「マツダ3」ベースの新型SUV
「マツダCX-30」って一体ナンだ!?
2019.03.22
デイリーコラム
どれの後継でもない
「マツダが2019年の3月に新型『CX-3』を公開するらしい」
「アクセラ」の後継モデルとなる「マツダ3」の話題が落ち着いた年明けくらいから、業界内ではそんな新型車のうわさが飛び交っていた。ところがジュネーブモーターショー開催の1週間ほど前になって、「CX-3の新型ではなく新しいラインナップ」という声も聞こえ始め、妙に情報が錯綜(さくそう)していた。ショーの数日前にマツダの広報にさりげなく尋ねてみても「新型SUVですよ」とはいうものの、「あとは現地でのお楽しみ」としか教えてくれない。
いったい何が公開されるのか? 直前になっても関係者がここまで口を割らないのはなぜ? そんな悶々(もんもん)とした気持ちで向かったスイス・ジュネーブ。そこでマツダが世界初公開したのは、次期CX-3ではなく、「CX-30」というニューモデルだった。もしかしてフルモデルチェンジを機に、車名を「3」から「30」に……!?
ところが現地で話を聞くと、CX-3とは別車種だというから驚いた。「本当ですか?」としつこく尋ねてみても「違います。だからCX-30発売後もCX-3は併売します」というのだ。3のほうも、継続販売ですか。車名も違うし、併売されるなら新ラインナップというマツダの説明にも納得しないわけにはいかない。では、CX-3とどう違うと言うの?
「CX-3」以上 「CX-5」未満
最大のポイントはサイズにあった。CX-30のボディーサイズは全長4395mm×全幅1795mmで、これはCX-3(4275mm×1765mm)と「CX-5」(4545mm×1840mm)のちょうど中間。いうなれば「CX-3以上、CX-5未満」だ。なるほど。
開発主査を務めた佐賀尚人氏によれば、「CX-3はデザインの美しさに非常に高い評価をいただいた一方で『後席や荷室が狭い』という声も多くありました。『CX-5では大きすぎる、だけどCX-3では狭すぎる』というお客さまに向けての提案が、このCX-30なのです」とのこと。
確かにCX-30の後席や荷室はCX-3に比べると広く、全長が120mm違うだけでここまで広げられるのかと驚くほどだ。佐賀氏の説明には「子供のいるファミリー」とか「荷室にベビーカーを積む必要がある」という言葉が何度も出てきたから、そのあたりが「CX-3でフォローできなかった部分」であり、「CX-30の狙い」なのだろう。
1540mmという全高(ルーフパネル高)は、言うまでもなく機械式立体駐車場の高さ制限を意識したもの。都会生活に重要なそこをしっかり抑えた一方で、最低地上高がCX-3よりも15mm高い175mmに設定されているのは興味深いところだ(関係ないけれどCX-5は210mmもあって、あらためて驚いた)。メカニズムのベースは新型「マツダ3」だが、ホイールベースをマツダ3の2725mmから2655mmへと縮めてあるのは「全長を4.4mにおさめたかったから」。「駐車場での取り回しを考えると全長は短いほうがいい。特に欧州の縦列駐車は、4.4mを超えると駐車スペースを探すのが難しくなる」とのことだ。車体をできるだけ小さくしつつ、後席や荷室は広げて……というのが開発のポイントなのだろう。
年内にも日本で発売
ところで、どうして2ケタ車名なのか?
CX-3以上CX-5未満なのだから「CX-4」にすればいい、というのは誰もが思うところだろうが、実は中国専用車としてCX-4が存在するのでそれは使えない。
しかし、真の理由はSUVラインナップの再構築にあると筆者はにらんでいる。マツダはSUV各車のポジションを少しずつ変化させようとしているのだ。つまり「3」がひとまわり大きくなって「30」になり、追って「5」が大型化(次期「アテンザ」ベースのFR化?)して「50」に。さらにはコンパクトの穴を埋めるべく「デミオ」をベースにした「20」を登場させ、時間をかけながら全体のサイズを移行し新バリエーション展開にするのでは、と思えるのだ。
モーターショーの現場でCX-3に次期型はあるのか尋ねたところ、返事は「ノーコメント」。単にCX-3の新型とせず、新車名を与え併売としたのは「CX-3が大きくなって高くなった」と言われないための対策ではないかと感じた。
さて、「CX-30」という呼び名は英語では「シーエックス・サーティー」だが、日本ではどう読むべきか? 「さんじゅう」なのか、それとも「さんまる」か? マツダの見解は「日本国内でもサーティーです」。でも「サーティー」ではなんともしっくりこないので、「シーエックス・サンジュウ」と呼んでいたら、それでもマツダ関係者には通じたから、取りあえずそう呼んでも問題なさそうだ。
このCX-30は、2019年の夏から欧州を皮切りに順次発売される予定。日本に入ってくるのは今年の冬くらいになりそう、とのこと。エンジンは2リッターガソリン、1.8リッターディーゼル、そして圧縮着火型ガソリンエンジン「スカイアクティブX」を搭載する予定。価格は……やはり「CX-3以上、CX-5未満」なのだろう。
(文=工藤貴宏/写真=佐藤靖彦、マツダ、GIMS/編集=関 顕也)

工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
-
ただいま鋭意開発中!? 次期「ダイハツ・コペン」を予想する 2025.10.13 ダイハツが軽スポーツカー「コペン」の生産終了を宣言。しかしその一方で、新たなコペンの開発にも取り組んでいるという。実現した際には、どんなクルマになるだろうか? 同モデルに詳しい工藤貴宏は、こう考える。
-
航続距離は702km! 新型「日産リーフ」はBYDやテスラに追いついたと言えるのか? 2025.10.10 満を持して登場した新型「日産リーフ」。3代目となるこの電気自動車(BEV)は、BYDやテスラに追いつき、追い越す存在となったと言えるのか? 電費や航続距離といった性能や、投入されている技術を参考に、競争厳しいBEVマーケットでの新型リーフの競争力を考えた。
-
新型「ホンダ・プレリュード」の半額以下で楽しめる2ドアクーペ5選 2025.10.9 24年ぶりに登場した新型「ホンダ・プレリュード」に興味はあるが、さすがに600万円を超える新車価格とくれば、おいそれと手は出せない。そこで注目したいのがプレリュードの半額で楽しめる中古車。手ごろな2ドアクーペを5モデル紹介する。
-
ハンドメイドでコツコツと 「Gクラス」はかくしてつくられる 2025.10.8 「メルセデス・ベンツGクラス」の生産を手がけるマグナ・シュタイヤーの工場を見学。Gクラスといえば、いまだに生産工程の多くが手作業なことで知られるが、それはなぜだろうか。“孤高のオフローダー”には、なにか人の手でしかなしえない特殊な技術が使われているのだろうか。
-
いでよ新型「三菱パジェロ」! 期待高まる5代目の実像に迫る 2025.10.6 NHKなどの一部報道によれば、三菱自動車は2026年12月に新型「パジェロ」を出すという。うわさがうわさでなくなりつつある今、どんなクルマになると予想できるか? 三菱、そしてパジェロに詳しい工藤貴宏が熱く語る。
-
NEW
なぜ給油口の位置は統一されていないのか?
2025.10.14あの多田哲哉のクルマQ&Aクルマの給油口の位置は、車種によって車体の左側だったり右側だったりする。なぜ向きや場所が統一されていないのか、それで設計上は問題ないのか? トヨタでさまざまなクルマの開発にたずさわってきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】
2025.10.14試乗記2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。 -
ただいま鋭意開発中!? 次期「ダイハツ・コペン」を予想する
2025.10.13デイリーコラムダイハツが軽スポーツカー「コペン」の生産終了を宣言。しかしその一方で、新たなコペンの開発にも取り組んでいるという。実現した際には、どんなクルマになるだろうか? 同モデルに詳しい工藤貴宏は、こう考える。 -
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】
2025.10.13試乗記BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。 -
マツダ・ロードスターS(後編)
2025.10.12ミスター・スバル 辰己英治の目利き長年にわたりスバル車の走りを鍛えてきた辰己英治氏。彼が今回試乗するのが、最新型の「マツダ・ロードスター」だ。初代「NA型」に触れて感動し、最新モデルの試乗も楽しみにしていたという辰己氏の、ND型に対する評価はどのようなものとなったのか? -
MINIジョンクーパーワークス(FF/7AT)【試乗記】
2025.10.11試乗記新世代MINIにもトップパフォーマンスモデルの「ジョンクーパーワークス(JCW)」が続々と登場しているが、この3ドアモデルこそが王道中の王道。「THE JCW」である。箱根のワインディングロードに持ち込み、心地よい汗をかいてみた。