル発進できる乗り物は最も適しているのではないかと思う。
そりゃ1100や800に触れたらまた違う感想が芽生えるかもしれないスクランブリング癖は否定できないけれど、少なくとも今目の前にあるシックスティー2は、その軽やかなルックスも含め、自分のスクランブラーライフに多大な福音をもたらしてくれるのではないかと、これは本気で考えたことだ。
(文=田村十七男/写真=三浦孝明/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2150×860×1165mm
ホイールベース:1460mm
シート高:770mm
重量:183kg
エンジン:399cc 空冷4ストロークL型2気筒 OHC 2バルブ
最高出力:40ps(30kW)/8750rpm
最大トルク: 34Nm(3.5kgm)/8000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:4.6リッター/100km(約21.7km/リッター、WMTCモード)
価格:89万9000円

田村 十七男
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