日産エクストレイルAUTECH iパッケージ(4WD/CVT)/セレナe-POWER AUTECHスポーツスペック(FF)
こだわりがクルマを変える 2021.01.20 試乗記 長年にわたり、日産車のカスタマイズモデルを製作してきたオーテックジャパン。彼らが手がけたモデルの中から、デザインと走りの両方に手が加わった「エクストレイル」と「セレナ」に試乗。標準車とは一線を画す、その出来栄えを報告する。ボディーカラーは“湘南の青”
試乗した「日産エクストレイルAUTECH iパッケージ」のボディーカラーは、購入者の51%が選ぶというAUTECH専用色の「カスピアンブルー」だった。エクストレイルの標準仕様だとブルーを選ぶ人はどんなに多くてもひとケタ%で、10%に遠く及ばないというから、AUTECHにおける青人気はかなりのものだ。
神奈川県茅ヶ崎市、湘南と呼ばれる地域で創業したオーテックジャパンは、自社ブランドのイメージカラーに相模湾の色を想起させる青を採用した。デザイナー陣の青へのこだわりは、同じ青でもモデルによって色のニュアンスが微妙に異なることからも伝わってくる。AUTECHのデザイナーは、春夏秋冬、さまざまな時間帯、あらゆる天候の湘南の海を眺めることで、青という色へのイメージをふくらませるのだという。青といっても1色ではなく、各モデルのキャラクターを表現するのにふさわしい、さまざまな青を生み出しているのだ。
そしてフロントとリアのバンパー下のキラリと光る装飾パーツは、陽光を受けて輝く白い波頭をイメージしたもの。ブラックを基調としながらも、シートやステアリングホイール、それにシフトセレクターのノブなど、あちこちに青い差し色が効果的に使われる車内に乗り込む。
試乗車は2リッターのガソリンエンジンを搭載する四駆モデル。現行エクストレイルのガソリン車には3列シート仕様もラインナップされるけれど、今回試乗したのは2列シートの仕様だった。
足まわりの改良で大人のSUVに
2リッターの直列4気筒ガソリンエンジンを始動してスタート。同条件で比較したわけではないので断定はできないけれど、標準モデルに比べるとロールとピッチングが抑えられている印象を受ける。それは市街地でも感じられるが、特に高速道路では前後左右方向の車体の揺れが抑えられている。
AUTECHというブランドのコンセプトは「プレミアムスポーティー」で、開発陣によれば、それはデザインだけでなく走りでも表現しているという。エクストレイルのAUTECH仕様は、特に以下の3つに留意して開発されている。ひとつは上質でフラットなボディーの動き。ふたつめがコーナリング時のロール(横傾き)の抑制。そして最後が操縦性の向上、具体的にはアンダーステアの低減だ。
試乗しながら、確かにこの3つはクリアしていると感じられた。そしてロールやアンダーステアを減らしながら、乗り心地も悪くなっていない点に感心した。ガチガチに固めるのではなく、しっかりサスペンションを動かしながらフラットライドを実現している。
資料を見ると、チューニングの内容はパワーユニットによって異なっており、2リッターガソリン車の場合、スプリングは標準仕様と共通ながら、専用の19インチタイヤ(タイヤサイズは225/55R19)と、それに合わせるショックアブソーバーを吟味したとのことだ。ショックアブソーバーは、最終的にはザックス製に落ち着いたという。結果的に、適度に引き締まりつつ粗さは感じさせないという、大人のSUVに仕上がっている。
実際、オーナーの来歴を見ても、大型SUVやビッグセダンから乗り換えるダウンサイジング組が多いという。子育てを終えた方が、必要にして十分なサイズの上質なクルマを求めているということだろう。昔は食べ放題や飲み放題がうれしかったけれど、最近はおいしいものを少しずつ、いい日本酒でちびちびとやっている。そんなライフステージにはこんなクルマが似合いそうだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
本格的なチューニングで走りを引き締める
続いて、「日産セレナe-POWER AUTECHスポーツスペック」に乗り換える。ステアリングホイールを握っていると、標準仕様のセレナよりもサイズがひとまわりほどコンパクトになったかのような錯覚を受ける。アクセルやハンドル操作に対する反応が素早く、巡航中やコーナリング時の姿勢がフラットであることから、クルマ全体の“あそび”や“のりしろ”が小さくなり、タイトなドライブフィールになっていることがその理由だ。
実際、このクルマに施されたチューンは本格的だ。ご存じのようにe-POWERはエンジンが発電に専念して、そこで生まれた電気でモーターを駆動する電動パワートレイン。従来のマイルドハイブリッド仕様よりも重心が低くなるので、そこに合わせて操縦性と乗り心地を最適化したという。
具体的には、フロアに補強材を追加することで車体の剛性を強化。これによって車体のねじれが減り、操舵時の応答遅れを減らすことができた。コイルスプリングのバネ定数やショックアブソーバーの減衰力も徹底的に見直し、タイヤにグリップと乗り心地の両立で定評のある「ミシュラン・パイロットスポーツ4」を採用することとあわせて、走って楽しいミニバンを狙った。
ミニバンというよりグランドツアラー
特に低速域では突き上げが気になる部分があったものの、速度が上がるとともにフラットな姿勢を保つという美点が強調され、それも気にならなくなる。特筆すべきは手のひらに伝わるステアリングフィールが良好なことで、タイヤと路面との関係がまさに手にとるようにわかるから、自信を持ってハンドルを切ることができる。
e-POWERには、専用にチューニングしたコンピューターが採用される。「S(Smart)」「ECO」「NORMAL」の3つが用意されるドライブモードで「S」を選ぶと、レスポンスが一段と切れ味鋭いものとなり、胸のすくような加速が味わえる。エンジンとは種類が違う、モーター駆動ならではの新しいファン・トゥ・ドライブが存在する。
前述した日産エクストレイルAUTECH iパッケージ同様、エクステリアとインテリアも上質に仕立てられているから、クルマ好き、運転好きはもちろん、家具やガジェットにこだわる人にも受けるだろう。
日産セレナという定番車種の可能性を、さらに広げるのがAUTECH仕様だ。特にe-POWERとスポーツスペックが合わさった今回の試乗車は、モーター駆動ならではの静粛性と滑らかさ、そして高速域でのフラットな乗り心地から、クールなグランドツアラーだと感じられた。
(文=サトータケシ/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
日産エクストレイルAUTECH iパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4705×1830×1745mm
ホイールベース:2705mm
車重:1570kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:147PS(108kW)/6000rpm
最大トルク:207N・m(21.1kgf・m)/4400rpm
タイヤ:(前)225/55R19 99H/(後)225/55R19 99H(ブリヂストン・エコピアH/L422プラス)
燃費:--km/リッター
価格:367万9500円/テスト車=423万4878円
オプション装備:ボディーカラー<カスピアンブルー[スクラッチシールド]>(4万4000円)/運転席・助手席パワーシート(6万6000円) ※以下、販売店オプション ナビレコパック<MM519D-L>+ETC2.0車載器(36万1151円)/AUTECH専用ピラーガーニッシュ(2万4640円)/AUTECH専用フロアカーペット(3万7180円)/AUTECH専用ラゲッジカーペット(2万2407円)
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:3699km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
日産セレナe-POWER AUTECHスポーツスペック
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4810×1740×1860mm
ホイールベース:3240mm
車重:1840kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:84PS(62kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:103N・m(10.5kgf・m)/3200-5200rpm
モーター最高出力:136PS(100kW)
モーター最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)
タイヤ:(前)205/50ZR17 93Y/(後)205/50ZR17 93Y(ミシュラン・パイロットスポーツ4)
燃費:--km/リッター
価格:419万2100円/テスト車=543万7328円
オプション装備:ボディーカラー<カスピアンブルー+ダイヤモンドブラック 2トーン[スクラッチシールド]>(7万7000円)/オーテックプレミアムパーソナライゼーションプログラム<タンレザー><本革シート化/シートカラー変更[ブルーステッチ“AUTECH”刺しゅう入り]+前席クイックコンフォートヒーター付きシート+ステアリングヒーター>(65万6700円) ※以下、販売店オプション 専用フロアカーペット(6万9960円)/専用ラゲッジカーペット(2万3309円)/専用ピラーガーニッシュ(2万4640円)/ナビレコお買い得パック<MM520D-L>+ETC2.0車載器(39万3619円)
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:4640km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
-
BMW iX M70 xDrive(4WD)【試乗記】 2026.3.23 BMWが擁するSUVタイプの電気自動車「iX」。そのハイパフォーマンスモデルが「iX M70 xDrive」へと進化を遂げた。かつて、BMWの志向する次世代モビリティーの体現者として登場した一台は、今どのようなクルマとなっているのか? その実力に触れた。
-
BMW i5 eDrive35LエクスクルーシブMスポーツ(RWD)【試乗記】 2026.3.21 BMWの「5シリーズ ロング」は知る人ぞ知る(地味な)モデルだが、実はエンジン車のほかに電気自動車(BEV)版の「i5 eDrive35L」も用意されている。まさに隙間産業的にラインナップを補完する、なんともニッチな大型セダンの仕上がりをリポートする。
-
日産リーフB7 G(FWD)【試乗記】 2026.3.20 民生用電気自動車のパイオニアである「日産リーフ」が3代目へとフルモデルチェンジ。シャシーや電池、モーターなどすべての要素を刷新し、もはやスペック上は何の不安もない水準にまで進化している。360km余りのドライブで実際のところを確かめた。
-
モト・グッツィV7スポルト(6MT)【レビュー】 2026.3.18 イタリアの名門、モト・グッツィのマシンのなかでも、特に歴史を感じさせるのがロードスポーツの「V7」だ。ファンに支持される味わい深さはそのままに、よりスポーティーにも楽しめるようになった最新型の実力を、上級グレード「V7スポルト」に試乗して確かめた。
-
トヨタRAV4 Z(4WD/CVT)/RAV4アドベンチャー(4WD/CVT)【試乗記】 2026.3.17 「トヨタRAV4」が6代目へと進化。パワートレインやシャシーの進化を図ったほか、新たな開発環境を採用してクルマづくりのあり方から変えようとした意欲作である。ハイブリッドの「Z」と「アドベンチャー」を試す。
-
NEW
今やジャパニーズBEVもよりどりみどり 国産6ブランドのBEV&PHEVにまとめて乗った
2026.3.25デイリーコラム「ニッポンのBEVはまだまだ」のイメージをぬぐうべく、国産6ブランドがタッグを組んで計8モデル(一部はPHEV)を集めたメディア向け試乗会を実施。各社が目指す未来を学ぶとともに、最新モデルの仕上がりをチェックした。 -
NEW
第106回:さよならワグナー(前編) ―メルセデス・ベンツのデザインを変えた傑物の去就―
2026.3.25カーデザイン曼荼羅長年にわたりメルセデス・ベンツのデザインを指揮してきたゴードン・ワグナー氏が、ついに退任! 彼はドイツが誇る高級車ブランドになにをもたらしたのか? カーデザインの識者とともに、希代の傑物の足跡とメルセデスデザインの今昔を振り返る。 -
NEW
スズキGSX-8T(6MT)【レビュー】
2026.3.25試乗記昨今のネオクラシックブームに乗り、いよいよスズキからも新型車「GSX-8T」が登場。しかし実車に触れてみると、既存のライバルとはちょっと趣の異なるマシンとなっていた。スタイリッシュないでたちとスズキらしい実直さが融合した、独創の一台を報告する。 -
「空力性能」を追求すると、最終的にどのクルマも同じ形になってしまうのか?
2026.3.24あの多田哲哉のクルマQ&Aスポーティーな車種に限らず、空力性能の向上は多くのクルマの重要課題。しかし、それを突き詰めれば、どれも同じような形になってしまうのではないか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんはこう考える。 -
日産セレナe-POWERハイウェイスターV(FF)【試乗記】
2026.3.24試乗記販売台数ではトヨタ勢に差をつけられながらも、日産の屋台骨として奮闘する「セレナ」。現行型の登場から3年、マイナーチェンジで磨きがかかった最新の「e-POWERハイウェイスターV」に試乗すると、人の感性に寄り添う開発陣のこだわりと良心が見えてきた。 -
第56回:走行16万kmでも電池の劣化なし! -20℃でもエアコンが効く! 新型「日産リーフ」のスゴイところを聞く
2026.3.23小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ航続距離が伸びたり走りの質がよくなったりで話題の3代目「日産リーフ」だが、本当に見るべき点はそこにあらず。小沢コージが開発エンジニアを直撃し、ジミだけど大きな進化や、言われなかったら気づかないような改良点などを聞いてきました。


















































