ビューティフル&ダイナミック!
ボルボのデザインディレクターが新型「V60」を語る
2018.09.28
デイリーコラム
元は3ドアのデザインスタディー
「クルマに限らず、スプーンでもフォークでも椅子でも、プロダクトのデザインで大事なのはプロポーション。つまり“比率”なんです」と熱弁を振るうのは、新型「ボルボV60」のデザインを取りまとめたT.ジョン・メイヤー氏。誰の目にもハンサムに見える新型V60の、生みの親が言うのだから説得力もあるというものだ。
そのカッコよさの決め手はどこにあるのか? 氏によれば、典型的なFF車スタイルだった先代のプロポーションを捨て、新開発プラットフォームをベースによりFR車らしくしたこと――具体的にはフロントオーバーハングとホイールベースを長く取り、キャビンのポジションを後退させたのがポイント。これにより、やや“前のめり”な印象のあった先代に比べ、低い姿勢を保ちリラックスしているイメージも得られたという。
メイヤー氏は、米国フォード(2006-2011年)でカーデザイナーとしてのキャリアをスタートさせた。2011年にボルボに移籍してからは、デザインマネージャーあるいはリードデザイナーとして、7年間でコンセプトモデルを含む7車種の開発に関わった。新型V60の元となっているのは彼が2014年に描いた3ドアのデザインスタディー「ボルボ・コンセプト エステート」で、その流れをくむ2代目V60の取りまとめも必然的に担うことになった。
なるほど、道理でスタイリッシュなわけだ。いっそのことオリジナルの3ドア版をそのまま製品化する考えはなかったのですか? という意見に対しては、「そもそもコンセプト エステートは5ドアの新型V60を前提にしたものですから……」と困惑しながらも「3ドア、いいですよね。シューティングブレークの形でかっこいい! と言っていただけるのはありがたいです」と笑顔を見せた。
そう、ワゴンのV60では実用性も最重要課題だ。実際に新型は「先代V60よりもむしろ(大きくてワゴンらしいキャラクターの)『V70』の後を継ぐクルマ」とも説明されている。実用性とスポーティーさの両立。そのためにメイヤー氏は、荷室に近いリアクオーター部の面に「力いっぱい引かれた弓が放たれる際の、引っ張り感や緊張感」を表現したという。ボディーサイドのシャープなキャラクターラインや、ドアパネルの絞り込み、フロントのロワグリルも躍動感を生み出す意匠だが、このためリアのドアヒンジを下方に移設し、ラジエーターのレイアウトを工夫するなど、内部構造の設計変更に骨を折ったそうだ。
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デザイナーにとってチャレンジング
そうして完成した新型V60はパッと見、先行デビューした上級ワゴン「V90」によく似ている。もちろん違う車種である以上、フロントグリルやヘッドランプ、リアコンビランプ、サイドのキャラクターラインなど、ディテールの違いはたくさん挙げられるが……かくも見た目が“そっくりさん”だと、ユーザーから飽きられてしまう恐れはないだろうか?
「デザインランゲージを車種間で統一すべきか、それとも別々にするかということは、これまで常に考えられてきた大きな問題なんです」としながらも、メイヤー氏は、ことV60についてはネガティブな側面はないという。
「ボルボのようなさほど規模の大きくないメーカーにとって、それぞれの車種を兄弟のように見せて一貫したブランドイメージを構築するのは、大事なことなのです。現実には、V90は“子どもが独立した熟年層”、V60は“若い家族”というように、それぞれの客層やライフステージは異なりますから、個々のユーザーに飽きられてしまうということはないのです」
では、デザイナーであるメイヤー氏自身は? 退屈に感じたり、フラストレーションになるようなことは……?
「いえ、プラットフォームが同じで、しかもブラザーのように見せなければならないクルマ同士で違いを出すというのは、デザイナーとしてむしろチャレンジングなことですよ(笑)」
そんなメイヤー氏にとってのカーデザインの理想は、「ピュアで、シンプルで、ビューティフルで、かつダイナミックであること」。そしてそれは、目の前にある新型V60でもしっかり表現できているように思える。新型V60は、さぞや会心の作品なのでしょう、と思いきや、セダン「S60」の新型や電動車「ポールスター1」のほうがお気に入りであるらしい。ちなみに、メイヤー氏が一番好きなデザインのクルマは、“最後の空冷ポルシェ”となった「911カレラ」の「タイプ993」だそうだ。
「将来的な商品計画に関わることは何も言えない」と断りながらも、「これから電動化や自動運転といった課題に取り組む中で、自動車は変わっていくでしょう。そうした世の動きに合わせて、カーデザインも変化するはず」と語るメイヤー氏。これからどんな新型ボルボが出てくるのか、楽しみに待ちたい。
(文と写真=関 顕也)
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関 顕也
webCG編集。1973年生まれ。2005年の東京モーターショー開催のときにwebCG編集部入り。車歴は「ホンダ・ビート」「ランチア・デルタHFインテグラーレ」「トライアンフ・ボンネビル」などで、子どもができてからは理想のファミリーカーを求めて迷走中。
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