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自動車の“サービス化”はもはや必然!
変革の時代に完成車メーカーがとるべき戦略とは

2018.09.10 デイリーコラム

消費者のニーズに応えられていない“自家用車”

日本では、自動運転や電気自動車(EV)の企業間競争において、“技術力”こそが勝利するための最大の要素だと考えられているように見える。実際、「自動運転」「遅れ」などのキーワードでインターネット検索をすると、自動運転の技術レベルで日本が欧米に遅れているのではないか、と懸念する記事がいくつも出てくる。

しかし、次世代のモビリティーを考えるうえで、自動運転やEVなどの技術力は手段に過ぎない。本当に重要なのは、そうした技術を使って生み出す商品やサービスの“価値”であって、極端にいえば、自動運転車だろうとEVだろうと、消費者がその価値を認めなければ何の意味もない。詳しくは拙著『EVと自動運転 ~クルマをどう変えるか』をご覧いただきたいのだが、この“価値”を生み出す力という点において、現代のクルマ、そして自動車メーカーは消費者の要求にまったく応えられていない。

現代の消費者は、居ながらにして買い物ができるアマゾンの通販サービスや、レンタル店に足を運ぶことなく映画を視聴できるネットフリックスなどの動画配信サービスの便利さに慣れている。こうしたサービスが提供する「いつでも」「どこでも」「誰でも」「すぐに」「簡単に」「多様な選択肢の中から」「安く」といった価値に比べると、クルマは「いつでも」「どこでも」「すぐに」使えるわけではなく、「誰でも」「簡単に」扱えるわけでもなく、購入後は「多様な選択肢の中から」選ぶことができず、しかもデフレ経済の日本にあって年々価格が上昇するなど、「安く」という観点でも落第の商品である。

『EVと自動運転 ~クルマをどう変えるか』(鶴原吉郎著 岩波新書)
『EVと自動運転 ~クルマをどう変えるか』(鶴原吉郎著 岩波新書)拡大

真の競合は“よその自動車メーカー”ではない

例えば米ウーバー・テクノロジーズが提供するライドシェアリングサービスは、「いつでも」「どこでも」「すぐに」「誰でも」「割安に」「多様な選択肢の中から」移動手段を提供するという点で、自家用車より格段に優れている。また最近普及し始めた「クルマを利用する権利」を「月単位の定額料金」などで提供する「サブスクリプション契約」は、普段はセダンに乗っていても、必要なときに多人数乗車の車種に交換できるなど、「多様な選択肢」という点で従来の「自家用車を購入する」という利用形態よりも自由度が高い。

自動運転技術が実用化すれば、必要なときにクルマを呼び出して利用する「無人タクシー」が実用化され、現在のライドシェアやサブスクリプション契約よりも、さらに安く、より利便性の高い、しかもより多様なサービスが提供されるようになると予想されている。自動運転車を使って試験的な移動サービスを提供し始めているグーグルや、ライドシェアリングサービス大手のウーバー、中国滴滴出行などのサービスプロバイダーが注目されているのはこのためだ。
 
こうした分野で勝ち抜くために重要なのは、消費者にとって価値の高いサービスを生み出す能力であり、繰り返しになるが、自動運転やEVはそのための手段に過ぎない。しかし日本の完成車メーカーはこうした能力に乏しい。クルマを作って売るというビジネスモデルが100年以上変わっていない自動車業界は、新しいビジネスモデルを生み出してきた経験に乏しく、それに適した人材も足りない。真の競合相手は海外の完成車メーカーではなく、グーグルや、ウーバーや、アマゾンといった、ユーザー目線で新しいサービスを生み出すことに長(た)けたIT企業だろう。

各社が血道を上げて開発に取り組んでいる電動化技術も自動化技術も、あくまでもサービスを提供するための“手段”にすぎない。写真は2018年のニューヨークショーに展示された、ウェイモとジャガーが共同開発した自動運転の電気自動車。
各社が血道を上げて開発に取り組んでいる電動化技術も自動化技術も、あくまでもサービスを提供するための“手段”にすぎない。写真は2018年のニューヨークショーに展示された、ウェイモとジャガーが共同開発した自動運転の電気自動車。拡大

日本の完成車メーカーは“価値”を生み出せるか

そう考えてくると、日本の完成車メーカーは、これまでとは全く違う戦い方をすべきではないか。IT企業が得意とするサービス分野での直接対決を避け、サービスプロバイダーに車両というハードウエアを供給する立場に徹するというのも一つの方向だろう。日本の完成車メーカーはこうしたビジネス形態をIT企業の「下請け」になるとして忌み嫌ってきた。しかし、すでに電機産業や半導体の世界では、製品の製造をEMS(受託製造専門サービス企業)やファウンドリ(半導体製造を専門に手がける企業)のような企業に委ねることが当たり前になっている。例えば、完成車メーカーの機能を設計・開発と製造に分け、製造会社は他社からの依頼を積極的に受けるというような形だ。

もちろん、自社開発の商品をやめる必要はないが、開発と製造が一体のままでは、他社はおいそれとは製造を委託してくれないだろう。また開発部門自体についても、他社の企画を基に開発を受託するという形態もあっていい。自社でサービスを手がけるという方向はもちろん必要だが、それでも、すべてのサービスを自社で手がけるのは難しいだろう。

「完成車メーカー」という形態を一度バラバラにして、外部の企業と組みやすいように企業の構造そのものを見直すくらいの大胆な改革が、完成車メーカーには求められている。

(文=鶴原吉郎<オートインサイト>/写真=トヨタ自動車、webCG/編集=堀田剛資)

握手を交わすトヨタの友山茂樹副社長と、ウーバーのダラ・コスロシャヒCEO。トヨタは自動運転技術を活用したライドシェアサービスの実現を目指し、ウーバーとの協業を拡大。さらに同社に5億ドルを出資すると発表した。モビリティーがサービス化した時代において、完成車メーカーはどのように生き残り、どこに役割を見いだすか、各社が模索を続けている。
握手を交わすトヨタの友山茂樹副社長と、ウーバーのダラ・コスロシャヒCEO。トヨタは自動運転技術を活用したライドシェアサービスの実現を目指し、ウーバーとの協業を拡大。さらに同社に5億ドルを出資すると発表した。モビリティーがサービス化した時代において、完成車メーカーはどのように生き残り、どこに役割を見いだすか、各社が模索を続けている。拡大
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