フォルクスワーゲン・ゴルフカブリオレ(FF/7AT)【海外試乗記】
開けてビックリ 2011.05.18 試乗記 フォルクスワーゲン・ゴルフカブリオレ(FF/7AT)幌式のルーフをまとって“復活”した、「フォルクスワーゲン・ゴルフカブリオレ」。新型の走りを南仏ニースからリポートする。
想定外の復活劇
「フォルクスワーゲン・ゴルフ」の人気モデルといえば、ホットハッチの「GTI」にトドメを刺すが、オープンカー好きの私としては、“隙あればゴルフカブリオレ”とばかりにチャンスの到来を狙っている。家族持ちにとってはなかなかハードルの高い願いなのだが、それ以前に「ゴルフカブリオレ」が新車で買えないというところに問題があった。
ゴルフカブリオレは、空冷の「ビートルカブリオレ」の後継モデルとして「ゴルフI」をベースに1979年に登場。その後1993年に「ゴルフIII」をベースとした第2世代が、そして1998年には2代目を化粧直しした“ゴルフIVルック”の第3世代が発売されている。とはいっても、3代目はビッグマイナーのようなものだから、ファンとしては奇数世代の「ゴルフV」のモデルサイクルで、新型「ゴルフカブリオレ」が登場すると信じていた。
ところが、折しもクーペカブリオレが流行し、フォルクスワーゲンとしてもリトラクタブルハードトップタイプのオープンカーが欲しいということから、2006年に「イオス」を投入。この時点でゴルフカブリオレの歴史は幕を閉じてしまった。しかし、蓋を開けてみると、ひとクラス上のイオスではなく、より身近でカジュアルなゴルフカブリオレへのラブコールはやむことなく、フォルクスワーゲンとしてもこの声を無視することができなかった。そこで「ゴルフVI」をベースに生まれたのがこの新型ゴルフカブリオレというわけだ。
消えたロールバー
9年ぶりに復活した4代目ゴルフカブリオレは、これまでどおりソフトトップが内と外の世界を隔てる伝統のスタイルを採用した。にもかかわらず、歴代のゴルフカブリオレとは明らかに異なる雰囲気に包まれている。それもそのはず、ゴルフカブリオレのシンボルともいえた固定式のロールバーが、ついにこの新型で廃止されたからだ。
固定式ロールバーに代わり乗員の安全を確保するのは「ロールオーバープロテクションシステム」。万一の際には、後席の背後に設置されたロールバーが0.01秒未満の素早さで展開し、強化されたAピラーとともに乗員を守ってくれるのだ。フォルクスワーゲンはすでに「ニュービートルカブリオレ」で搭載実績を持つが、新型ゴルフカブリオレに採用するにあたってはユニットの小型化を実現。その結果、リアシートを分割して倒すことができるようになった。
そして、新型ゴルフカブリオレのデザインをさらにスポーティに演出するのが、寝かされたAピラーだ。ソフトトップをコンパクトにするにはAピラーをもっと後ろまで延ばしたいところだが、そうなるとフロントウィンドウがドライバーに迫り、開放感がスポイルされてしまう。このAピラーの形状は、ソフトトップのサイズと開放感とのせめぎあいの末に生まれた形状だった。 全高は1423mmと低く、ゴルフのハッチバックよりもむしろ「シロッコ」に近いバランスを手に入れている。
使えるソフトトップ
新型ゴルフカブリオレには電動油圧式のソフトトップが標準で装着されている。自慢は開閉の速さで、開けるのに9秒、閉じるのも11秒と、信号待ちでも気軽に操作できる。もちろん、ご多分にもれず、30km/h以下なら走行中でも開閉が可能である。
一方、クーペカブリオレに対するアドバンテージは、ソフトトップの開閉状況にかかわらず、同じサイズのラゲッジスペースが確保されるところだ。容量250リッターの荷室は、開口部がさほど広くなく、大物を積むには一苦労だが、見た目以上に積み込めるのが、いざというとき心強い。
能書きはこれくらいにして、さっそく自慢のソフトトップを開けるとしよう。開閉はいたって簡単、センターコンソールのスイッチを操作するだけの手軽さだ。いまやソフトトップのロックを外す必要はないし、開けるとソフトトップの一番前の部分が蓋の役目を果たすので、いちいちソフトカバーを脱着する手間もない。
スイッチに指をかけること9秒、コートダジュールの青い空からまぶしい陽光がキャビンに降り注ぐ。まさにオープンカー日和だ。ウインドシールドの上端がドライバーから適度に離れているので圧迫感はなく、開放的な雰囲気が存分に楽しめる。
サイドウィンドウを上げて走り出すと、60km/hくらいならキャビンは実に平和に保たれ、風はドライバーの髪を軽く揺らす程度だ。さらにスピードを上げてもキャビンへの風の巻き込みはよく抑えられている。さすがに100km/hを超えるような場面では、リアシートに設置するウインドディフレクターのお世話になりたくなる。その効果は絶大で、これさえあれば高速でも、冬の寒い時期でも、快適なオープンエアモータリングが楽しめそうだ。一方、ソフトトップを閉じたときの静粛性は高く、ソフトトップのマイナス面はほぼ解消されたと言えるだろう。
重量増をものともせず
ゴルフカブリオレは、ボディやサイドシル、Aピラーなどを相当補強したと見えて、ボディ剛性に不満はない。そのぶん、1.4TSI“ツインチャージャー”エンジンと7段DSGを積んだ試乗車は、車両重量が1503kgにも達している。同じパワートレインを積む日本仕様のハッチバック(ゴルフTSIハイライン)が1340kgだから、かなりの重量増だ。しかし、最高出力160ps、最大トルク24.5kgを発生するおなじみのエンジンは、発進から力不足を感じさせないどころか、どんな回転からも余裕の加速を見せるほどの実力の持ち主である。
225/45R17タイヤを従えたサスペンションは、多少硬めの印象とはいえ、乗り心地に粗さはなく、十分に快適。オートルートをそれなりのスピードで飛ばしても、ボディの動きはフラットに保たれ、ゴルフの名にふさわしい直進安定性と、最近のゴルフでは常識の軽快なハンドリングを確実に受け継いでいる。
快適さに加えて、従来のゴルフカブリオレに足りなかったスポーティさも手に入れた新型ゴルフカブリオレ。私は試乗を始めてすぐに気に入ってしまった。そうなると、気になるのは日本での展開ということなるが……現時点では導入は今秋(2011年秋)の予定。パワートレインは今回試乗した1.4TSIとなる見込みだ。本革シートやLEDランプ付きバイキセノンヘッドライトなどが装着される“パフォーマンスパック”がおごられるぜいたくな内容で、価格は400万円を切りたいというのが、フォルクスワーゲン・グループ・ジャパンのもくろみらしい。
欲をいえば、1.4リッター直噴ターボ(シングルチャージャー)にファブリックシートという簡素な仕様で300万円台前半を目指してほしいものだが、いずれにしても日本上陸が楽しみなモデルであることに変わりはない。いちファンとして、ゴルフカブリオレの復活を心から喜びたい。
(文=生方聡/写真=フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
スズキGSX-8T(6MT)【レビュー】 2026.3.25 昨今のネオクラシックブームに乗り、いよいよスズキからも新型車「GSX-8T」が登場。しかし実車に触れてみると、既存のライバルとはちょっと趣の異なるマシンとなっていた。スタイリッシュないでたちとスズキらしい実直さが融合した、独創の一台を報告する。
-
日産セレナe-POWERハイウェイスターV(FF)【試乗記】 2026.3.24 販売台数ではトヨタ勢に差をつけられながらも、日産の屋台骨として奮闘する「セレナ」。現行型の登場から3年、マイナーチェンジで磨きがかかった最新の「e-POWERハイウェイスターV」に試乗すると、人の感性に寄り添う開発陣のこだわりと良心が見えてきた。
-
BMW iX M70 xDrive(4WD)【試乗記】 2026.3.23 BMWが擁するSUVタイプの電気自動車「iX」。そのハイパフォーマンスモデルが「iX M70 xDrive」へと進化を遂げた。かつて、BMWの志向する次世代モビリティーの体現者として登場した一台は、今どのようなクルマとなっているのか? その実力に触れた。
-
BMW i5 eDrive35LエクスクルーシブMスポーツ(RWD)【試乗記】 2026.3.21 BMWの「5シリーズ ロング」は知る人ぞ知る(地味な)モデルだが、実はエンジン車のほかに電気自動車(BEV)版の「i5 eDrive35L」も用意されている。まさに隙間産業的にラインナップを補完する、なんともニッチな大型セダンの仕上がりをリポートする。
-
日産リーフB7 G(FWD)【試乗記】 2026.3.20 民生用電気自動車のパイオニアである「日産リーフ」が3代目へとフルモデルチェンジ。シャシーや電池、モーターなどすべての要素を刷新し、もはやスペック上は何の不安もない水準にまで進化している。360km余りのドライブで実際のところを確かめた。
-
NEW
スズキeビターラZ(4WD)【試乗記】
2026.3.28試乗記スズキが満を持して世に問うた、初の量販電気自動車(BEV)「eビターラ」。エントリーグレードは400万円以下! 500万円以下で4WDも用意されるというお値打ち価格のBEVは、走らせてみるとどうなのか? 東京-愛知を往復して、その実力を確かめた。 -
NEW
東京モーターサイクルショー2026(インディアンモーターサイクル)
2026.3.27画像・写真きらびやかな創業125周年記念モデルに加え、貴重な1948年製「チーフ」の姿も。東京モーターサイクルショーの会場より、現存するアメリカ最古のバイクメーカー/ブランド、インディアンモーターサイクルの展示を写真で紹介する。 -
NEW
東京モーターサイクルショー2026(KTM/ハスクバーナ)
2026.3.27画像・写真MotoGPの技術を取り入れた新型スーパースポーツ「KTM 990RC R」や、電子制御トランスミッションを搭載した新型「KTM 1390スーパーアドベンチャーSエボ」を出展。東京モーターサイクルショーより、KTMとハスクバーナの展示を写真で紹介する。 -
NEW
東京モーターサイクルショー2026(ロイヤルエンフィールド/BSA)
2026.3.27画像・写真今年で創業125周年を迎えたロイヤルエンフィールドと、ブランド再興を経て日本へ導入されるBSA。「東京モーターサイクルショー2026」の会場より、英国にルーツを持つ2つのブランドの展示車両を、写真で紹介する。 -
NEW
東京モーターサイクルショー2026(トライアンフ)
2026.3.27画像・写真ミドルクラスの「スラクストン/トラッカー400」に、800ccクラスの新型ロードスポーツ「トライデント800」など、注目車種がめじろ押し! 「東京モーターサイクルショー2026」より、英国の老舗トライアンフの展示を写真で紹介する。 -
NEW
東京モーターサイクルショー2026(スズキ)
2026.3.27画像・写真話題のネオクラシックモデル「GSX-8T/GSX-8TT」に加え、新型ツアラー「SV-7GX」や、フラッグシップスポーツ「GSX-R1000R」の姿も! 「東京モーターサイクルショー2026」の会場より、スズキの展示車両を写真で紹介する。


























