メーカーの知恵の見せどころ コロナに効く自動車技術はあるか!?
2021.01.27 デイリーコラムクルマの価値を再認識
借りている駐車場が一気に5000円も値上がりしたのは、この冬の更新でのこと。更新通知の確認をすっかり忘れていた自責ゆえ抵抗はしませんでしたが、それにしても上げすぎじゃね? と不動産屋さんに問うてみました。
「いやもう、このかいわい、まったく駐車場が空いてなくて、特に大型車置けるところは空き待ちの人もいるくらいなんですよ」
思わぬ活況に地主さんが強気になっているというんです。それまではクルマより電車のほうが全然安くて便利、乗るならレンタカーで十分という場所柄、余った月極駐車場がカーシェアに一括貸しされるような状況だったのが、あっという間に買い手市場と化したのは、そう、コロナ禍のせいです。感染防止で公共交通機関には乗りたくない、シェアカーにも触りたくないという人たちが、わらわらとクルマを買いはじめたと。
その変化はうすうす感じてはいました。仕事柄半分、趣味半分で掘り出し物を求めて『カーセンサー』やメーカー系の中古車サイトはちょいちょい検索しているのですが、そこの総掲載台数が、2020年の中ごろにガンガン減っていったんですね。例えばカーセンサーですと大体48万台前後はある掲載台数が42万台あたりに落ち込むこともあったほどで。これ、緊急事態宣言下にあって、待たずとも即納できる中古車を求める方がそれだけ多かったということでしょう。図らずも、はやり病で、時間を問わず個々の空間とペースで移動できるというクルマの基本特性が再認識されたのだと思います。
でも車中におさまったところで、そこは絶対安全地帯ではありません。いかに安心できる空間でいられるか、そのためにメーカーやサプライヤーは知恵を絞り出してきました。
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あの手この手で抗ウイルス
一番わかりやすいのは車内空気の清浄でしょう。近年、主力市場となった中国では大気汚染問題が常態化していることもあり、自動車メーカーは空調の浄化機能を強化しはじめていました。今やポルシェでもイオナイザーを備えるモデルがあるほどです。が、それらが耐ウイルス性能を備えるかは未知数です。
が、最近はLED光を元にした光触媒効果を使ってコロナウイルスを不活性化するというエアコンフィルターも登場するなど、車中における人類とコロナとの戦いは新たなステージに突入したなぁということを実感します。ちなみにホンダが「N-BOX」用に開発した「くるますく」は表面の形状で物理的にウイルスにダメージを与えるフィルターですが、内気循環モードで15分稼働すると1立法メートル中のウイルスが99.8%除去できたというテスト結果が出ているそうです。コロナウイルス対応が明記されているわけではありませんが、安心材料にはなり得ると思います。
空調&15分縛りでいえば、フォードが発表したコロナ退治法は空調制御ソフトウエアによるものです。これ、「エクスプローラー」をベースとする警察車両向けに開発されたものですが、そのソフトを走らせることで車内温度を56度まで上昇させ、それを15分間維持することでコロナウイルスが99%以上不活化するとのこと。そもそもソフトひとつで車中が56度……という破天荒ぶりからしてアメリカらしく、なんならUber Eats(ウーバーイーツ)でも導入してくれないかと思うほどですが、未知の敵にはともあれ熱で対抗というわかりやすさは、頭でっかちな日本も見習うべきところかもしれません。
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移動の意識も変わってくる
車中に限らず、コロナとの戦いに自動車メーカーが後方支援を示した例もあります。2020年4月にはホンダとトヨタがいち早く反応。シートの前列側と後列側の間に仕切りを設けたうえで、それぞれの内圧を変えて空気の流れを制御しドライバーの感染を防ぐという感染者搬送車両を自治体等へ提供開始。日産や三菱はフェイスシールドを生産するなど、できることに積極的に着手しました。
その時期、世界的に人工呼吸器が不足し、アメリカではトランプ前大統領がゼネラルモーターズに対してその生産を命じるなど、かなり緊迫した事態になっていたわけです。が、日本のメーカーは人命に関わる医療機器をノウハウなしに生産することには慎重で、ここでも生産効率のノウハウを提供や指導する後方支援に徹していたのが印象的でした。直近では日産が非接触型体表面温度測定器のメーカーに、保有する熱画像センサー技術の使用を無償許諾するなど、知財支援も進んでいます。
カーボンニュートラル推進の機運が高まるなか、今年は超小型モビリティー規格に沿った「C+pod(シーポッド)」の法人販売も始まります。それが走りはじめると、もしや移動にまつわる人々のマインドも再定義されるかもしれません。速度や専有面積をシュリンクしてでも個々の空間を確保したいという要望は、都市部だけでなく地方でも徐々に高まるのではないでしょうか。
(文=渡辺敏史/写真=トヨタ自動車、フォード、webCG/編集=関 顕也)
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渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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