日産、太陽光発電によるEV充電の実験を開始
2011.07.11 自動車ニュース日産、太陽光発電によるEV用充電システムの実験を開始
日産自動車とフォーアールエナジーは2011年7月11日、神奈川県横浜市の日産グローバル本社において、「リーフ」のリチウムイオンバッテリーと太陽光発電を組み合わせた電気自動車(EV)用充電システムの実証実験を開始した。
■1年間でリーフ1800台分の充電が可能
日産グローバル本社のルーフに設置されたのは、テニスコートおよそ1.5面分の太陽電池。ソーラーフロンティア社の「CIS太陽電池」は最大出力40kWの発電能力を備え、ここで発電した電力は、本社ビル内のバッテリーに蓄えられたのち、敷地内にある7基の充電器でEVの充電に使われる。普通充電に加えて急速充電(3基)にも対応する。太陽電池により発電した電力で走れば、走行時だけでなく発電時も含めて二酸化炭素排出量はゼロとなる。
説明によれば、このシステムにより年間4万3800kWhの発電が可能だという。「リーフ」のバッテリー容量が24kWhだから、この電力量は約1800回分のフル充電に相当する。しかも、余剰電力は、本社ビルに供給されるというから、無駄がない。
■再生可能エネルギーを有効利用
興味深いのは、電力の貯蔵にリーフ用のリチウムイオンバッテリーが使われていること。蓄電装置内のラックにはリーフ4台分のバッテリー(96kWh)が収められている。
今回は新品バッテリーを利用したが、本来、同社のプランではEV用としての役目を終えた中古のバッテリーを二次利用することが計画されている。EV用のバッテリーは容量が大きいので蓄電や電力供給に適しているうえ、耐久性にも優れるため、仮に5年程度EV用に使用しても、新品の8割程度の容量を維持すると考えられる。クルマを廃車にした後も、バッテリーはまだ利用できる可能性が高いので、二次利用バッテリーの有効利用策のひとつとして、蓄電装置への応用が考えられているのだ。
そもそも、フォーアールエナジー社は、日産と住友商事が、車載用リチウムイオンバッテリーの二次利用について、その可能性を探るために設立した企業。車載用リチウムイオンバッテリーの再利用(リユース)に加えて、必要に応じてバッテリーモジュールを再構成して再製品化(リファブリケート)、再販売(リセール)、そして最終的にはリサイクルの「4R」をビジネスとしている。
昨今の電力供給不安や、太陽光発電や風力、水力といった再生エネルギーへの関心が高まるなかで、家庭用あるいは事業所向けの蓄電システムが注目を集めているが、これに欠かせないのが大容量のバッテリーだ。フォーアールエナジーは、EV用バッテリーを二次利用することで、競争力のある価格で製品を提供しようというのである。
同社はすでに家庭用の小型システム(12kWh)の開発を進めており、2011年12月にはモニター販売を開始し、2012年以降の本格販売を目指している。また、今回の実証実験をもとに、数百kWhの中型システムを開発し、商業施設や公共施設向けの中型蓄電システムの市場開拓を狙っている。
■リーフが"スマートハウス"の鍵に
一方、大容量バッテリーを積むリーフは、その新たな利用法について開発が進んでいる。リーフに積まれる24kWhのバッテリーは、一般家庭の日常使用量の約2日分にあたるほどの大容量。このリーフを家庭用の蓄電システムに組み込むことで、たとえば、太陽光発電の余剰電力や、供給に余裕がある夜間電力を車載バッテリーに蓄え、必要に応じて家庭に供給することで、停電時のバックアップに活用したり、電力需要のピークを抑えることが可能になる。
再生可能エネルギーの活用と電力の最適管理を目指す「スマートハウス」では、蓄電システムが不可欠となるが、日産はリーフを蓄電システムとして活用する研究成果を近々発表する予定だ。そうなると、リーフがスマートハウスにとって重要な役割を果たすことになり、日産としては、将来、スマートコミュニティ、そして、スマートグリッドに進化するうえでEVを重要な存在としたい考えだ。
(文=生方聡)
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