ミツオカ・バディ20ST(FF/CVT)
もはやオリジナル 2021.06.05 試乗記 そこが下町の路地裏であろうと旅情あふれる温泉街であろうとお構いなし! 「ミツオカ・バディ」が姿を現すところのすべてが、古きよき時代のアメリカ西海岸の空気に塗り替えられてしまうのだ。不思議な魅力を備えた新型SUVの仕上がりやいかに!?何かのレプリカにはあらず
2021年6月中旬の納車開始が予定されているバディは、ミツオカとしては初のSUVということもあってか、近年にないヒット作になる可能性が高い。昨2020年11月の正式発表時は年間150台の生産計画だったが、予約段階から想定を大きく上回る受注となったらしい。そこで生産方式を、ひとりの職人が1台ずつ完成させるセル生産から、流れ作業によるライン生産に変更して、当初予定の2倍となる年間300台への増産を決定した。
ミツオカといえば「ゼロワン」や「オロチ」など、車体から自社開発できる日本最小の自動車メーカーでもある。ただ、今回のバディは、既存の量産車をベースに主にエクステリアをモディファイ……という「ヒミコ」「ビュート」「ガリュー」などの現行商品と同様の、おなじみの手法でつくられるミツオカである。
バディのベースとなったのは「トヨタRAV4」で、いつものように前後エンドを中心に再デザインされている。モチーフは「1970~1980年代のアメリカンSUV」だそうだ。上下2階建てヘッドライトやグリルはいかにもシボレーっぽく、同社の「ブレイザー」に似ているとの声が多い。しかし、中央が盛り上がったボンネットや逆スラントノーズの造形は「フォード・ブロンコ」風でもあり、ウッドパネルを貼ったようなリアゲートや縦長のテールランプは「ジープ・グランドワゴニア」に見えなくもない。バディのデザインは特定のモデルを想定した“レプリカ”ではなく、いわば“あるあるモノマネ”かもしれない。
機能的な損失は皆無
バディにはベースのRAV4にあるグレードに合わせて計5種(駆動方式の選択肢を含めると厳密には7種)のグレードが用意される。今回の試乗車となったのは、RAV4ではもっとも手ごろな2リッターガソリンモデル「X」をベースとした「20ST」で、469万7000円という本体価格はベースモデル比で195万4000円高となる(ともにFFの場合)。その他のグレードのバディもすべて、ベースのRAV4に190万円前後上乗せされた価格設定になっている。
そんなバディは、メカニズム方面ではなんら手が加えられておらず、内装もツルシ状態ではステアリングホイール中央やドアスピーカー部分のロゴが「MITSUOKA」や「Buddy」に変わるくらいだ。つまりは、事実上エクステリアデザインのみで190万円前後のエクストラをどう捉えるか……は人それぞれだろう。ただ、前記のように増産しないとバックオーダーリストが伸びるばかりなのは事実だし、カスタマイズカーあるいはドレスアップカーとして見ると、その仕上がり品質はすこぶる高い。それは間違いない。
バディのフロントセクションはグリルバンパーや灯火類を含めて、ボンネットからサイドフェンダーまですべてがゴッソリと専用部品に取り換えられている。それでも、RAV4にもともと備わっていたミリ波レーダーやソナーセンサーはきちんと移設されており、緊急自動ブレーキやレーントレースアシスト、アダプティブクルーズコントロール、道路標識認識といった「トヨタセーフティセンス」の機能や、クリアランスソナーによる運転支援機能はなんら損なわれていない。
また、クローム仕上げのグリルやバンパーはABSの、リアゲート外板はポリプロピレンのインジェクション成型品で、いい意味で手づくり感とは一線を画す量産品的な質感を醸している。量産品と職人技のイイトコ取り的なミツオカ独特のオーラは、こういう細部の蓄積から生まれている。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
悩ましい16インチタイヤ
バディの車重はベースより60kgほど増えているが、運転席に座って走らせると、よくも悪くも、そして笑ってしまうほどRAV4そのままだ。けっこう立派な車体を、さわやか、かつ軽快に走らせる2リッター自然吸気エンジンは相変わらず力強い。ハンドリングもいつものパリッとしたもの……と思ったら、ここは記憶にあるRAV4より、ちょっとマイルドで“ヌルッ”とした手応えになっていた。そして、ロードノイズもちょっとだけ目立つ気もした。
ただ、これはバディだから……とかではなく、もっぱら16インチのオールテレインタイヤによるものだ。これはミツオカがバディ専用に用意したオプションで、標準ではタイヤもベースのRAV4そのままである。基本的に舗装路のみを走行という一般的なマイカーの使い方なら、標準タイヤのまま乗るのがベターだろう。
ただ、有名ホイールメーカーであるクリムソンが手がける「ディーン・クロスカントリー」のクラシカルな意匠、インチダウンとなるサイズ設定、それに組み合わせられるオールテレインタイヤで構成されるオプションは、ビジュアル的には絶妙というほかない。操縦性という意味ではちょっと後退感があるのは否めないが、それとて微妙といえる程度だし、荒れた路面のアタリなどではオールテレインに分があるシーンもなくはない。せっかくのバディである。予算があるなら、この16インチもぜひ選びたいオプションのひとつだろう。
オプションといえば、ていねいに合皮が張られたシートやドアトリムもオプションである。ブラックベースで車体色に合わせた有彩色がアクセントとなるのはバディのみならず、ミツオカではおなじみのデザインである。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
さすがの職人技
乗ったらRAV4そのまま……とは、バディのような成り立ちのクルマでは最上級のホメ言葉である。その印象は高速道路上でもなんら変わることはなく、フロントセクションのシルエットがあれだけ変わっていても、RAV4になかったキシミ音や風切り音が聞こえてくることもない。さらに、直進安定性にも特別な影響を感じないのも、バディの造形が空力的に大きな問題を抱えていないことを意味する。
さらに、高速で前を向いて走っていても、目前のボンネットフードが無粋に振動するようなことがないのは、バディのボンネット素材がカスタマイズカーにありがちな複合樹脂や薄肉のアルミではなく、頑丈なプレススチールパネル製だからだろう。少量生産品なのに、こういう本格的なスチール部品を使う(使える?)のもミツオカらしいところだ。そのスチールボンネットを中心に、バンパーやフェンダーなどの樹脂部品、そしてRAV4からそのまま受け継いだルーフやドアにいたる全体のチリ合わせや塗装の統一感はさすがである。このあたりは、ミツオカの職人技が炸裂している領域である。
バディはいわば、あるあるモノマネ……と最初に書いた。確かにそのとおりなのだが、もとからあるRAV4の部分とミツオカが新たにデザインした部分との造形的なマッチングは、もはや“芸”と呼びたくなるほど手だれ感にあふれる。また、繰り返しになるが、その仕上げ品質が異様に高い。モノマネ芸もきわめれば、もはやオリジナル芸として、ある意味で本物以上の価値が出ることもあるのだ。
そんなバディはあまりの人気ゆえに増産が決まったのは冒頭のとおりだが、ライン生産への完全移行は2022年以降になるそうだ。今すぐに注文しても生産割り当てはすでに2023年分らしい。ほしいなら、ひとまず急いだほうがいい。
(文=佐野弘宗/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
ミツオカ・バディ20ST
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4730×1865×1685mm
ホイールベース:2690mm
車重:1560kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:171PS(126kW)/6600rpm
最大トルク:207N・m(21.1kgf・m)/4800rpm
タイヤ:(前)LT225/70R16 102/99R M+S/(後)LT225/70R16 102/99R M+S(BFグッドリッチ・オールテレインT/A)
燃費:15.2km/リッター(WLTCモード)
価格:469万7000円/テスト車=608万6850円
オプション装備:ボディーカラー<グローブワンホワイトパール>(8万8000円)/225/70R16オールテレインタイヤ&16×6.5Jディーン・クロスカントリーアルミホイール<シルバー>(26万4000円)/スペアタイヤ<応急用>(1万1000円)/サイドメッキモールセット<フロント&リア>(19万8000円)/「Buddy」バックドアエンブレムスペシャルタイプ<サーフロゴ>(1万9800円)/バックドアエンブレム七宝焼カラー<ブラック>(2万2000円)/チルト&スライド電動ムーンルーフ<挟み込み防止機能付き>(11万円)/バックガイドモニター(8万4700円)/専用レザーシート&トリムセット<全席・合成皮革+ステッチ付き>(43万7800円) ※以下、販売店オプション エントリーナビキット(6万6000円)/カメラ別体ドライブレコーダー(6万3250円)/ビルトインETC車載器<ボイスタイプ>(2万5300円)
テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:1404km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:281.2km
使用燃料:28.0リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:10.0km/リッター(満タン法)/10.4km/リッター(車載燃費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】 2026.8.21 メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。
-
マツダCX-5 L(4WD)【試乗記】 2026.8.19 マツダの販売の中軸を担うミドルクラスSUV「CX-5」が、3代目にフルモデルチェンジ。その完成度にはどうしても期待してしまうところだが、実車の仕上がりはどうだったのか? 絶対に失敗の許されない、マツダの基幹車種の実力に触れた。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(FWD)【試乗記】 2026.8.18 クルマの進化か、充電インフラの進化か、それともCEV補助金拡充の効能かは定かではないが、ようやく日本の電気自動車(BEV)も普及期を迎えつつある。ことに「bZ4Xツーリング」は豊かな一充電走行距離と優れたドライバビリティーが自慢のトヨタの最新作だ。FWDモデルの仕上がりをリポートする。
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【試乗記】 2026.8.17 BMWの新世代電気自動車の第1弾である「iX3」がいよいよ日本の道を走り始めた。さすが「ノイエクラッセ」をうたうだけあって、内外装だけではなく、運転感覚もまた新しい。「Mスポーツ」グレードの仕上がりをリポートする。
-
NEW
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】
2026.8.24試乗記スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。 -
NEW
デビュー4年でどう変わる? 最新型「トヨタ・クラウン クロスオーバー」の詳細を予測する
2026.8.24デイリーコラム2022年7月のデビューから4年がたち、仕様変更が予告された「トヨタ・クラウン クロスオーバー」。では、どこがどう変わるのか? 最新型の発売を前に、さまざまな角度からポイントを予測してみよう。 -
トヨタRAV4アドベンチャー(前編)
2026.8.23思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「トヨタRAV4」に試乗。ご存じのとおり今やトヨタの屋台骨を支えるSUVであり、先代モデルではグローバルでの年間販売台数が100万台に到達。世界で最も多く販売されるトヨタ車の6代目だ。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
DS N°8エトワールAWD(4WD)
2026.8.22試乗記DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。 -
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】
2026.8.21試乗記メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。 -
これは“ヨーロッパ版軽自動車”か? 欧州の新自動車規格「M1E」とニッポンの軽の可能性
2026.8.21デイリーコラム欧州で検討されている、新たな小型電気自動車(BEV)規格「M1E」。手ごろなBEVの普及と域内自動車産業の保護を目的としたこの規格は、軽自動車という独自の小型車を育んできた日本にとってもチャンスとなるのか? 新たな自動車規格の展望と可能性を考察する。








































