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ハーレーダビッドソン・アイアン1200(MR/5MT)

鉄馬的スポーティネス 2019.04.12 試乗記 伊丹 孝裕 ハーレーダビッドソンのラインナップにおいて、日本で根強い人気を誇る「スポーツスター」ファミリー。中でも70年代に範を求めたデザインが目を引くのが「アイアン1200」だ。アメリカンとヨーロピアン、双方のバイクの特徴を併せ持つ、その走りをリポートする。
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アメリカ流のカフェレーサー

ギアがニュートラルから1速へ入る時の音は「コク」でも「カツ」でもなく、「ガコンッ」だ。シフトペダルを蹴り飛ばすとまでは言わないが、一般的なバイクと比べると明らかに踏力を要し、その時の反力で車体は一瞬ブルッと震える。そういう武骨さがハーレーダビッドソンという乗り物の味であり、このアイアン1200も例外ではない。ラインナップの中では軽量コンパクトな部類ながら、“アメ車”らしいおおらかさとタフさが存分に詰まったモデルでもある。

現在、ハーレーダビッドソンは「ストリート」「スポーツスター」「ソフテイル」「ツーリング」「トライク」「CVO」という6つのシリーズを展開している。アイアン1200は日本で最も人気の高いスポーツスターに属し、2018年にデビュー。70年代に採用され、通称“レインボーパターン”と呼ばれたクラシカルなグラフィックが外観上の大きな特徴となる。

ハーレーダビッドソン流に、あるいはアメリカ流に仕立てられたカフェレーサーがこのモデルのコンセプトだ。車体全体はローダウン&ブラックアウトされ、後端を盛り上げたシングルシート、メーターとヘッドライトを覆うビキニカウル、フロントフォークをガードするブーツを装備。60年以上の歴史を持つスポーツスターシリーズへの原点回帰が図られている。

「スポーツスター」ファミリーの中でも、きらびやかなメッキの装飾を排した、スゴ味の効いたスタイリングが特徴の「アイアン」。今回試乗した「アイアン1200」に加え、小排気量の「アイアン883」もラインナップされている。
「スポーツスター」ファミリーの中でも、きらびやかなメッキの装飾を排した、スゴ味の効いたスタイリングが特徴の「アイアン」。今回試乗した「アイアン1200」に加え、小排気量の「アイアン883」もラインナップされている。拡大
試乗車のカラーリング「トゥイステッドチェリー」ではやや分かりづらいが、ガソリンタンクには往年のレインボーパターンをほうふつとさせるペイントが施されている。
試乗車のカラーリング「トゥイステッドチェリー」ではやや分かりづらいが、ガソリンタンクには往年のレインボーパターンをほうふつとさせるペイントが施されている。拡大
ブラックで統一されたエンジンやエアクリーナーカバー、マフラーなども「アイアン1200」の特徴だ。
ブラックで統一されたエンジンやエアクリーナーカバー、マフラーなども「アイアン1200」の特徴だ。拡大

ドライバーを揺さぶるVツインの鼓動

カフェレーサーと聞けば、低い位置にセットされたクリップオンハンドルが定番ながら、そんなヨーロピアンスタイルとは異なる真逆のアプローチが目を引く。むしろハンドルを高くし、手をかけると猿がぶら下がっているように見えるミニエイプハンドルバーと呼ばれるアイアン1200だけの専用パーツを装備。カフェレーサーにチョッパーのテイストを組み合わせた独自のシルエットがユニークだ。

シート高は735mmを公称する。ハーレーダビッドソンには700mmを下回るモデルが多数あることを踏まえると特別低くはないものの、平均的な成人男性の体格なら両足のカカトは余裕で接地。前傾姿勢とも無縁のため、緊張感なく走りだすことができるに違いない。

スチールのセミダブルクレードルフレームには、1202ccの空冷Vツインエンジンを搭載する。96Nmの最大トルクを3500rpmの低回転で発生させるため、スタートダッシュ時からパンチの効いた加速とトラクションをいかんなく披露する……のだが、ストップ&ゴーを繰り返す街中ではトルクがあり過ぎるほどだ。わずかなスロットル開度にもエンジンが機敏に反応するため、そういうシチュエーションでは排気量の小さい「アイアン883」(883cc)のほうが適度にダルで走りやすい。

1202ccならではの力強さが楽しめるのは、そのOHVユニットをアイドリングさせている時だ。例えば交差点で停車させている際に伝わってくるブルッ、ブルルッという脈動はまるで生き物さながら。飛びかからんばかりに湧き上がってくるそのエネルギーが自分の右手に委ねられているという事実に心が満たされていくのである。

ヘッドランプに装着されたビキニカウル。ミニエイプハンドルバーは、独特のデザインはもちろん快適性にも配慮した設計となっている。
ヘッドランプに装着されたビキニカウル。ミニエイプハンドルバーは、独特のデザインはもちろん快適性にも配慮した設計となっている。拡大
往年のカフェレーサーをオマージュしたというカフェソロシート。シート高は735mmと低く、足つき性がいい。
往年のカフェレーサーをオマージュしたというカフェソロシート。シート高は735mmと低く、足つき性がいい。拡大
1984年の誕生以来、さまざまな改良を受けながら使用され続けている「エボリューション」エンジン。空冷のV型2気筒OHVで、1202ccの排気量を持つ。
1984年の誕生以来、さまざまな改良を受けながら使用され続けている「エボリューション」エンジン。空冷のV型2気筒OHVで、1202ccの排気量を持つ。拡大
低回転域から太いトルクを発生する特性と、アイドリング時の鼓動感が、このエンジンの大きな魅力だ。
低回転域から太いトルクを発生する特性と、アイドリング時の鼓動感が、このエンジンの大きな魅力だ。拡大
フロントに装着される、100/90B19サイズの細身の大径タイヤ。ハーレーダビッドソンとミシュランが共同開発した専用タイヤ「スコーチャー“31”」が装着される。
フロントに装着される、100/90B19サイズの細身の大径タイヤ。ハーレーダビッドソンとミシュランが共同開発した専用タイヤ「スコーチャー“31”」が装着される。拡大
リアサスペンションはクラシカルなデュアルピストン式。専用開発のミシュランタイヤとも相まって、快適な乗り心地を実現している。
リアサスペンションはクラシカルなデュアルピストン式。専用開発のミシュランタイヤとも相まって、快適な乗り心地を実現している。拡大
カラーリングには試乗車の「トゥイステッドチェリー」に加え、「ビリヤードホワイト」「ビビッドブラック」の全3種類が用意される。
カラーリングには試乗車の「トゥイステッドチェリー」に加え、「ビリヤードホワイト」「ビビッドブラック」の全3種類が用意される。拡大

乗り心地がよく、走りも楽しい

そうやって市街地を抜けた先、ワインディングロードや高速道路を走る姿こそアイアン1200の真骨頂だ。街中では比較的せわしなかったギアチェンジから解放され、スロットルのオンオフだけで自在にスピードをコントロール。コーナーでは心地いい鼓動感に、高速道路では余裕の巡航性能に身を任せることができる。

意外なのは乗り心地のよさだ。シートの座面は小ぶりで、リアにドカッと荷重を掛けるポジションゆえ、一見すると路面からの突き上げを受けやすい車体姿勢に思える。ところが専用のミシュランタイヤがショックを一瞬で減衰。フロントには、100/90B19という細身の大径タイヤが装着されていることも手伝って、ギャップに対して高い走破性と安定性を発揮してくれるのである。

ハーレーダビッドソンというブランドに興味を持てないライダーの多くは、そこにスポーツ性を見いだせないことを理由に挙げるが、このモデルにそれは当てはまらない。エンジンは力強く、ハンドリングは軽やかゆえ、一度でも触れれば「これならアリかも」と引き込まれるケースが少なくない。アメリカンらしさとヨーロピアンらしさのはざまにある存在。それがアイアン1200というスポーツバイクである。

(文=伊丹孝裕/写真=三浦孝明/編集=堀田剛資)

ハーレーダビッドソン・アイアン1200
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ハーレーダビッドソン・アイアン1200(MR/5MT)【レビュー】の画像拡大

【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2200×--×--mm
ホイールベース:1515mm
シート高:735mm
重量:256kg
エンジン:1202cc 空冷4ストロークV型2気筒OHV 2バルブ
最高出力:--ps(--kW)/--rpm
最大トルク:96Nm(9.8kgm)/3500rpm
トランスミッション:5段MT
燃費:--km/リッター
価格:136万9200円

伊丹 孝裕

伊丹 孝裕

モーターサイクルジャーナリスト。二輪専門誌の編集長を務めた後、フリーランスとして独立。マン島TTレースや鈴鹿8時間耐久レース、パイクスピークヒルクライムなど、世界各地の名だたるレースやモータスポーツに参戦。その経験を生かしたバイクの批評を得意とする。

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