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ダイハツ・ロッキーG(4WD/CVT)

ホンモノの“生活四駆” 2020.01.27 試乗記 渡辺 敏史 2019年11月の誕生以来、好調なセールスを記録するコンパクトSUV「ダイハツ・ロッキー」。人気の秘訣(ひけつ)を探るべく、AセグメントではSUVでも珍しいフルタイム4WD車に試乗。“市場のスキマ”に投入されたニューモデルは、ダイハツらしい、生活に寄りそう良作だった。

市場の空白にきれいに収まる車格と価格

近ごろクルマ業界のスズメさんたちの間では、ダイハツ・ロッキーと「トヨタ・ライズ」の売れっぷりが話題になっている。

2019年12月の数字を調べれば、両方合わせての販売台数は1万2631台で登録車では堂々の1位。軽自動車を引き合いに出しても1位の「ホンダN−BOX」にはかなわずとも、2位の「スズキ・スペーシア」には勝るほどだ。実質的な先代ともいえる「ビーゴ/ラッシュ」の代替というだけではおよそ到達できないだろう数字に、人々はこのクルマの何にそれほど惹かれているのかという疑問も浮かんでくる。

ロッキーは基本的に、先進安全装備やトリムラインなどの差別化で4つのグレードが立てられている。パワートレインは1リッター3気筒ターボ、トランスミッションはCVTのみで、すべてのグレードで4WDの選択が可能。走行性能面での違いは上位2グレードが17インチ、それ以外は16インチというタイヤサイズの差くらいなものだろう。

今回の取材車のグレードは上から2番目の「G」で、全車標準装備の予防安全装置「スマートアシスト」に加えて、全車速追従ACCやレーンキープアシストなどの機能も標準化されている。多くの人に今日的な満足感を提供できるパッケージで、価格は4WDで222万4200円。もっとも、ベーシックな「L」でもLEDヘッドランプやパワードアロック、電動格納ドアミラーなどの快適装備は整っており、価格は4WDで194万4800円、2WDであれば170万5000円だ。「スズキ・ジムニーシエラ」の上位モデルのATが205万7000円、「ホンダ・ヴェゼル」のベースグレードとなる「G」の4WDが233万3426円といえば、ロッキーの立ち位置が伝わるだろうか。価格や車格的には今まで空白化していたゾーンにスポッとハマっている。これも好調の理由のひとつだろう。

「ロッキー」は全長4mを切るAセグメントの小型SUV。車格的には「ビーゴ」の後継にあたるが、より“普段使い”に適したモデルに仕上がっている。
「ロッキー」は全長4mを切るAセグメントの小型SUV。車格的には「ビーゴ」の後継にあたるが、より“普段使い”に適したモデルに仕上がっている。拡大
各部に赤やシルバーのアクセントが施された内装の意匠は「プレミアム」「G」「X」の3グレードで共通。ドアアームレストやステアリングホイールの表皮、収納の充実度などで差異化されている。
各部に赤やシルバーのアクセントが施された内装の意匠は「プレミアム」「G」「X」の3グレードで共通。ドアアームレストやステアリングホイールの表皮、収納の充実度などで差異化されている。拡大
「G」グレードには全車速対応型のアダプティブクルーズコントロールや、レーンキープアシスト、アダプティブドライビングビームなどが標準装備される。
「G」グレードには全車速対応型のアダプティブクルーズコントロールや、レーンキープアシスト、アダプティブドライビングビームなどが標準装備される。拡大
メーカーオプションのスマホ連携ディスプレイオーディオ。ディーラーオプションでメモリーナビも用意されている。
メーカーオプションのスマホ連携ディスプレイオーディオ。ディーラーオプションでメモリーナビも用意されている。拡大
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パッケージングにみるダイハツの底力

全長3995mm、全幅1695mmは「ホンダ・フィット」あたりの国産Bセグメントと同じ数値。日本の路上では本当に扱いやすいサイズだ。加えて全高は1620mmと、乗り降りにも優しく視点もほどほどに高い。せっかくのスクエアデザインゆえ、前方左右端の見切りがもう少し明快ならとも思うが、そのぶん角は取れているから小回りはよく利いてくれる。そしてベルトラインも水平基調で、側面や後方の視界にも変な癖がない。「トヨタRAV4」のミニチュア版とも称されるが、余計なことをやっていないからそうなってしまうという見方もできるだろう。美しいとはいわないが、便利なデザインではある。

そんなロッキーで驚かされるのは後席の広さだ。181cmの筆者がゆったりとドライビングポジションをとっても、後席に座ってみると足元は余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)。座面長を削ることなく、前方が少しでも見渡せるギリギリの着座高も確保されていた。無造作に席を置いたのではなく、その室内高をきちんと後席居住性にも生かそうと位置決めに試行錯誤したことが伝わってくる。

……と、この状況で後部荷室もそれなりの広さが確保されているところもすごい。デッキボード下のストレージを含めなくとも369リッターの容量を持つスペースは、大きめのスーツケースやクーラーボックスも余裕で収められそうだ。登録車版初出しなDNGAプラットフォームの力量もあるのだろうが、それ以前に、このクラスのクルマのパッケージングをやらせたら、日本の軽自動車屋さんの右に出る者はいないということを実感する。

ボディーサイズは全長×全幅×全高=3995×1695×1620mmと非常にコンパクト。最小回転半径もFFで4.9m、4WDで5.0mに抑えられている。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=3995×1695×1620mmと非常にコンパクト。最小回転半径もFFで4.9m、4WDで5.0mに抑えられている。拡大
「G」に装備される、赤いパイピング付きのファブリックシート。運転席、助手席ともにシートヒーターが標準装備となる。
「G」に装備される、赤いパイピング付きのファブリックシート。運転席、助手席ともにシートヒーターが標準装備となる。拡大
後席の仕様は全車共通で、6:4の分割可倒機構と、2段階のリクライニング調整機構が備わる。
後席の仕様は全車共通で、6:4の分割可倒機構と、2段階のリクライニング調整機構が備わる。拡大
ゆとりのある荷室空間も「ロッキー」の魅力。369リッターの床上スペースに加え、4WD車でも38リッターの床下収納が備わっている。
ゆとりのある荷室空間も「ロッキー」の魅力。369リッターの床上スペースに加え、4WD車でも38リッターの床下収納が備わっている。拡大

燃費はもう少し伸びてほしい

搭載されるエンジンは1KR−VET型1リッター3気筒ターボ。最高出力98PS、最大トルク140N・mのスペックは先述のトールやルーミーのターボ車と同じで、DNGAエンジニアリングの一環となるD-CVTと組み合わせられる。このトランスミッションは中~高速域側で従来のベルトと共にギアを適時併用することで、回転の上下感を抑え、効率を高める効果がある。高出力よりも高効率を狙ったダウンサイジングコンセプトのエンジンとの相性はさぞやいいだろう。

……と思いきや、これが燃費計とにらめっこしながらさまざまな乗り方を試してみても、イメージ通りに燃費が伸びてくれない。よほど自分の運転が悪いのかと思いきや、ネット上のユーザーデータをみても筆者の実感値と大差ないようだ。燃費計の推移をみるに、過給領域を避けながら走れば相応の数字が期待できるが、現実的には回転数と速度をコントロールすることが難しく、現実の路上で首尾よく流れに乗ろうとすれば、結果的に過給域を多用することになる。出力特性的にはターボとCVTの相性は良いはずだが、周囲と速度を同調させながらそれをうまく使いこなすには、走り込んでコツをつかむ必要がありそうだ。

エンジンのパワーそのものにはまったく不足を感じない。これまでのKR系ユニットは、CVTが低回転域をつかむとプルプルと振動が多発したが、そのクセもかなり収まった。意外や高回転域でのパワードロップ感もなだらかで、低回転域から素直な特性のエンジンに仕上がっている。

乗り心地については、全般にちょっとドライなフィードバックが多いことが気になった。人工的な目地段差や舗装パッチを踏んだ際の突き上げも少し痛いし、連続する凹凸でのアシの追従性も凡庸だ。ただし剛性感は今までのダイハツのプラットフォームとは比較にならないほどしっかりしているから、足まわりのキャリブレーション次第で相当に生きるかもしれない。もしくはリアバネ下の軽いFF車では、もう少し穏やかな動きになるのかもしれない。

燃費性能はJC08モードで21.2km/リッター、WLTCモードで17.4km/リッターと発表されている。
燃費性能はJC08モードで21.2km/リッター、WLTCモードで17.4km/リッターと発表されている。拡大
エンジンは「トール」のターボ車と同じ1リッター直3ターボだが、インタークーラーの位置をエンジンの上から前方に移し、吸気温度を下げるなどしてトルクレスポンスの向上が図られている。
エンジンは「トール」のターボ車と同じ1リッター直3ターボだが、インタークーラーの位置をエンジンの上から前方に移し、吸気温度を下げるなどしてトルクレスポンスの向上が図られている。拡大
トランスミッションはベルト式CVTと遊星ギアを組み合わせた「デュアルモードCVT(D-CVT)」。ワイドな変速比幅と高い伝達効率を実現している。
トランスミッションはベルト式CVTと遊星ギアを組み合わせた「デュアルモードCVT(D-CVT)」。ワイドな変速比幅と高い伝達効率を実現している。拡大
リアサスペンションはトーションビーム式。フロアの低床化にも配慮して、リアデファレンシャルは車軸ではなく車体に取り付ける方式をとっている。
リアサスペンションはトーションビーム式。フロアの低床化にも配慮して、リアデファレンシャルは車軸ではなく車体に取り付ける方式をとっている。拡大
「G」と「プレミアム」に装備される切削加工の17インチアルミホイール。タイヤサイズは195/60R17で、試乗車にはダンロップの低燃費タイヤが装着されていた。
「G」と「プレミアム」に装備される切削加工の17インチアルミホイール。タイヤサイズは195/60R17で、試乗車にはダンロップの低燃費タイヤが装着されていた。拡大

売れない理由が見当たらない

このクラスのクルマとしてはおごられた電子制御フルタイム4WDは、その本領を発揮するような悪路に今回は遭遇できなかった。しかしメーター内のインジケーターをみるに、発進や旋回においても想像以上に頻繁に後輪の駆動が介入しているフシがある。乗っていてモロに伝わるほどの蹴り出しではないが、スタビリティーについては想像以上に幅広い範囲で仕事をしているようだ。FFとの価格差は約25万円だが、この車格にして4WDという点こそロッキーのユニークなセリングポイントであることも間違いない。

ともあれ、生活の道具として秀逸なパッケージであるとともに、遊びにも十分応える懐をもったクルマだ。シニア層の夫婦や小さな子供のいる家族の、週末重視のファミリーカーとしても抜群のフィット感だろう。知れば知るほど売れない理由は重箱の隅にすら見つからない。「良品廉価」や「Love Local」といったスローガンを掲げ、ガッチリと地方や地域に足の着いたビジネスを展開する、ダイハツらしい仕上がりだと思う。

ちなみにロッキーと、ダイハツから供給を受けるライズとの販売比率は、2019年12月でざっくり1:3といったところ。全国5000ディーラーの底力で爆売りするトヨタに対すれば、800店に満たない(特約店除く)ダイハツが健闘しているのがちょっとうれしい。

(文=渡辺敏史/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)

駆動システムには多板クラッチ式の電子制御カップリングを用いたフルタイム4WDを採用。各ECUからの情報をもとに、きめ細やかな前後軸間のトルク配分を実現する。
駆動システムには多板クラッチ式の電子制御カップリングを用いたフルタイム4WDを採用。各ECUからの情報をもとに、きめ細やかな前後軸間のトルク配分を実現する。拡大
駆動システムの作動状態はメーター内のディスプレイで確認できる。基本はFFだが、舗装路でも頻繁に後輪に駆動力を伝達しているのが分かる。
駆動システムの作動状態はメーター内のディスプレイで確認できる。基本はFFだが、舗装路でも頻繁に後輪に駆動力を伝達しているのが分かる。拡大
コンパクトかつ手ごろな価格でありながら、本格的な4WDもラインナップする「ロッキー」は、幅広いユーザーの生活に寄りそう、ダイハツらしいSUVに仕上がっていた。
コンパクトかつ手ごろな価格でありながら、本格的な4WDもラインナップする「ロッキー」は、幅広いユーザーの生活に寄りそう、ダイハツらしいSUVに仕上がっていた。拡大

テスト車のデータ

ダイハツ・ロッキーG

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3995×1695×1620mm
ホイールベース:2525mm
車重:1050kg
駆動方式:4WD
エンジン:1リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:98PS(72kW)/6000rpm
最大トルク:140N・m(14.3kgf・m)/2400-4000rpm
タイヤ:(前)195/60R17 90H/(後)195/60R17 90H(ダンロップ・エナセーブEC300+)
燃費:21.2km/リッター(JC08モード)/17.4km/リッター(WLTCモード)
価格:222万4200円/テスト車=248万7051円
オプション装備:ブラインドスポットモニター(6万6000円)/パノラマモニターパック(11万5550円) ※以下、販売店オプション カーペットマット<高機能タイプ・グレー>(2万8226円)/ドライブレコーダー<スタンドアローンモデル>(3万4760円)/ETC車載器<エントリーモデル>(1万8315円)

テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:1697km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:287.6km
使用燃料:22.0リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:13.1km/リッター(満タン法)/12.8km/リッター(車載燃費計計測値)

ダイハツ・ロッキーG
ダイハツ・ロッキーG拡大
渡辺 敏史

渡辺 敏史

自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。

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