アストンの新型フラッグシップ「DBSスーパーレッジェーラ」上陸

2018.06.27 自動車ニュース 嶋田 智之
「アストンマーティンDBSスーパーレッジェーラ」
「アストンマーティンDBSスーパーレッジェーラ」拡大

アストンマーティン・ジャパンは2018年6月27日、高性能スポーツカー「DBSスーパーレッジェーラ」の日本導入を発表した。

ボディーサイズは、全長×全幅×全高=4712×2146×1280mm(ドアミラー含む)。エアダムを含めた最低地上高は90mmとなっている。
ボディーサイズは、全長×全幅×全高=4712×2146×1280mm(ドアミラー含む)。エアダムを含めた最低地上高は90mmとなっている。拡大
「DBSスーパーレッジェーラ」では、カーボンルーフもオプションとして用意される。
「DBSスーパーレッジェーラ」では、カーボンルーフもオプションとして用意される。拡大
ホイールのサイズは前後とも21インチ。フロントのホイールハウスから後方に伸びるサイドストレーキは、「DB11」のものよりも大きくなっている。
ホイールのサイズは前後とも21インチ。フロントのホイールハウスから後方に伸びるサイドストレーキは、「DB11」のものよりも大きくなっている。拡大
大開口のフロントグリルが、「DB11」とのパフォーマンスの違いを印象づける。
大開口のフロントグリルが、「DB11」とのパフォーマンスの違いを印象づける。拡大
インテリアは標準でフルレザー仕上げとなる。
インテリアは標準でフルレザー仕上げとなる。拡大

磨きに磨いた空力性能

予告されていたとおり、アストンマーティンの“次世代フラッグシップ・スーパーGT”DBSスーパーレッジェーラが発表され、日本国内でもお披露目された。

これまでに公開されていたティーザー映像などからも予想されていたように、先代の「DBS」が「DB9」をベースにしていたのと同様、新しいDBSスーパーレッジェーラはDB11をベースに開発されている。それゆえそのスタイリングも、全体的なシルエットはDB11によく似ている。アストンマーティンをよく知らない人が見たら、一瞬では区別はつきにくいかもしれない。

が、アストンマーティンのファンやハイパフォーマンスカーに詳しい人の目には似て非なるものと映るに違いない。最初に気づくのは、フロントグリルが伝統的なイメージを保ったまま大きく広げられていることだ。グリルの左右に設けられた大型のエアインテーク、より立体的な造形となったボンネットにうがたれた大型のエアアウトレット、新たに設けられた大型のサイドスカートなどと合わせ、ジェントルな雰囲気のDB11とは異なったすごみすら感じられる迫力を漂わせている。

前後のフェンダーが拡幅されていることも、その印象を強調している。DBSスーパーレッジェーラはDB11より前後のトレッドが拡大されており、それに合わせてフロントで10mm、リアで20mm、フェンダーも広げられている。筋肉が増強されたかのように、フォルムにマッシブなおもむきが加わっているのは、そのおかげである。

エアロダイナミクスにも手が入っている。フロントのスプリッターはやや大型化された印象で、その両脇のDB11ではストレートに落ちてきていたフロントバンパーの両サイドが、小さなフィンのような形状へと変更された。フロントフェンダー後部下側には切り欠きが設けられ、エアを大型サイドスカートに流す役割を果たしている。チムニー効果でフロントから入ったエアを素早く吐き出すサイドストレーキもさらに大型化され、ルーバー形状へと変更された。またリアエンドにはカーボン製のスポイラーが追加され、下部のディフューザーは大型化されたうえにF1マシンから着想を得た二重構造とされている。そしてCピラーのインテークから空気を取り込んでリアエンドから排出するエアロブレードは、エアの流入量と排出量を増やすべく、入り口も出口も拡大されている。

結果、最高速度で走っているときのダウンフォースは180kgと、アストンマーティンのプロダクションモデルでは史上最高の数値を得るに至った。しかもドラッグは一切増えていないのだという。

2つのターボで過給される5.2リッターV12エンジン。最大のライバルである「フェラーリ812スーパーファスト」を182Nm上回る最大トルク900Nmを発生する。


	2つのターボで過給される5.2リッターV12エンジン。最大のライバルである「フェラーリ812スーパーファスト」を182Nm上回る最大トルク900Nmを発生する。
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スクエアな形状のステアリングホイール。スポーク部にはサスペンションの調節スイッチが備わる。
スクエアな形状のステアリングホイール。スポーク部にはサスペンションの調節スイッチが備わる。拡大
幾何学的な模様のステッチが入れられたスポーツシート。ホールド性だけでなく、長距離走行時の快適性もセリングポイントとなっている。
幾何学的な模様のステッチが入れられたスポーツシート。ホールド性だけでなく、長距離走行時の快適性もセリングポイントとなっている。拡大
トランクは、カーボンファイバー製のリッドが採用されている。写真はバッグ類を積み込んだ様子。
トランクは、カーボンファイバー製のリッドが採用されている。写真はバッグ類を積み込んだ様子。拡大
国内価格は現時点では確定していないが、税込みで3450万円前後になるという。
国内価格は現時点では確定していないが、税込みで3450万円前後になるという。拡大

大幅な軽量化とパワーアップを実現

だが、このボディーの最大のトピックは、エンジンフードとトランクリッドがカーボンファイバー製になっていることだろう。それは言うまでもなく軽量化のためで、乾燥重量ではDB11より77kg軽い1693kgへとダイエットを果たしている。車名につく“スーパーレッジェーラ”は、かつてアストンマーティンの車体作りのパートナーだったミラノのカロッツェリア・トゥーリングが持つ軽量構造技術のこと。今となっては時代に全く合わない製法ゆえ、このクルマにそのテクノロジーは使われていない。にも関わらず伝統的な“スーパーレッジェーラ”のバッジが車体に付けられているのは、かつてのパートナーへのリスペクトの意味合いと軽量化を施したモデルであることを兼ねてのことだろう。

肝心のパワートレインも、もちろんDB11由来である。5.2リッターV12ツインターボは大幅にチューンナップが施され、725ps/6500rpmの最高出力と900Nm/1800-5000rpmのアウトプットを得るに至った。パワーウェイトレシオを計算するとDB11の2.91kg/psに対して2.34kg/psで、0-100km/hはDB11より0.5秒速い3.4秒と、加速力も大幅に向上している。発進加速のみならず中間加速もかなりのもので、4速固定の80-160km/hは4.2秒。そして最高速度は340km/hに達するという。

そのパフォーマンスを支えるべく、接着アルミニウム構造の基本骨格も最新進化版、アダプティブダンパーも最新の専用チューニング、21インチへと拡大されたホイールも専用品、タイヤもピレリと共同開発した専用品と、あらゆる部分に手が入れられている。「DB11 V12」とそれをベースにした「DB11 AMR」ですら乗り味が異なるのだから、このDBSスーパーレッジェーラはさらに新しい高みをDBシリーズに与えてくれているに違いない。

そうなると少しでも早くそのステアリングを握ってみたいと思われる方もいらっしゃるだろうが、DBSスーパーレッジェーラのデリバリー開始は本国でも2018年の第3四半期、つまり9月以降。もうしばらく待つ必要がある。ちなみに価格は、英国で22万5000ポンド(邦貨にして約3275万円)、ドイツで27万4995ユーロ(同3528万円)、米国で30万4995ドル(同3357万円)。日本では3450万円前後になる見込みだが、その高価格もクルマの成り立ちやパフォーマンス、それにフラッグシップであることを考えれば納得せざるを得ないだろう。

(文=嶋田智之)

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