リンカーンMKX(4WD/6AT)【試乗速報】
シンプルを極めろ 2011.03.23 試乗記 リンカーンMKX(4WD/6AT)……630万円
リンカーンブランドのSUV「MKX」が大幅にリニューアル。上質さと先進性がアピールされる新型の走りを試した。
“デコ”られたニューモデル
われわれは高級なアメリカ車というと、とかく装飾性が強く、きらびやかで豪放な世界を想像しがちである。しかしあらためて振り返ってみれば、歴代のリンカーンに貫かれた美意識は、時代に応じて多少のブレはあるにしても、おおむねそれとは違っていたように思う。たとえば、ケネディ大統領が乗っていた1960年代前半の「コンチネンタル」あたりが、ちょっと古いがいい例だ。余計な装飾は廃され、面構成はひたすらシンプル。同時期のキャデラックと比べたらストイックなまでに機能美が前面に押し出され、モダンで嫌みのないスタイリングだった。
横方向いっぱいに広がったスクエアなフロントグリルを持つ先代「MKX」のデザインも、どことなくそれに共通した匂いがあり、個人的には憎からず思っていた。しかし今回登場した新型はちょっと違う。ボディのフォルムそのものに大きな変更はないが、鳥が羽を広げたような派手なグリル(スプリットウインググリルと言うのだそうだ)が装着され、見た目のイメージはだいぶ“デコ”方向に振られた。しかしこのグリルも、彼らのヘリテージから引用したもので、元ネタは1941年型「コンチネンタル」という。
ちなみにこのグリルは、2007年に発表されたサルーンのショーモデル「MKRコンセプト」でまず世に問われ、その後「MKZ」(中型セダン)、「MKS」(大型セダン)、「MKT」(大型クロスオーバー)といった量産車にすでに採用済みの、あちらではもはやリンカーンのファミリーフェイスとして定着しつつある“顔”である。「MKX」にいきなり与えられたものではない。当時、北米フォードでデザインの統括責任者の立場にあったのは、あのピーター・ホルベリー氏(現ボルボのデザイン責任者)である。