中国とアメリカ、自動車大国のツートップでは
どんなボディータイプのクルマが流行してる?
2018.05.16
デイリーコラム
中国の定番は中型セダン
世界第1位の自動車生産・販売国の中国。2017年の生産台数は2900万台に達し、今年2018年には3000万の大台を超えるのは確実だ。
その中国ではいま、どんなボディータイプのクルマが人気なのか?
4月末から5月上旬、首都・北京で開催されたオートチャイナ2018(通称:北京モーターショー)の会場を巡ってみると、目立ったのはセダンの多さだ。ワールドプレミアとしては、メルセデスが新型「Aクラス」のセダンを、そして日産は「シルフィ」に「リーフ」の電動ユニットを移植した「シルフィ ゼロエミッション」を披露した。中国では中型セダンが定番の商品だ。
高級セダンに目を向けると、欧州ブランドはモデル名称に「L」が付くロングホイールベース車を数多く出展していた。元来、リムジンを指すLは、公用車や運転手付きの社用車として開発されているが、中国では個人所有でもLを好む傾向が強い。
その理由について、とある日系自動車メーカーの中国デザインスタジオ幹部は「中国人にとってクルマは見えの象徴であり、ロングホイールベースをあえて自分で乗りたがる。しかも、価格についてはシビアなので、排気量が小さくても構わない」と中国市場の実態を説明する。
確かに、レクサスが発表した新型「ES」は、「LS」並みのロングホイールベースだが、中国向けには2リッター直4エンジン搭載モデルの設定がある。
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湾岸部を中心にSUVシフトが進む
そうしたセダン至上主義の中国市場で最近、SUVシフトが起こっている。北京モーターショーでも、第一汽車、東風汽車、上海汽車、長安汽車などの中国地場大手がSUVを積極的に発表した。
中国の経済発展は2000年代半ばから急速に進み、自動車の販売台数もうなぎ上りとなった。そうした大衆向けの第1次自動車ブームから10年弱がたったいま、2度目、または3度目の買い替え需要を迎えており、セダン以外のボディータイプへの関心が高まっている。
こうした傾向は自動車が早く普及した、上海、広州などの中国湾岸部や首都・北京で顕著に見られる。
一方、湾岸部と比べると生活水準が若干低い内陸部では、定番商品であるセダンの需要がまだ多い。しかし、若い世代を中心に湾岸部のトレンドをいち早く取り入れようとする動きもあり、自動車メーカー各社は内陸部を含めた中国全土で今後、SUVシフトが加速すると予想している。
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アメリカでもセダンからSUVの流れ
SUVといえば、本場はアメリカだ。
アメリカ人にとってSUVは、通勤、通学、子どもの学校への送り迎え、買い物、そしてアウトドアなどのレジャーなど多用途に使えるオールマイティーなクルマという意識が強い。
ボディーサイズは、北米でいうミッドサイズSUVが主流で、「トヨタ・ハイランダー」「ホンダ・パイロット」「フォード・エクスプローラー」などが売れ筋だ。また、さらにサイズの大きなフルサイズSUVでは、「シボレー・タホ」などの人気が高い。
地域別の印象では、テキサス州やジョージア州など、アメリカ中部や南部ではフルサイズSUVのシェアが高い。また、「フォードF-150」や「シボレー・シルバラード」などのフルサイズピックアップを乗用で使用する人も多い。一方、ニューヨーク州マンハッタンなどではセダン比率が高い印象だ。
とはいえ、アメリカの乗用車市場全体を見てみると、最もシェアが大きいのは、トヨタの「カローラ」や「カムリ」、ホンダの「シビック」「アコード」といった中小型セダンというのがアメリカ市場の常識だった。
ところがこの2年ほどで、アメリカでも中小型車市場でSUVシフトが加速してきている。これは中国で起こっているSUVシフトとは社会背景が違うものだ。アメリカ人は、小型車でも生活の中でのオールマイティー性を強く意識するようになったのだと考えられている。
国別自動車販売台数で1位の中国と2位のアメリカで加速するSUVシフト。同3位の日本でも、最近の「トヨタC-HR」の販売好調に見られるように、中・米と同じようなSUVシフトがさらに進むのだろうか。
(文=桃田健史/編集=藤沢 勝)
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桃田 健史
東京生まれ横浜育ち米テキサス州在住。 大学の専攻は機械工学。インディ500 、NASCAR 、 パイクスピークなどのアメリカンレースにドライバーとしての参戦経験を持つ。 現在、日本テレビのIRL番組ピットリポーター、 NASCAR番組解説などを務める。スポーツ新聞、自動車雑誌にも寄稿中。
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