トヨタ・スープラRZ(FR/8AT)/スープラSZ-R(FR/8AT)/スープラSZ(FR/8AT)
あるべきトヨタの味がする 2019.06.10 試乗記 17年ぶりに復活した新型「トヨタ・スープラ」が、ついに日本の道を走りだす。BMWとの提携をはじめとする新たな試みから生まれた5代目は、どんなクルマに仕上がっているのか? 全3グレードの走りを報告する。こだわりの“1.55”
ベンチマークはポルシェ718ボクスター/ケイマン。その目標のために両社で新しいプラットフォーム(車台)を開発し、BMWはオープンモデルの新型「Z4」をつくった。一方、トヨタは「直列6気筒のFR」をDNAに刻むスポーツカーを17年ぶりに復活させた。それが新型スープラである。
共同開発といっても、車両設計はBMW。3リッター6気筒/2リッター4気筒のパワートレインや足まわりなど、動的部品もBMW製。“フルランナー”と呼ばれたプラットフォーム検討試作車は、「BMW 2シリーズ」をベースにつくられた。引き算すると、トヨタが腕を振るったのは、主に外形デザインと車両のチューニングということになるが、それだけに、この新型スポーツカーの果たしてどこまでがトヨタ・スープラなのかという点が、試乗する前の興味のポイントだった。
「単なる数値より、フィールを大切にした」というのが、スープラの開発スローガンだが、そのなかで、最もこだわったのが1.55という数字である。ホイールベース(2470mm)をトレッド(前1595mm/後1590mm)で割った数値だ。可能な限りホイールベースを短くして、可能な限りトレッドを広くする。このホイールベース/トレッド比によって、運動性能の基本は決まるという。
ケイマン、旧型Z4、旧型スープラ、レクサスLFA、フェアレディZ、トヨタ86などがいずれも1.6台であるのに対して、今回の共同開発プラットフォームは飛び抜けた数値を示す。ポルシェ911はこれまで1.60だったが、出来立てほやほやの新型では1.54まで詰めてきた。「この数値にこだわったわれわれの狙いが間違っていなかったことが証明された」。試乗前の技術説明会で開発責任者の多田哲哉さんはそう言った。
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意外なほどコンフォート
初の公道試乗会でまず最初に乗ったのは、「SZ-R」(590万円)。最高出力258psの4気筒ターボを積む18インチの中位グレードである。撮影と合わせてひとコマ60分の速攻試乗だ。すぐに走りだして、ホテル敷地内のワインディングロードを下る。
「1.55」の話を聞いた直後だったので、期待は高まった。最近で言えば、アルピーヌA110。最初のひと転がしで軽さと敏捷性に「オッ!」と目を見張らせた、ああいう“新しさ”があるかと思ったが、そこまではなかった。トヨタ86の2倍の剛性値を持つというボディーもニュースだが、ファーストタッチの印象は意外にもコンフォート系である。
乗り心地がいい。SZ-R以上には減衰力可変のアダプティブダンパーが備わる。スポーツカーらしい硬さはもちろんあるが、ズデンとしたアンコ型ではない。むしろバネ下の軽さを感じさせるかろやかな乗り味だ。
アップダウンとカーブに恵まれた道を見つけて、ペースを上げると、シャシーの素性のよさがさらに光った。前後重量配分は、BMWのお家芸ともいえる50:50。車重(1450kg)は3リッターモデルより70kg軽い。これだけのロングノーズプロポーションなのに、運転してはたしかにノーズが軽い。お尻の重さもない。そのため、まなじりを吊り上げるような走りをしなくてもファン・トゥ・ドライブなクルマである。
自分がつくったクルマを買うのは、自動車設計者冥利に尽きるといわれる。試乗後、スープラのシャシーチューニングを担当したYさんに話を聞いた。トヨタのテストドライバーのトップガンが購入を決めたのも、このSZ-Rだという。最もバランスがいいそうだ。
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キャラクターにブレはなし
次に乗ったのは「RZ」(690万円)。340psと500Nmを誇る3リッター6気筒ターボ搭載のイメージリーダーである。
0-100km/hは4.3秒。どんな欧州製スーパースポーツと比べても見劣りしない。力があるだけに、動き出した瞬間から“大物感”を漂わせるが、しかし基本的なキャラクターはSZ-Rと大差なく思えた。とくにノーズが重い印象があるわけではない。乗り心地もパワーの犠牲になっていない。
6気筒も4気筒も、いまのBMWに広く使われているエンジンだが、ZF製8段ATを含めて、パワートレインを制御するコンピューターのソフトはトヨタオリジナルである。
BMWのドライブモードにはノーマル、スポーツのほかにコンフォートやECO PROがあるが、スープラはノーマルとスポーツのみ。切り替えも、SPORTボタンを押してオン、もう一度押すとオフ(ノーマル)、と、いたってシンプルだ。ともいえるし、余計なお金をかけなかったともいえる。左ウインカーのレイアウトを変えなかったのも、コストアップを避けたかったからだという。
最後に乗った「SZ」(490万円)は2リッター4気筒ターボのローチューンモデルである。といっても197psある。車重(1410kg)はSZ-Rより40kg、RZより110kg軽い。17インチのライトウェイト・スープラか!? と思わせたが、RZから乗り換えると、さすがにパワーは少々物足りなかった。
じっくり乗ってみたくなる
一般道のみだった今回のショートインプレッションで、いちばん印象的だったのは、新型スープラにほとんどBMWの匂いがしなかったことである。この日、試乗会場への往復に乗っていったのは、たまたま「BMW X2 M35i」だった。FFプラットフォームだが、2リッターエンジンは基本、スープラSZ-Rと同じである。
そのBMWと比べても、スープラはBMW的というよりむしろトヨタ86的だった。86のさらに先にある“トヨタスポーツカー”に成り得ていたように思う。BMWっぽさを求めていた人にはお生憎さまかもしれないが。
でも、なにしろチョイ乗りだったので、断定的なことは言えない。だから、またじっくり乗ってみたい。またじっくり乗ってみたくなるクルマだったことは間違いない。
スポーツカーという、クルマ界のニッチ中のニッチは、それゆえに、いまや1メーカーの単独開発では成立しがたくなっている。先代80スープラが2002年に打ち切りになったとき、その理由は排ガス対策であると説明された。高性能ターボ車はもうムリ、といって市場を去ったスポーツカーが、はるかにクリーンな排気を求めるいま、ライバル関係を超えた協業で復活した。まずはともあれ、おめでとう、である。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=荒川正幸/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
トヨタ・スープラRZ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4380×1865×1290mm
ホイールベース:2470mm
車重:1520kg
駆動方式:FR
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:340ps(250kW)/5000rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1600-4500rpm
タイヤ:(前)255/35ZR19 96Y/(後)275/35ZR19 100Y(ミシュラン・パイロットスーパースポーツ)
燃費:12.2km/リッター(WLTCモード)
価格:690万円/テスト車=702万7030円
オプション装備:シート表皮 本革<ブラック>(8万1000円) ※以下、販売店オプション カメラ一体型ドライブレコーダー(2万1125円)/ETC 2.0ユニット(2万4905円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:2202km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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トヨタ・スープラSZ-R
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4380×1865×1295mm
ホイールベース:2470mm
車重:1450kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:258ps(190kW)/5000rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1550-4400rpm
タイヤ:(前)255/40ZR18 95Y/(後)275/40ZR18 99Y(ミシュラン・パイロットスーパースポーツ)
燃費:12.7km/リッター(WLTCモード)
価格:590万円/テスト車=594万6030円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション カメラ一体型ドライブレコーダー(2万1125円)/ETC 2.0ユニット(2万4905円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:1801km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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トヨタ・スープラSZ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4380×1865×1295mm
ホイールベース:2470mm
車重:1520kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:197ps(145kW)/4500rpm
最大トルク:320Nm(32.7kgm)/1450-4200rpm
タイヤ:(前)225/50R17 94W/(後)255/45R17 98W(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5 SSR)※ランフラットタイヤ
燃費:13.1km/リッター(WLTCモード)
価格:490万円/テスト車=497万8430円
オプション装備:ボディーカラー<ライトニングイエロー>(3万2400円) ※以下、販売店オプション カメラ一体型ドライブレコーダー(2万1125円)/ETC 2.0ユニット(2万4905円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:1378km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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