国内トップフォーミュラカテゴリーの改革プロジェクトがスタート

2021.10.25 自動車ニュース webCG 編集部
「SUPER FORMULA NEXT 50」の発表会に出席した、中嶋 悟 JRP取締役会長(写真左から2人目)をはじめとするプロジェクト関係者。
「SUPER FORMULA NEXT 50」の発表会に出席した、中嶋 悟 JRP取締役会長(写真左から2人目)をはじめとするプロジェクト関係者。拡大

全日本スーパーフォーミュラ選手権を運営している日本レースプロモーション(以下JRP)は2021年10月25日、2022年以降のサステイナブルなモータースポーツ業界づくりを目的としたプロジェクト「SUPER FORMULA NEXT 50(スーパーフォーミュラ ネクスト ゴー)」をスタートすると発表した。


今回の発表会は、東京・青山にあるHondaウエルカムプラザ青山で開催された。ホンダとトヨタのレーシングカーが並ぶ光景を目にした登壇者のひとり、小林可夢偉選手は「まさにこのプロジェクトの一体感を象徴する光景」と笑顔をみせた。

	今回の発表会は、東京・青山にあるHondaウエルカムプラザ青山で開催された。ホンダとトヨタのレーシングカーが並ぶ光景を目にした登壇者のひとり、小林可夢偉選手は「まさにこのプロジェクトの一体感を象徴する光景」と笑顔をみせた。拡大
1973年の全日本F2000選手権開幕からスタートした日本のトップフォーミュラカテゴリーは、2022年で50年目を迎える。スクリーン上の写真は1978年の鈴鹿F2チャンピオンシリーズのもので、右端には若かりし日の中嶋会長の姿も。
1973年の全日本F2000選手権開幕からスタートした日本のトップフォーミュラカテゴリーは、2022年で50年目を迎える。スクリーン上の写真は1978年の鈴鹿F2チャンピオンシリーズのもので、右端には若かりし日の中嶋会長の姿も。拡大
「国内トップフォーミュラを経て世界で活躍したレーシングドライバー(写真)が少なくないことを考えれば、このカテゴリーがいかにハイレベルなものかわかってもらえると思う」と、JRP関係者は胸を張る。
「国内トップフォーミュラを経て世界で活躍したレーシングドライバー(写真)が少なくないことを考えれば、このカテゴリーがいかにハイレベルなものかわかってもらえると思う」と、JRP関係者は胸を張る。拡大
この日はレーシングドライバー代表として、トヨタ系ドライバーである小林可夢偉選手(写真右)とホンダ系ドライバーの山本尚貴選手(中央)も姿をみせた。「F1やインディからは、モータースポーツはそれぞれの国や地域に合った見せ方があると感じる」という小林選手は、「今回のプロジェクトについても、しっかりその点をリサーチしたうえで日本の人々にアピールすべき」とコメントした。
この日はレーシングドライバー代表として、トヨタ系ドライバーである小林可夢偉選手(写真右)とホンダ系ドライバーの山本尚貴選手(中央)も姿をみせた。「F1やインディからは、モータースポーツはそれぞれの国や地域に合った見せ方があると感じる」という小林選手は、「今回のプロジェクトについても、しっかりその点をリサーチしたうえで日本の人々にアピールすべき」とコメントした。拡大
モータースポーツのエンターテインメント性を高めるべく、スマートフォン用のさまざまなコンテンツも開発される。なかでも「ドライバー無線の内容が聞ける」というのは大きなトピック。「(作戦が露呈するという意味で)チームにとって不利益があるのでは?」という質問も挙がったが、小林・山本両選手によれば、「全チーム同じ条件だし、聞かれていることを理解したうえで交信するので問題ナシ」とのこと。
モータースポーツのエンターテインメント性を高めるべく、スマートフォン用のさまざまなコンテンツも開発される。なかでも「ドライバー無線の内容が聞ける」というのは大きなトピック。「(作戦が露呈するという意味で)チームにとって不利益があるのでは?」という質問も挙がったが、小林・山本両選手によれば、「全チーム同じ条件だし、聞かれていることを理解したうえで交信するので問題ナシ」とのこと。拡大

目指すは「必要とされるモータースポーツ」

SUPER FORMULA NEXT 50は、現在スーパーフォーミュラと呼ばれている国内のトップフォーミュラカテゴリーが、2022年に50年目の節目を迎えることを契機に始められるプロジェクト。同カテゴリーの価値を向上させ、日本のみならず世界の若い世代に憧れられるものとなることを目指し、“ドライバーファースト”という立場で、2022年から段階的に情報発信のあり方やサーキットでの楽しみ方などを改善していくという。

発表会の冒頭であいさつに立った中嶋 悟 JRP取締役会長も、中学生のころ目にしたレーシングドライバー生沢 徹さんの姿に憧れて、同じ道を目指したというエピソードを紹介。「次の世代にカッコイイと思われる次世代のフォーミュラをつくっていきたい」と意気込んだ。

また、中嶋会長が「1970年代はオイルショックなどで燃やすもの(燃料)がなかったのに、いまは環境保全のために『燃やすな』という時代。いろいろな困難に対応しなければならない」とコメントした通り、同プロジェクトにおいては将来的なモビリティーの実験場となることが目的とされている。

具体的には、トヨタ自動車および本田技研工業とともに、パワートレインやシャシー、タイヤ、その他素材、燃料等に関して、市販車両も含めたカーボンニュートラル社会の実現につながる技術開発に取り組む。特に「e-fuel」「バイオ燃料」といったカーボンニュートラルフューエルや、「バイオコンポジット」と呼ばれる植物由来のコンポジットについては、導入を視野に2022年からテストを開始する。

今回のプロジェクトリーダーを務める上野禎久JRP取締役が自ら“周回遅れレベル”と酷評するエンターテインメントの分野でも、さまざまな実験的取り組みが行われる。今後は映像や音楽、データ、通信、AI、ゲーム、アニメーション等を切り口としつつ、日本から世界に発信する新しいモータースポーツカルチャーの創造を目指す。

その一例としては、スマートフォンに最適化したスーパーフォーミュラの新たなデジタルプラットフォームを立ち上げ、ファンが見たいコンテンツをいつでもどこでも見られるようにする取り組みが挙げられている。レースのライブ中継映像も提供。さらに、すべてのドライバーのオンボード映像や、車速や位置情報、オーバーテイクシステムの残量等といったデータを開示。ドライバー無線の音声等も見聞きすることができるようにする計画だ。

これにより、ファンはニーズに応じた観戦体験が可能になるほか、レース当日以外にもさまざまな映像コンテンツを視聴したり、応援しているドライバーやチームと交流したりできるようになる。

その実現のため、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーがJRPのストラテジーパートナーとしてプロジェクトに参画。今後はさまざまな領域のパートナーを募集し、改革を推進したいとしている。

(webCG)

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