ライドシェアドライバーのアイデンティティー

『デンジャラス・ドライバー 暴走開始』も、日本用に作り込まれたタイトルである。原題は『END TRIP』。目的地に到着したことを示す言葉だ。主人公はURYDEのドライバーである。ウーバー的なライドシェアサービスなのだろう。乗っているのが「キャデラックXT5」というSUVなのが今っぽい。

冒頭のシーンは、以前この欄で紹介した2015年の映画『オン・ザ・ハイウェイその夜、86分』を思わせる。車内映像だけで夜の道を描き出す。後席の客と運転手の会話の合間に、ドライバーのプライベートを見せていく手法だ。オシャレ感があると思っていると、次第に様相が変わってくる。

深夜に乗せたジャドという男は、いかにも怪しげだ。しかし、客からの評価を高めるため、ドライバーは常に笑顔でなければならない。お互いにガールフレンドのことを話しているうちに、個人情報がやり取りされる。彼らは、相手に合わせて自分を変えることがある、という点で意見が一致した。

後半はテーマがアイデンティティーをめぐる話に変化する。家で待つ女性のもとに、見知らぬ男がパートナーだと言って帰ってきたらどうするのか。容貌が似ていないからといっても、本人だと主張する男にそうではないと指摘するのは困難である。一体、「俺は俺だ」と言う場合に根拠などあるのだろうか……。

という哲学的な話にはならない。これはB級スリラー映画なのだ。このテーマをもっと深めたいのなら、上質な文学作品がある。高山羽根子の『如何様』を読むことをオススメしたい。

『デンジャラス・ドライバー 暴走開始』DVD
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「キャデラックXT5」
「SRX」の後継車となるキャデラックのミドルサイズSUV。2017年にデビューし、同年に日本に導入された。キャデラックの最量販モデルで、ブランドを支える存在となっている。
「キャデラックXT5」
	「SRX」の後継車となるキャデラックのミドルサイズSUV。2017年にデビューし、同年に日本に導入された。キャデラックの最量販モデルで、ブランドを支える存在となっている。拡大
鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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