トヨタ・スープラ プロトタイプ(FR/8AT)
雨に踊れば 2018.12.07 試乗記 来月(2019年1月)に迫った正式発表を前に、トヨタが新型「スープラ」のプロトタイプ試乗会を開催した。そこで語られた新型のキャラクターとは? 実際のドライブフィールは? webCG編集部員が、速報でお届けする。まだカムフラージュは外せません
トヨタが「直6エンジン・後輪駆動」にこだわり、BMWとの協業でもって復活させた高性能スポーツカー、スープラ。正式発表は2019年の北米国際自動車ショー(デトロイトモーターショー)なのだが、期待にモンモンとして過ごす業界関係者に気を使ってか、千葉は袖ヶ浦フォレストレースウェイでプロトタイプによるプレ試乗会が催された。
これまでのところ「『BMW Z4』とコンポーネンツを共有する」こと以外の詳細は伏せられており、今回もスペックなどは一切明かされなかったが、それでもおおまかなキャラクターについては語られた。いわく、世界の名だたる2シータースポーツカーの中でも群を抜いてワイドトレッド&ショートホイールベースで、水平対向エンジンを搭載した「トヨタ86」よりも重心が低く、スチールとアルミを使用した車体の剛性は、カーボンボディーの「LFA」より高いとのこと。
聞けば聞くほど、「さぞや刺激的な走りを披露してくれるのだろう」と胸がトキメクところだが、当日の袖ヶ浦フォレストレースウェイはものの見事に雨。小生、自慢じゃないけど袖ヶ浦を走るのはこれが初。乗るのは(たぶん)300psオーバーのがちんこスポーツカー。なかなかにシビれる展開である。同業者が見守る中、クラッシュだけはゼッタイすまいと心に誓ってピットレーンから出撃する。
走りだしは非常に好印象。エンジンフィールはいかにも直6といったスムーズな吹け上がりと、誰もがナットクしそうなステレオタイプの快音が魅力。なんと表現すればよいのでしょうね、直4的ツブツブ感のないこの感じ(あれはあれで好きなんだけど)。エンジンフィールについて「シルキー」って言葉を初めて使ったジャーナリストはホントに文学者だと思う。
![]() |
ウエット路面でスベる スベる!
バン、バンと素早くキマる8段ATの変速も文句ナシ。減速時には適度なショックが体を襲い、もう気分アゲアゲである。自動変速の判断も的確で、記者ごときが試行錯誤して袖ヶ浦のラインを探る分には、シフトパドルに手を伸ばす必要はなかった。
問題はトラクションである。といってもクルマのせいではなくて天候のせいなのだが、踏めば応えるレスポンシブでマッチョなトルクのおかげもあって、コーナーからの立ち上がりでは後輪がまあスベるスベる。「スポーツモードやトラコンの介入度をいじってみれば?」とおっしゃる方もおられるだろうが、当日の路面が「いや、もうそういう問題じゃないんだよ」ってなレベルであったことをご理解いただきたい。クルマには罪はない。記者の腕にも罪はない、ことにしておこう。
試乗を終え、あらためて実車をためつすがめつ。ちょっと気になったのが、昨今のトヨタではスポーツカーか否かを問わずおなじみとなっていた、「エアロスタビライジングフィン」が見当たらないこと。「外装の9割が別物」というのだからBMWとの部品共有が原因ではないはず。お食事中のチーフエンジニア、多田哲哉氏に突撃したところ、「新しいデバイスを作ったんです。細かい話は正式発表のときにまた」とのこと。「86」のときといい、ジラすのが実にうまい御仁である。
以上が、webCGぺーぺー編集部員による新型トヨタ・スープラの第一報でありました。短い内容で恐縮だが、より本格的な記事については、来週にもジャーナリスト・渡辺敏史氏がお届けしてくれるはず。氏の試乗記を乞うご期待。
(文=堀田剛資/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
【スペック】
全長×全幅×全高=--×--×--mm/ホイールベース=--mm/車重=--kg/駆動方式=FR/エンジン=3リッター直6 ターボ(--ps/--rpm、--Nm/--rpm)/トランスミッション=8段AT/燃費=--km/リッター/価格=--万円

堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
-
アストンマーティン・ヴァンキッシュ クーペ(FR/8AT)【試乗記】 2025.10.7 アストンマーティンが世に問うた、V12エンジンを搭載したグランドツアラー/スポーツカー「ヴァンキッシュ」。クルマを取り巻く環境が厳しくなるなかにあってなお、美と走りを追求したフラッグシップクーペが至った高みを垣間見た。
-
ルノー・カングー(FF/7AT)【試乗記】 2025.10.6 「ルノー・カングー」のマイナーチェンジモデルが日本に上陸。最も象徴的なのはラインナップの整理によって無塗装の黒いバンパーが選べなくなったことだ。これを喪失とみるか、あるいは洗練とみるか。カングーの立ち位置も時代とともに移り変わっていく。
-
BMW R12 G/S GSスポーツ(6MT)【試乗記】 2025.10.4 ビッグオフのパイオニアであるBMWが世に問うた、フラットツインの新型オフローダー「R12 G/S」。ファンを泣かせるレトロデザインで話題を集める一台だが、いざ走らせれば、オンロードで爽快で、オフロードでは最高に楽しいマシンに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツGLE450d 4MATICスポーツ コア(ISG)(4WD/9AT)【試乗記】 2025.10.1 「メルセデス・ベンツGLE」の3リッターディーゼルモデルに、仕様を吟味して価格を抑えた新グレード「GLE450d 4MATICスポーツ コア」が登場。お値段1379万円の“お値打ち仕様”に納得感はあるか? 実車に触れ、他のグレードと比較して考えた。
-
MINIカントリーマンD(FF/7AT)【試乗記】 2025.9.30 大きなボディーと伝統の名称復活に違和感を覚えつつも、モダンで機能的なファミリーカーとしてみればその実力は申し分ない「MINIカントリーマン」。ラインナップでひときわ注目されるディーゼルエンジン搭載モデルに試乗し、人気の秘密を探った。
-
NEW
新型「ホンダ・プレリュード」の半額以下で楽しめる2ドアクーペ5選
2025.10.9デイリーコラム24年ぶりに登場した新型「ホンダ・プレリュード」に興味はあるが、さすがに600万円を超える新車価格とくれば、おいそれと手は出せない。そこで注目したいのがプレリュードの半額で楽しめる中古車。手ごろな2ドアクーペを5モデル紹介する。 -
NEW
BMW M2(前編)
2025.10.9谷口信輝の新車試乗縦置きの6気筒エンジンに、FRの駆動方式。運転好きならグッとくる高性能クーペ「BMW M2」にさらなる改良が加えられた。その走りを、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? -
NEW
ホンダ・プレリュード(FF)【試乗記】
2025.10.9試乗記24年ぶりに復活したホンダの2ドアクーペ「プレリュード」。6代目となる新型のターゲットは、ズバリ1980年代にプレリュードが巻き起こしたデートカーブームをリアルタイムで体験し、記憶している世代である。そんな筆者が公道での走りを報告する。 -
NEW
第931回:幻ですカー 主要ブランド製なのにめったに見ないあのクルマ
2025.10.9マッキナ あらモーダ!確かにラインナップされているはずなのに、路上でほとんど見かけない! そんな不思議な「幻ですカー」を、イタリア在住の大矢アキオ氏が紹介。幻のクルマが誕生する背景を考察しつつ、人気車種にはない風情に思いをはせた。 -
NEW
日産リーフB7 X(FWD)/リーフB7 G(FWD)【試乗記】
2025.10.8試乗記量産電気自動車(BEV)のパイオニアである「日産リーフ」がついにフルモデルチェンジ。3代目となる新型は、従来モデルとはなにが違い、BEVとしてどうすごいのか? 「BEVにまつわるユーザーの懸念を徹底的に払拭した」という、新型リーフの実力に触れた。 -
NEW
走りも見た目も大きく進化した最新の「ルーテシア」を試す
2025.10.8走りも楽しむならルノーのフルハイブリッドE-TECH<AD>ルノーの人気ハッチバック「ルーテシア」の最新モデルが日本に上陸。もちろん内外装の大胆な変化にも注目だが、評判のハイブリッドパワートレインにも改良の手が入り、走りの質感と燃費の両面で進化を遂げているのだ。箱根の山道でも楽しめる。それがルノーのハイブリッドである。