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【スペック】全長×全幅×全高=4246×1782×1423mm/ホイールベース=2578mm/車重=1503kg/駆動方式=FF/1.4リッター直4DOHC16バルブターボ+スーパーチャージャー(160ps/5800rpm、24.5kgm/1500-4500rpm)(欧州仕様車)

フォルクスワーゲン・ゴルフカブリオレ(FF/7AT)【海外試乗記】

開けてビックリ 2011.05.18 試乗記 生方 聡 フォルクスワーゲン・ゴルフカブリオレ(FF/7AT)

幌式のルーフをまとって“復活”した、「フォルクスワーゲン・ゴルフカブリオレ」。新型の走りを南仏ニースからリポートする。

想定外の復活劇

「フォルクスワーゲン・ゴルフ」の人気モデルといえば、ホットハッチの「GTI」にトドメを刺すが、オープンカー好きの私としては、“隙あればゴルフカブリオレ”とばかりにチャンスの到来を狙っている。家族持ちにとってはなかなかハードルの高い願いなのだが、それ以前に「ゴルフカブリオレ」が新車で買えないというところに問題があった。

ゴルフカブリオレは、空冷の「ビートルカブリオレ」の後継モデルとして「ゴルフI」をベースに1979年に登場。その後1993年に「ゴルフIII」をベースとした第2世代が、そして1998年には2代目を化粧直しした“ゴルフIVルック”の第3世代が発売されている。とはいっても、3代目はビッグマイナーのようなものだから、ファンとしては奇数世代の「ゴルフV」のモデルサイクルで、新型「ゴルフカブリオレ」が登場すると信じていた。

ところが、折しもクーペカブリオレが流行し、フォルクスワーゲンとしてもリトラクタブルハードトップタイプのオープンカーが欲しいということから、2006年に「イオス」を投入。この時点でゴルフカブリオレの歴史は幕を閉じてしまった。しかし、蓋を開けてみると、ひとクラス上のイオスではなく、より身近でカジュアルなゴルフカブリオレへのラブコールはやむことなく、フォルクスワーゲンとしてもこの声を無視することができなかった。そこで「ゴルフVI」をベースに生まれたのがこの新型ゴルフカブリオレというわけだ。

試乗会場では、最新の「ゴルフカブリオレ」とともに、その初代モデル(写真手前)も並べられた。
試乗会場では、最新の「ゴルフカブリオレ」とともに、その初代モデル(写真手前)も並べられた。 拡大
フォルクスワーゲンらしいデザインでまとめられた、新型「ゴルフカブリオレ」の運転席まわり。
フォルクスワーゲンらしいデザインでまとめられた、新型「ゴルフカブリオレ」の運転席まわり。 拡大

フォルクスワーゲン・ゴルフカブリオレ(FF/7AT)【海外試乗記】の画像 拡大
フォルクスワーゲン ゴルフ カブリオレ の中古車

消えたロールバー

9年ぶりに復活した4代目ゴルフカブリオレは、これまでどおりソフトトップが内と外の世界を隔てる伝統のスタイルを採用した。にもかかわらず、歴代のゴルフカブリオレとは明らかに異なる雰囲気に包まれている。それもそのはず、ゴルフカブリオレのシンボルともいえた固定式のロールバーが、ついにこの新型で廃止されたからだ。

固定式ロールバーに代わり乗員の安全を確保するのは「ロールオーバープロテクションシステム」。万一の際には、後席の背後に設置されたロールバーが0.01秒未満の素早さで展開し、強化されたAピラーとともに乗員を守ってくれるのだ。フォルクスワーゲンはすでに「ニュービートルカブリオレ」で搭載実績を持つが、新型ゴルフカブリオレに採用するにあたってはユニットの小型化を実現。その結果、リアシートを分割して倒すことができるようになった。

そして、新型ゴルフカブリオレのデザインをさらにスポーティに演出するのが、寝かされたAピラーだ。ソフトトップをコンパクトにするにはAピラーをもっと後ろまで延ばしたいところだが、そうなるとフロントウィンドウがドライバーに迫り、開放感がスポイルされてしまう。このAピラーの形状は、ソフトトップのサイズと開放感とのせめぎあいの末に生まれた形状だった。 全高は1423mmと低く、ゴルフのハッチバックよりもむしろ「シロッコ」に近いバランスを手に入れている。


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定員は4名。後席ヘッドレストの後ろに、横転時の安全を確保する「ロールオーバープロテクションシステム」のロールバーが収納される。
定員は4名。後席ヘッドレストの後ろに、横転時の安全を確保する「ロールオーバープロテクションシステム」のロールバーが収納される。 拡大
後席を倒した様子。長尺物の収納や、車内からの荷室の出し入れが可能となる。
後席を倒した様子。長尺物の収納や、車内からの荷室の出し入れが可能となる。 拡大

使えるソフトトップ

新型ゴルフカブリオレには電動油圧式のソフトトップが標準で装着されている。自慢は開閉の速さで、開けるのに9秒、閉じるのも11秒と、信号待ちでも気軽に操作できる。もちろん、ご多分にもれず、30km/h以下なら走行中でも開閉が可能である。

一方、クーペカブリオレに対するアドバンテージは、ソフトトップの開閉状況にかかわらず、同じサイズのラゲッジスペースが確保されるところだ。容量250リッターの荷室は、開口部がさほど広くなく、大物を積むには一苦労だが、見た目以上に積み込めるのが、いざというとき心強い。

能書きはこれくらいにして、さっそく自慢のソフトトップを開けるとしよう。開閉はいたって簡単、センターコンソールのスイッチを操作するだけの手軽さだ。いまやソフトトップのロックを外す必要はないし、開けるとソフトトップの一番前の部分が蓋の役目を果たすので、いちいちソフトカバーを脱着する手間もない。

スイッチに指をかけること9秒、コートダジュールの青い空からまぶしい陽光がキャビンに降り注ぐ。まさにオープンカー日和だ。ウインドシールドの上端がドライバーから適度に離れているので圧迫感はなく、開放的な雰囲気が存分に楽しめる。

サイドウィンドウを上げて走り出すと、60km/hくらいならキャビンは実に平和に保たれ、風はドライバーの髪を軽く揺らす程度だ。さらにスピードを上げてもキャビンへの風の巻き込みはよく抑えられている。さすがに100km/hを超えるような場面では、リアシートに設置するウインドディフレクターのお世話になりたくなる。その効果は絶大で、これさえあれば高速でも、冬の寒い時期でも、快適なオープンエアモータリングが楽しめそうだ。一方、ソフトトップを閉じたときの静粛性は高く、ソフトトップのマイナス面はほぼ解消されたと言えるだろう。

ソフトトップは電動式。低速ならば走行中でも操作ができる。(写真をクリックすると、ルーフ開閉の様子が見られます)
ソフトトップは電動式。低速ならば走行中でも操作ができる。(写真をクリックすると、ルーフ開閉の様子が見られます) 拡大

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荷室容量は、ルーフの状態にかかわらず250リッターが確保される。
荷室容量は、ルーフの状態にかかわらず250リッターが確保される。 拡大
後方からの風の巻き込みは、ごらんのウインドディフレクターでシャットアウト。後席に乗員がいないときに限られるが……。
後方からの風の巻き込みは、ごらんのウインドディフレクターでシャットアウト。後席に乗員がいないときに限られるが……。 拡大

重量増をものともせず

ゴルフカブリオレは、ボディやサイドシル、Aピラーなどを相当補強したと見えて、ボディ剛性に不満はない。そのぶん、1.4TSI“ツインチャージャー”エンジンと7段DSGを積んだ試乗車は、車両重量が1503kgにも達している。同じパワートレインを積む日本仕様のハッチバック(ゴルフTSIハイライン)が1340kgだから、かなりの重量増だ。しかし、最高出力160ps、最大トルク24.5kgを発生するおなじみのエンジンは、発進から力不足を感じさせないどころか、どんな回転からも余裕の加速を見せるほどの実力の持ち主である。

225/45R17タイヤを従えたサスペンションは、多少硬めの印象とはいえ、乗り心地に粗さはなく、十分に快適。オートルートをそれなりのスピードで飛ばしても、ボディの動きはフラットに保たれ、ゴルフの名にふさわしい直進安定性と、最近のゴルフでは常識の軽快なハンドリングを確実に受け継いでいる。

快適さに加えて、従来のゴルフカブリオレに足りなかったスポーティさも手に入れた新型ゴルフカブリオレ。私は試乗を始めてすぐに気に入ってしまった。そうなると、気になるのは日本での展開ということなるが……現時点では導入は今秋(2011年秋)の予定。パワートレインは今回試乗した1.4TSIとなる見込みだ。本革シートやLEDランプ付きバイキセノンヘッドライトなどが装着される“パフォーマンスパック”がおごられるぜいたくな内容で、価格は400万円を切りたいというのが、フォルクスワーゲン・グループ・ジャパンのもくろみらしい。

欲をいえば、1.4リッター直噴ターボ(シングルチャージャー)にファブリックシートという簡素な仕様で300万円台前半を目指してほしいものだが、いずれにしても日本上陸が楽しみなモデルであることに変わりはない。いちファンとして、ゴルフカブリオレの復活を心から喜びたい。

(文=生方聡/写真=フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン)

すっかりおなじみとなった、フォルクスワーゲンの1.4リッター“ツインチャージャー”エンジン。スーパーチャージャーとターボの併用で、優れた燃焼効率をうたう。
すっかりおなじみとなった、フォルクスワーゲンの1.4リッター“ツインチャージャー”エンジン。スーパーチャージャーとターボの併用で、優れた燃焼効率をうたう。 拡大

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生方 聡

生方 聡

モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースレポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。

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