アメ車顔した「RAV4」がデビュー!? ミツオカの個性派SUV「バディ」ができたワケ
2020.11.27 デイリーコラムワクワクできるSUVを求めて
2020年10月29日、新型SUV「ミツオカ・バディ」のデザインが公開された時は、方々でかなり話題になった。
『webCG』には非常に多くのアクセスがあったし、当のミツオカ関係者も“かつてないほどのお問い合わせ”があって、大いに驚いたらしい。筆者自身、そのイメージを見るや「おお、これは!!」と破顔してしまったひとりだ。
純粋に、かっこいい。というか、新鮮味がある。「現役の車種にクラシカルな顔とお尻をくっつける」というミツオカの開発手法はいまに始まったわけではないが、最新の「トヨタRAV4」にちょい古の「シボレー・ブレイザー」(かな?)という組み合わせは……うむむ、さすが手だれというべきか。
しかし、なんでまたこのコンビネーションなのか?
過去のミツオカ車を振り返ってみれば、往年の「ジャガー・マーク2」に似た「ビュート」に、ロールス・ロイス風グリルが特徴の「ガリュー」。さらにはモーガンっぽい「ヒミコ」など、英国車イメージのクルマが思い浮かぶ。それがアメリカンSUVとは……。わかった、昔の「シボレー・コルベット」に似た前作「ロックスター」(2018年)が売れたのに気をよくしてのことでしょう?
そう思いきや、ロックスターとは関係がないと、関係者はキッパリ。
「“ワクワクできるクルマ”を世に送り出したいというのがミツオカとしての変わらない希望であって、それがなにかを考えた結果が、かつては英国車イメージのクルマ、今回は今回でアメ車イメージのクルマだった、ということなんです」
アメ車続きはたまたま。いま、ちまたに増えてきたSUVはどれもプレミアム一辺倒で、気負わずにTシャツ感覚で乗れる相棒(Buddy)のようなモデルがあまりない、だからそんなSUVを提案したい! そんなミツオカの思いを具現できるのが、結果的に「アメリカンビンテージのSUV」だったというわけだ。
では、数あるSUVの中から、どうしてこの4代目RAV4をベース車両に選んだのか?
新型RAV4でなければ成り立たない
ミツオカは、2020年4月の時点で、同年度の方針として「新たなカテゴリーへの新型車の投入」を予告していた。そして、それがSUVであることもほのめかしていた。ならばミツオカに長く車両を提供してきたメーカーである日産のSUV、「エクストレイル」は有力な候補になりそうなものだ。
トヨタ側から話を持ちかけられたのだろうか? トヨタ車でいくなら、個性的な見た目で知られる「C-HR」のほうがミツオカのカスタムベースとしては有望、という判断はなかったか。
そんな筆者の推察は、まったく当たっていなかった。
「一番の決め手は、実は新型RAV4の“カタチ”なんです」
出だしから確固としたバディのイメージは決まっていて、その完成されたデザインを実現できるクルマとして、直線基調のエクステリアを持つ現行RAV4に白羽の矢が立ったというのだ。そういえば、デザインを担当した青木孝憲氏も「こだわったのはボディーの角。カクカクしたクルマがかっこよかったあのころ(1970~1980年代)をイメージした」と言っていたっけ。
ということは、新型RAV4がいまのデザインじゃなかったら……。
「バディのベースにはならなかったかもしれませんね」
ちゃんと長く付き合えるように
さらに、新型RAV4の発売タイミングも重要な要素だったという。
バディはこれまでのミツオカ車と同様、ベースとなるクルマを他メーカーから調達したうえで、不要な外装を外し、ミツオカオリジナルのパーツを装着するという過程でつくられる。つまり、新型RAV4のように世代交代したばかりのクルマや新規開発車をベースにしないとライフサイクルが合わなくなり(ベースモデルが先に生産終了してしまい)、ボディーパネル用の金型など、大きな初期投資を回収できないリスクが生じるのだ。
そう、バディには、金型を使ったABS樹脂やPP(ポリプロピレン)のパーツが多く使われている。それも、同モデルが限定車ではなく、カタログモデルとして長いライフサイクルを考えられているひとつの証左である。とはいえ、現時点でも生産キャパシティー(年産約150台)に対して問い合わせが多すぎ、オーダーした方々をお待たせする可能性が高いそうだが……。
長く付き合える相棒となることが期待されるバディだけに、メンテナンスも重要だろう。その点については、現在、トヨタディーラーでも整備対応できるよう話し合いを進めている最中だそうだ。
とにもかくにも、正式デビューを飾ったミツオカ・バディ。思えば新型RAV4は、アメリカで最も売れているトヨタ車のひとつだ。それが古いアメ車風の顔を得て日本でちやほやされるというのは、おもしろいというか、なんだかほほ笑ましい。
乗ってみると、RAV4とはまた違った喜びがあるのか? 明けて2021年の春にはデモカーが用意されるとのことだから、ぜひ、webCGの試乗記にもご期待ください。
(文と写真と編集=関 顕也)
◆関連ニュース:ミツオカ初のSUV「バディ」が正式デビュー 配車は2021年6月から
◆フォトギャラリー:ミツオカ・バディ ハイブリッドDX/バディ20LX

関 顕也
webCG編集。1973年生まれ。2005年の東京モーターショー開催のときにwebCG編集部入り。車歴は「ホンダ・ビート」「ランチア・デルタHFインテグラーレ」「トライアンフ・ボンネビル」などで、子どもができてからは理想のファミリーカーを求めて迷走中。