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トヨタ入魂の「コネクティッドカー」
何がそんなに“ありがたい”のか?

2018.07.04 デイリーコラム

スマートフォンで事足りる!?

トヨタ自動車は2018年6月26日に、初代「コネクティッドカー」(トヨタはコネクテッドカーをこう表記する)と位置づける「カローラ スポーツ」と新型「クラウン」を発売した。鳴り物入りで登場したコネクティッドカーだが、そもそも“初代”とはどういうことなのか。それにコネクテッドカーの一体何がありがたいのだろうか。

コネクテッドカーの歴史は意外と古い。トヨタ自動車は17年前の2001年にテレマティクスサービス「G-BOOK」を発表、2002年から実際にサービスを開始した。これは、カーナビゲーションシステムに通信機能や音声認識、データ読み上げの機能を備えることで、ニュース、天気、株価、カーナビと連動した交通情報、地図、音楽、電子書籍、映像などの情報を提供するほか、電子メールなどの送受信、ネットワークゲーム、ネットワークカラオケ、会員情報サービス「GAZOO」での商品購入など、多彩な機能を実現することを目指していた。

トヨタの後を追って、日産自動車は「カーウイングス」、ホンダも「インターナビ」と呼ぶ通信カーナビを使った情報提供サービスを開始した。ところがこれらのサービスは、実際にはいずれも鳴かず飛ばずに終わった。通信機能を持つカーナビを持っていても、通信料金を負担してまで通信機能を使わないユーザーが多かったのだ。その最大の理由は、わざわざカーナビを使わなくても、スマートフォンを使えばこれらの機能のほとんどは実現できてしまったことにある。

完成車メーカー各社は通信機能を備えた純正カーナビを装着した場合には通信料金を無料にするなどの対策を講じてきたが、この場合でも最も使われる機能は道路状況などを考慮した「最短のルート案内」で、「Google Map」の「ルート案内」でも代用が利くものだ。「つながるクルマ」で新たな価値を生み出すことは難しいのではないかという、半ば諦めのような空気が、つい最近まで自動車業界にはあった。

トヨタが初代の「コネクティッドカー」として2018年6月26日に発売した、新型「クラウン」。
トヨタが初代の「コネクティッドカー」として2018年6月26日に発売した、新型「クラウン」。拡大

状況を変えたシェアサービス

ところが「つながるクルマ」の萌芽(ほうが)は、全く別の方向から突然やってきた。それが米ウーバー・テクノロジーズに代表されるライドシェアサービスの急速な普及である。スマホで一般ドライバーが運転するクルマを呼び出し、好きなところへタクシーよりも割安に移動できるライドシェアサービスは、クルマが直接通信回線につながっているわけではない。それでもドライバーのスマホとクルマが間接的に結びつくことで、新たな価値を生み出すことに成功した。

“つながる”技術を個人間のカーシェアリングに活用しようという動きも出てきた。中国の完成車メーカーである吉利汽車が展開するブランド「Lynk & Co」の車両は、ユーザーが使わない時間をクルマのタッチパネルで登録しておくと、カーシェアリングサービスに自分の車両を提供できる機能を最初から備えているのが特徴だ。

カーシェアリングサービスの利用者は、スマートフォンのアプリで利用したい場所にある車両を探して予約し、時間内であれば自由に車両を使える。現在でも個人間のカーシェアリングサービスはあるが、借り主と貸主が会ってキーの受け渡しをしなければならないという手間がかかる。これに対してLynk & Coの車両は、利用者がスマートフォン上でアプリを操作することで、ドアの解錠やエンジンの始動が可能で、クルマのオーナーと利用者双方の手間が省ける。

新型ハッチバック車「カローラ スポーツ」。15代目「クラウン」と同様、ユーザーはトヨタのコネクティッドサービスを利用することができる。
新型ハッチバック車「カローラ スポーツ」。15代目「クラウン」と同様、ユーザーはトヨタのコネクティッドサービスを利用することができる。拡大

「あったら便利」じゃ続かない

将来自動運転技術の普及が進めば、つながる機能は“あれば便利な機能”から“必須の機能”に変わる。自動運転車の場合、交通状況を考慮した最適なルート選択にも、自動運転ソフトウエアの更新にも、そして自動運転タクシーを呼び出すにも通信機能は不可欠だからだ。トヨタが今回発売したカローラ スポーツとクラウンを「初代コネクティッドカー」と呼ぶのは、両車種がトヨタとして初めて、最初から「DCM」と呼ぶ通信モジュールを標準搭載する車種だからである。その背景には、ここまで説明してきたように、将来のクルマでは“つながる”ことが当たり前の機能になることが背景にある。

もっとも、今回のトヨタの発表を見ると、鳴り物入りで登場した割に、搭載機能はインパクト不足の感が否めない(添付イメージ参照)。車両データからオペレーターが車両の状態を診断する「eケア走行アドバイス」や「eケアヘルスチェックレポート」は、完成車メーカーが以前から導入したがっていた機能で、系列の販売店での点検や修理を促す「切り札」と位置づけていたものだが、ユーザーから見れば「サービスの押し売り」に見えなくもない。

唯一、キラーアプリケーションになり得るのが「AI音声エージェント」だ。これは人工知能(AI)のバーチャルエージェントがユーザーの自然発話を聞き取り、ナビの目的地設定やオーディオの操作、機器の取り扱い説明などを行うもの。「このへんにあるそば屋を探して。駐車場のあるところがいい」など、あいまいな指示でも理解できるという。ただこうした機能は米アマゾン・ドット・コムや米グーグルといったIT大手が得意とする分野で、トヨタがどこまで強みを発揮できるかは未知数だ。

トヨタのコネクテッドカーは最初の車検までは通信料は無料だが、4年目以降はクラウンが1万6000円+税=1万7280円、カローラ スポーツが1万2000円+税=1万2960円の通信料がかかる(いずれも1年あたり)。「つながるクルマ戦略」が成功するかどうかは、つながる機能が「あれば便利」程度ではなく「なくてはならない」とユーザーに思わせられるかどうかにかかっている。さもなければ、ユーザーは通信料を払ってくれず、DCMは宝の持ち腐れになる恐れがある。

(文=鶴原吉郎<オートインサイト>/写真=トヨタ自動車、webCG/編集=関 顕也)

トヨタのコネクティッドサービスのイメージ。DCM車載器を介して車両およびドライバー側の状況を判断、必要とされる情報をオペレーターやAIなどが提供する。
トヨタのコネクティッドサービスのイメージ。DCM車載器を介して車両およびドライバー側の状況を判断、必要とされる情報をオペレーターやAIなどが提供する。拡大
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