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【スペック】全長×全幅×全高=4740×1930×1685mm/ホイールベース=2820mm/車重=2030kg/駆動方式=4WD/3.7リッターV6DOHC24バルブ(309ps/6500rpm、38.7kgm/4000rpm)/価格=630万円(テスト車=631万5225円/ETC車載器=1万5225円)

リンカーンMKX(4WD/6AT)【試乗記】

頼りになるアメリカン 2011.04.12 試乗記 笹目 二朗 リンカーンMKX(4WD/6AT)
……631万5225円

見た目から中身まで刷新された、リンカーンブランドのSUV「MKX」に試乗。果たして、その仕上がり具合は?

迫力満点の顔つき

「リンカーンMKX」は「キャデラック・エスカレード」とともに、アメリカン・プレミアムブランドのSUV/ミニバン市場の一角を形成する。
このクルマの場合、CUV(クロスオーバー・ユーティリティ・ビークル)なる区分けを打ち出している。昔のステーションワゴンに近い、(スポーツというよりも)乗用車的なところが、CUVと呼ぶ意図なのかもしれない。

新型はマイナーチェンジの範疇(はんちゅう)にあるものの、この「スプリット・ウイング・グリル」と名付けられた、大胆なクロームメッキグリルは何よりも新しいリンカーンの個性を表現している。アメリカ車にしては比較的シンプルな造形を採用するフォードにあって、これは迫力満点ではある。この顔がバックミラーいっぱいに迫ってきたら、ほとんどのクルマはすぐ進路を譲るに違いない。もちろんそこを重視するユーザーからは、拍手喝采だろう。そういう意味でも、今回の変化は大成功といえる。


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速度計を真ん中に置く「MKX」のメーター。向かって左には燃費などの車両情報が、右側にはオーディオや空調などの操作メニューが表示される。
速度計を真ん中に置く「MKX」のメーター。向かって左には燃費などの車両情報が、右側にはオーディオや空調などの操作メニューが表示される。 拡大
リアビュー。ホイールは18インチのポリッシュドアルミを履く。
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6段ATはプロの味

退けたあとのダッシュも俊足。パワートレインは一新され、新開発のV6エンジンは3.7リッターに排気量を少し増やし、これまでより40psアップの309ps を発生する。

フォードが走り屋に支持されるのは、単にエンジンパワーで驚かすのではなく、ATのギア比を巧妙に分割させることで効率よく加速する点においてだ。いたずらに段数を多くするのではない。6段であっても、それが玄人(くろうと)ウケする配分になっている。回転落差が少なく滑らかであることはもとより、加速Gの感覚が途切れないことが、より一層のパワー感を生み、加速を爽快なものにしている。
6速のステップアップ比は1.56-1.56-1.30-1.41-1.35となっていて、1から3速までは均等配分。昔のフォードは下3段が1.3台と接近していて、実にスポーティだった。あの感動こそ薄らいだものの、均等配分による息の長い加速感は受け継がれている。上の3段は、接近させて段数を持て余している他車の例に比べ、適切。もちろん日本の高速道路でも普通にトップギアが使える。ちなみに、6速で100km/h巡航時のエンジン回転数は、約1900rpm。“燃費ギア”でありながら、高トルクによる加速力も十分だ。
3段位まとめて落とさないとエンジンブレーキが効かない設定のクルマに比べて、5速もそれなりの減速度が期待できる。この辺が、フォードらしいプロフェッショナルな味付けと言える。

センターコンソールに生えるセレクトシフトのATレバーそのものは、ややクラシックな印象を拭えない。今どきの、ステアリングホイール上のパドルシフトがベストとは言えないが、一度レバーでマニュアルモードを選んでから目的のギアポジションをセレクトするという、2段階操作を必要とするところが“1世代前”。ただ、「+−スイッチ」がシフトレバーの横にあり、握ったまま操作できる点は救いだ。


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3.5リッターから3.7リッターへと排気量を拡大した心臓部。309ps、38.7kgmを発生する。
3.5リッターから3.7リッターへと排気量を拡大した心臓部。309ps、38.7kgmを発生する。 拡大
ブラックレザーとウォールナットで仕立て上げられるインテリア。シートヒーターやステアリングヒーターが標準で備わる。
ブラックレザーとウォールナットで仕立て上げられるインテリア。シートヒーターやステアリングヒーターが標準で備わる。 拡大
写真をクリックすると、シートの倒れるさまが見られます
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古さと新しさの好ブレンド

「リンカーンMKX」には、古い部分と新しい部分が混在する。イグニッションキーをそのまま残すのも、今となっては貴重でもあるが、これをありがたがるのは、われわれシニア世代だけかもしれない。しかし若いユーザーでも、カードなど持っているだけで済む簡単な方法を、便利と認める人ばかりではない。「これから自動車を動かすんだ……」という、心構えや“神聖な儀式”のような感覚を大事にする人には、やはりキーという形体はいまだに重い意味をもつのだ。
そのうえでこのクルマは、車外からのエンジンスタート、ステアリングヒーターやエアコンを走行前に準備することも可能だ。

若いユーザーにもこびている箇所も、ふんだんにある。センサーを指先でなぞるだけでエアコンの風量やカーオーディオの音量を変えられるなど、繊細にして微妙な調整を可能にしている。センターコンソールの液晶ディスプレイに映し出される多彩な機能は、画面にタッチすればいい、直接的で分かりやすいものだ。画の表示方式そのものも、情報伝達能力の点ですぐれている。この手のものには苦手意識のある人でも、見れば分かる式によく考えられているのだ。

 

ドアノブの上には、暗証番号を使って開錠・施錠ができるユニークな装備(キーレス・エントリー・キーパッド)が備わる。
ドアノブの上には、暗証番号を使って開錠・施錠ができるユニークな装備(キーレス・エントリー・キーパッド)が備わる。 拡大
センターコンソールにある8インチディスプレイ上には、カーオーディオやハンズフリーフォン、空調などの情報が表示され、タッチパネルで操作することができる。
センターコンソールにある8インチディスプレイ上には、カーオーディオやハンズフリーフォン、空調などの情報が表示され、タッチパネルで操作することができる。 拡大
オーディオのボリュームやエアコンの風量は、ごらんのようにセンサー(フィンガータッチ&スライダー)を指でなぞって調節する。
オーディオのボリュームやエアコンの風量は、ごらんのようにセンサー(フィンガータッチ&スライダー)を指でなぞって調節する。 拡大

どんな道でも安心感

こうした大きなボディでは隅々まで神経を張りめぐらせる必要があるが、通常のドアミラーでは死角となりやすい部分にはブラインド・スポット・ミラーが組み込まれているし、リバースに入れればリアビューカメラが作動、ソナーによる障害物警報などもある。そうした現代の便利装備のたぐいは、至れり尽くせりである。

そんなリンカーンMKXの最たる魅力は何だろうかと考えると、5人でゆったりくつろげる快適な移動空間、ということになるだろうか。

アメリカ車はもとよりおおらかな性格をもつが、その中でもこの大きなワゴン車は、ハイウェイクルーズだけでなくいろいろなステージで能力を見せてくれそうだ。
4WD車としての性能は試す機会がなかったが、通常の走行でもスムーズな挙動に終始し、突然の雨や雪そして泥濘(でいねい)地などでも全自動で窮地を脱することのできる安心機構を備える。180mmの最低地上高も、また大いに頼もしい。630万円の価格は決して安くはないが、このクラスの車を選ぶ裕福なユーザーは、MKXを比較対象リストから外せないだろう。

(文=笹目二朗/写真=峰昌宏)


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乗員の頭上には、大型のサンルーフ(パノラミック・ビスタ・ルーフ)が広がる。
乗員の頭上には、大型のサンルーフ(パノラミック・ビスタ・ルーフ)が広がる。 拡大

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