普通車用ガソリンエンジンながら20km/リッターを実現!
まだ見ぬVWのパワーユニットを知る
2019.02.11
デイリーコラム
見た目よりもエンジンに注目
先日発売された「ポロTSI Rライン」が気になっている。エアロパーツなどによってスポーティーなデザインに仕上げた「Rライン」が日本のポロに初採用された……ということ以上に興味があるのが、新エンジンの「1.5 TSI evo」が日本で初めて搭載されたことだ。
この1.5 TSI evoは、その名前からも想像がつくように、排気量1.5リッターの直列4気筒直噴ターボエンジンで、最高出力150ps、最大トルク250Nmを誇る。フォルクスワーゲンが「アクティブシリンダーマネジメント(ACT)」と呼ぶ気筒休止機構を搭載しており、エンジン回転が低く、負荷が低い状況などで、第2および第3シリンダーの吸排気バルブを閉じたままにする2気筒運転を行うことで、燃費向上に貢献する。
“evo”(=evolution:進化)というくらいだから、当然、元になるエンジンがあるわけで、それが「EA211」と呼ばれるシリーズである。日本では、現行「ゴルフ」に搭載される1.4リッターターボの「1.4 TSI」や、1.2リッターターボの「1.2 TSI」がこれにあたる。「ゴルフTSIハイライン」の1.4 TSIは、1394ccの排気量から最高出力140ps、最大トルク250Nmを発生。気筒休止機構のACTも採用済みだ。これに対して1.5 TSI evoは、排気量を1497ccにアップして最高出力を10ps上乗せ。さらに、燃料噴射の圧力を350barに高めたり、エンジン内部の機械損失を低めたり、エンジンの熱管理を向上させたりして、高効率化を図った。1.5 TSI evoよりも“EA211 TSI evo”といったほうがわかりやすいかもしれない。
もっとスゴイのがあるんです
実はこの1.5 TSI evoは、ヨーロッパではすでに現行ゴルフなどにも採用され、ガソリンエンジンの主力になりつつある。一方、日本ではEA211の1.4 TSIがそのまま継続採用されており、ゴルフへの搭載はフルモデルチェンジ後の“ゴルフ8”までお預けになりそう。そんな状況下で、話題性のある新エンジンを出し惜しみせず、先行してポロに採用してきたというのが、なんともフォルクスワーゲンらしいところである。
そうなると次の興味は、1.5 TSI evoのさらなるハイテク版がいつ日本に登場するか、ということになる。これが「1.5 TSI ACTブルーモーション」と呼ばれる新エンジンで、1.5 TSI evoにミラーサイクル燃焼方式や可変ジオメトリーターボ(VTG)を組み合わせることで燃費をさらに向上させている。ヨーロッパではすでにこのエンジンを搭載する「ゴルフ1.5 TSI ACTブルーモーション」が販売されていて、アクセルペダルを戻したときに惰力で走行を続けるコースティング時に、完全にエンジンをオフにする「エココースティング機構」を採用。その実現のために、12Vのリチウムイオンバッテリーを用いた「マイクロハイブリッド」を搭載するなど、徹底して燃費を追求するのがフォルクスワーゲンの“ブルーモーション”なのである。
1.5 TSI evoとともに、そのさらに上を行く1.5 TSI ACTブルーモーションが次期ゴルフに搭載されることをファンとしては期待したいところだが、これらの新しいガソリンエンジンに加えて、ディーゼルエンジンのTDIやプラグインハイブリッド、さらにはEVがラインナップされることだろう。パワートレインの選択がますます難しくなるのがうれしくもあり、悩ましくもある。
(文=生方 聡/写真=フォルクスワーゲン/編集=藤沢 勝)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―NEW 2025.12.5 ハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。
-
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る 2025.12.4 「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。
-
タイで見てきた聞いてきた 新型「トヨタ・ハイラックス」の真相 2025.12.3 トヨタが2025年11月10日に新型「ハイラックス」を発表した。タイで生産されるのはこれまでどおりだが、新型は開発の拠点もタイに移されているのが特徴だ。現地のモーターショーで実車を見物し、開発関係者に話を聞いてきた。
-
あんなこともありました! 2025年の自動車業界で覚えておくべき3つのこと 2025.12.1 2025年を振り返ってみると、自動車業界にはどんなトピックがあったのか? 過去、そして未来を見据えた際に、クルマ好きならずとも記憶にとどめておきたい3つのことがらについて、世良耕太が解説する。
-
2025年の“推しグルマ”を発表! 渡辺敏史の私的カー・オブ・ザ・イヤー 2025.11.28 今年も数え切れないほどのクルマを試乗・取材した、自動車ジャーナリストの渡辺敏史氏。彼が考える「今年イチバンの一台」はどれか? 「日本カー・オブ・ザ・イヤー」の発表を前に、氏の考える2025年の“年グルマ”について語ってもらった。
-
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。


































