「ホンダe」にも手が届く? 電動車にまつわる補助金の話
2021.02.03 デイリーコラム全部もらえば190万円以上!?
年末に決まった令和2年度の第3次補正予算案に、「再エネ電力と電気自動車や燃料電池自動車等を活用したゼロカーボンライフ・ワークスタイル先行導入モデル事業」が盛り込まれました。
要は、自宅の太陽光発電による電力など、再生可能エネルギー電力を100%使うという条件付きながら、外部充電可能な電動車への補助金の大幅増額に加えて、いわゆるV2H(ビークル・トゥ・ホーム)システム設置への補助金も実現したのです。
電気自動車(EV)への補助金の上限は80万円、プラグインハイブリッド車(PHEV)が40万円と、従来の2倍に。また、V2H設備は、上限50万円となっています。
EVやPHEVへの補助金の金額は、航続距離等によって差がつけられているけれど、主なモデルはこんな感じです。
- 日産リーフ(40kWh):73.7万円
- 日産リーフe+(62kWh):80万円
- ホンダe:66.2万円
- プジョーe-208:67.2万円
加えて東京都の住民なら、EVでもPHEVでも、30万円の補助金(定額)が出ます。2021年度はさらに増額されて45万円に! 場合によっては60万円も! 国と都から全部もらうと190万円ですか。まさに大盤振る舞い。
この金額は、欧州のそれと比べてもまったく遜色ありません。例えばフランスの場合、4万5000ユーロまでのEVへの補助金が7000ユーロ、つまり88万円ほど。都民ならそれを軽く上回れるのです。
欲しいEVはありますか?
個人的な話で恐縮ですが、我が家は9年前に太陽光発電を設置しております。以来、自家消費に加え、余った電力を固定価格買い取り制度により高値で買い取ってもらっていますが、それは間もなく終了します(10年間)。そうすると、電力買い取り価格は一気に約4分の1に下落します。
そんなタイミングで、こんなおいしい話が決まったわけなので、なるはやでEVを購入したい! なにせ補助金には限度がある。無限に補助するわけじゃなく、予算が尽きたら終わりになるので。太陽光発電への補助金もそうでした。私は滑り込みで100万円くらい補助金をゲットしました。
が、クルマ好きとしては、ここでハタと考えます。
現在売られているEVに、真に欲しいと思えるものがあるだろうか。
いや、いいクルマはいろいろあるけれど、なにせEVにはバッテリー革命が控えている。数年以内にはバッテリーの性能が飛躍的に向上する。確定ではないけれどその可能性が高い。
そんな時に、急いでEVを買うべきだろうか? 確かに100万円補助金が出れば、同クラスのガソリン車とほぼ同額になるけれど、「同額ならEVを選ぶ!」という気持ちになるほど魅力的なEVは、正直まだないのです、個人的には。
今後、飛躍的に性能が向上したEVが登場したら、現在売られている旧世代のEVは、市場価値がガタガタになるだろう。初代「リーフ」の中古車が激安になってるけど、そんなレベルじゃなく下がる気がする。なにせ間もなく革命が起きるんだから(たぶん)。
もちろん、いま本気で欲しいEVがある方には朗報です。なるはやで買うべきです。ただ補助金は納車されてから申請する形なので、いつ買えるか微妙な「ホンダe」は除外ですかね。第2期の受注、まだ間に合うのかな。
その場限りのはかない花火
私は思うのですが、今回のこの補助金増額は、長い目で見るとほとんど無意味じゃないでしょうか。
現在のEVは、日本ではまだ主流になれない。それを少しばかり無理に売ったって、技術の進歩にはつながらず、その場限りの花火で終わる。ならば先を見越して、高速道路のSA/PAの急速充電器の大出力化(例えば150kW)に予算を使うなど、バッテリー革命に備えたほうがいいんじゃないか。長い目で見れば、その方が後押しにならないか。
欧州でEVが急速に普及しつつあるのは、アメ(補助金)に加えてムチがあるから。EVじゃないと街の中心部に乗り入れられなくなりますよとか。人々は恐怖に支配され、EVに走っている。
でも、日本にはまだムチはない。いや、ムチはヤメテ! 痛いのはイヤ。当面火力発電に頼らざるを得ない日本の場合、EVイコール環境にいいわけでもないし。
思えば、再生エネ電力への過度な優遇も失敗だった。私はトクした側ですが、いったん決めた固定価格買い取り制度は、十年二十年とツケを残すだけでなく、コスト削減努力を止めてしまう面もあります。
我が家の太陽光発電パネルはパナソニック製です。9年前、「絶対国産パネルにせねば!」という強い意志を持って選んだのですが、そのパナソニックは先日、パネル生産からの全面撤退を発表しました。高コストにつき国内需要に頼っていたので、今や売り先がなくなったのです。涙。
国産EVがそうならないよう、政府には、大局観を持ったかじ取りが求められると思います。
(文=清水草一/写真=三菱自動車、トヨタ自動車、マツダ、ポルシェ/編集=藤沢 勝)
拡大 |

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
デビュー4年でどう変わる? 最新型「トヨタ・クラウン クロスオーバー」の詳細を予測する 2026.8.24 2022年7月のデビューから4年がたち、仕様変更が予告された「トヨタ・クラウン クロスオーバー」。では、どこがどう変わるのか? 最新型の発売を前に、さまざまな角度からポイントを予測してみよう。
-
これは“ヨーロッパ版軽自動車”か? 欧州の新自動車規格「M1E」とニッポンの軽の可能性 2026.8.21 欧州で検討されている、新たな小型電気自動車(BEV)規格「M1E」。手ごろなBEVの普及と域内自動車産業の保護を目的としたこの規格は、軽自動車という独自の小型車を育んできた日本にとってもチャンスとなるのか? 新たな自動車規格の展望と可能性を考察する。
-
FCEVで世界一の販売台数 「ヒョンデ・ネッソ」にみる水素の可能性と普及へのカギ 2026.8.20 フルモデルチェンジしたヒョンデの燃料電池車(FCEV)「ネッソ」は、1014km(参考値)の一充填走行距離を実現したという。進化したゼロエミッションの走りを味わいながら、ヒョンデが目指す水素社会の可能性とFCEVの未来について考えてみた。
-
新型「キックス」がスマッシュヒットの日産 次なる一手のコンパクトミニバンとはどんなクルマか? 2026.8.19 新型「キックス」が好評の日産が、次はコンパクトミニバンの発売をプランしているという。日産の国内ラインナップには(なぜか)なかったジャンルのモデルだが、果たしてどんなクルマになるのだろうか。「シエンタ」「フリード」といった強力なライバルに、どのような武器を手に挑むのだろうか。
-
次期「スカイライン」はこうしてつくられる! 日産が今やろうとしている開発効率化の取り組みとは? 2026.8.17 日産はいま車両開発期間の大幅短縮に向けて、大きなチャレンジをしているという。現在開発が進んでいる次期「スカイライン」に適用されるというその手法は、従来のやり方とどう違うのか? 世良耕太が解説する。
-
NEW
OEM車で自社製品らしさを出すために、多田さんだったら何をする?
2026.8.25あの多田哲哉のクルマQ&A他メーカーが開発したクルマを、自社製品として別の名前でユーザーに供給するOEM車。エンジニアの工夫次第で、オリジナルとは異なる独自の個性を出すことはできるのか? 元トヨタの車両開発者、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.8.25試乗記BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。 -
NEW
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】
2026.8.25試乗記カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。 -
NEW
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】
2026.8.24試乗記スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。 -
デビュー4年でどう変わる? 最新型「トヨタ・クラウン クロスオーバー」の詳細を予測する
2026.8.24デイリーコラム2022年7月のデビューから4年がたち、仕様変更が予告された「トヨタ・クラウン クロスオーバー」。では、どこがどう変わるのか? 最新型の発売を前に、さまざまな角度からポイントを予測してみよう。 -
トヨタRAV4アドベンチャー(前編)
2026.8.23思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「トヨタRAV4」に試乗。ご存じのとおり今やトヨタの屋台骨を支えるSUVであり、先代モデルではグローバルでの年間販売台数が100万台に到達。世界で最も多く販売されるトヨタ車の6代目だ。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。





