何でいまさらカムバック?
最新SUVに見るホンダとトヨタの販売戦略
2018.08.17
デイリーコラム
なぜか日本でフェードアウト
「ホンダCR-V」が2018年8月30日に日本で復活するという。今回のCR-Vは通算5代目の新型で、2016年秋にまずは北米、続いて中国で発売……と市場を順次拡大してきた。ちなみに先代CR-Vは日本国内では2016年3月に生産終了。在庫販売は同年8月頃まで続けられたようだが、いずれにせよ、日本市場におけるCR-Vには2年~2年半の空白があった。
そんなCR-V復活のニュースに、同じく日本市場復活を宣言した新型「トヨタRAV4」を重ねあわせるマニア筋は多いと思う。
復活するRAV4も先日グローバル公開されたばかりの新型(5代目)で、日本発売は来年夏を予定。RAV4は日本でも2005年デビューの3代目の途中まで販売されていたが、2007年にそのロング版が「ヴァンガード」という別名で登場。さらにそのヴァンガードも2013年に3代目「ハリアー」と入れ替わる形で姿を消していた。
CR-VとRAV4といえば、1990年代半ばに世界に先駆けて誕生した“ライトクロカン”の草分けである。それまで独立ラダーフレームとパートタイム4WDが定番だった“ヨンク”の世界に、乗用車と同じ骨格構造の車体を持ち込んだのがライトクロカンであり、つまりは今のSUVの元祖ともいえる。
そんな元祖SUVが、ここ数年のSUVの本格大ブレーク期に合わせるかのように日本市場から姿を消していたわけだ。あらためて、奇異な現象にも思える。思い返してみれば、当時のCR-VもRAV4も「惜しまれつつの撤退」ではなく、明らかに日本市場での存在感を失ってのフェードアウト感が濃厚だった。しかし、どちらも世界的に人気が低下したわけではない。むしろ正反対。RAV4もCR-Vも日本での存在感を失っていた(もしくは販売されていなかった)時期に、ともにSUVの世界ベストセラーの座を争うトップブランドに成長した。このように、両車はほぼ同期に生まれた元祖SUVであると同時に、直近では「世界で売りまくるために、日本市場を諦めた」という点でも境遇が酷似するが、その理由はホンダとトヨタで微妙に異なる。
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復活にいたる理由はさまざま
CR-Vにかぎらず、ここ10年ほどのホンダが海外と国内の戦略を明確に分けてきた背景には、2008年のリーマンショックの影響がある。
あの未曾有の経済危機で、経営的にもっとも痛めつけられた日本の自動車メーカーは、ホンダだったといわれている。当時最大級の危機感を抱いたホンダは、国内生産を安定させるために、日本市場での主力商品を軽自動車(以下、軽)とミニバン、そしてコンパクトカーという3本柱に集中させた。軽とミニバンは国内専用商品だから、グローバルと日本で共通するホンダ車は実質的に「フィット」や「ヴェゼル」などのコンパクトカーだけとなった。
その結果、ホンダは見事に経営危機を脱したが、今度は、彼らの国内市場が“軽にかたよりすぎた販売構造”と“行き場を失った大量の既存車種ユーザー”という2つの課題を抱えることになった。最近のホンダがCR-Vのみならず「シビック」や「クラリティ」など、以前とはまるで正反対に、グローバル商品の日本発売に積極的なのはリーマンの反動でもある。
日本市場の構造改革に悩むのはトヨタも同じ。知ってのとおり、国内でズバ抜けた販売力をもつトヨタは、国内専用商品の数も他社を圧倒しており、それがトヨタの国内市場での強さの一因だったのも事実だ。しかし、国内市場のさらなる縮小、世界的な技術競争の激化を考えると、大量の国内専用商品を抱え続ける負担は大きい。昨秋、「トヨタが2020年代半ばまでに国内販売車種を半減」という報道がなされたが、さもありなん。先日の「カローラ スポーツ」の発売時にも、新型「カローラ」に従来のような日本専用仕様が存在しないことが明らかになった。RAV4の国内復活で次期ハリアーがどうなるかは不明だが、カローラ スポーツに続くRAV4が、トヨタ国内専用商品の大幅整理の先兵になるであろうことは想像にかたくない。
まあ、かつてCR-VやRAV4の国内での存在感が薄れてしまったのは、外的要因のせいとばかりもいいきれない。日産の「エクストレイル」は同クラスでありながら、対照的に国内ベストセラーSUVであり続けてきたわけだし、「スバル・フォレスター」「マツダCX-5」など、海外でCR-VやRAV4と直接競合する国産SUVは、すでに日本でもきちんと売れている。
CR-VやRAV4が日本からの撤退を余儀なくされたのは、日本市場を無視した商品企画だったからだった。最近になって日本人の嗜好が以前よりグローバル市場に近づいてきており、ホンダとトヨタも「今がチャンス」と判断したということだろう。
いずれにしても、CR-VとRAV4の国内復活で、日本のCセグメントSUV市場はさらなる活況を呈することは必至。面白くなりそうではある。
(文=佐野弘宗/写真=webCG/編集=関 顕也)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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