【F1 2021】メキシコシティGP続報:完勝のフェルスタッペン、19点リードで残り4戦へ

2021.11.08 自動車ニュース bg
F1第18戦メキシコシティGPを制したレッドブルのマックス・フェルスタッペン(写真左)。今季9勝目、メキシコではレコードとなる通算3勝目を記録した。3位にはチームメイトのセルジオ・ペレス(同右)が入り、メキシコ人として初の母国表彰台にサーキットは沸いた。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
F1第18戦メキシコシティGPを制したレッドブルのマックス・フェルスタッペン(写真左)。今季9勝目、メキシコではレコードとなる通算3勝目を記録した。3位にはチームメイトのセルジオ・ペレス(同右)が入り、メキシコ人として初の母国表彰台にサーキットは沸いた。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大

2021年11月7日(現地時間)、メキシコのアウトドローモ・エルマノス・ロドリゲスで行われたF1世界選手権第18戦メキシコシティGP。予選で劣勢の流れを変えフロントローを独占したメルセデス勢だったが、レースではレッドブルの速さがひときわ光り輝き、終始脇役に追いやられた。

プラクティス中はすこぶる快調、ポールシッター最有力候補だったレッドブルは、フェルスタッペン(写真先頭)が予選3位とまさかの結果となるも、レースでは安定した速さを披露。スタートでメルセデスの2台を抜きトップを奪うと、その後誰からもそのポジションを脅かされずに独走し、18戦目にして9勝目を飾った。これでルイス・ハミルトンに対するポイントリードは19点。「まだシーズンは先がある。もちろんこのリードはいいと思うが、事態は目まぐるしく変わるからね」と、残り4戦となったシーズンフィナーレに向けて気の緩みを許さなかった。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
プラクティス中はすこぶる快調、ポールシッター最有力候補だったレッドブルは、フェルスタッペン(写真先頭)が予選3位とまさかの結果となるも、レースでは安定した速さを披露。スタートでメルセデスの2台を抜きトップを奪うと、その後誰からもそのポジションを脅かされずに独走し、18戦目にして9勝目を飾った。これでルイス・ハミルトンに対するポイントリードは19点。「まだシーズンは先がある。もちろんこのリードはいいと思うが、事態は目まぐるしく変わるからね」と、残り4戦となったシーズンフィナーレに向けて気の緩みを許さなかった。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大
チームメイトのバルテリ・ボッタスとフロントローを分け合った予選2位のルイス・ハミルトン(写真)。フェルスタッペンらレッドブル勢を後ろに従えて迎えたレースでは、スタートでフェルスタッペンに出し抜かれてしまう。標高が高く空気が薄いメキシコのコースでは冷却も厳しくなり、前を取られると圧倒的に不利になる。ハミルトンはオーバーヒートという問題も抱えながらも、2位の座を狙うペレスからのプレッシャーに屈することなく2位のままフィニッシュ。「とにかく全力を出し切ったが、レッドブルは速かった」と負けを認めつつ、「バルテリ(ボッタス)はスタートでフェルスタッペンにスペースを与えてしまった」と、暗にチームメイトの失敗も指摘していた。(Photo=Mercedes)
チームメイトのバルテリ・ボッタスとフロントローを分け合った予選2位のルイス・ハミルトン(写真)。フェルスタッペンらレッドブル勢を後ろに従えて迎えたレースでは、スタートでフェルスタッペンに出し抜かれてしまう。標高が高く空気が薄いメキシコのコースでは冷却も厳しくなり、前を取られると圧倒的に不利になる。ハミルトンはオーバーヒートという問題も抱えながらも、2位の座を狙うペレスからのプレッシャーに屈することなく2位のままフィニッシュ。「とにかく全力を出し切ったが、レッドブルは速かった」と負けを認めつつ、「バルテリ(ボッタス)はスタートでフェルスタッペンにスペースを与えてしまった」と、暗にチームメイトの失敗も指摘していた。(Photo=Mercedes)拡大

予測困難かつ混戦模様の残り5戦

前戦アメリカGPでマックス・フェルスタッペンが今シーズン8勝目を飾り、ルイス・ハミルトンに対するリードを12点に広げた。メキシコシティGPを含む残り5戦で獲得できる最大のポイントは、優勝の25点×5=125点に、ファステストラップの1点×5=5点、さらに次のブラジルGP改めサンパウロGPで予定される、今年3度目にして最後のスプリント予選でポールを取れば3点、合計133点もあるのだから、タイトルの行方はまだまだ分からない。

また、今季最後の3連戦の締めくくりにはカタールGP、続く第21戦はサウジアラビアGPと、F1初開催の地が2つもあり、多分に不確定要素をはらんだラスト5戦となる。

そして、レッドブルとメルセデスによる、近年まれにみる接戦である。アメリカGPでは、メルセデス有利と思われながらもフェルスタッペンがポールを取り、レースではフェルスタッペンのタイヤセーブ能力により辛うじてハミルトンを抑えきったものの、チェッカードフラッグまで手に汗握る戦いが続いていた。

メキシコは、コースが標高2300mという高地にあるため気圧が低く、パワーに加えダウンフォースも激減する特殊な環境にある。セッティングで最大のダウンフォースを狙ったとしても得られるグリップはごくわずか。同じように最大限のダウンフォースを要求される今年のモナコGPではレッドブルが速く、メルセデスは絶不調と明暗が分かれたが、だからといってメキシコでレッドブルが強さを発揮するだろうという安易な予測はできなかった。

ホンダにとって、メキシコといえば1965年に「RA272」をドライブしたリッチー・ギンサーが初勝利した記念の場所。F1最終年も終盤に差しかかった第18戦、ホンダの集大成の走りを見せることができたか。

「チェコ」の愛称で親しまれるメキシコのヒーロー、ペレス(写真)。母国で自身初ポールを狙ったものの、最後のアタック中に前の角田裕毅に近づきすぎダウンフォースを失い、アルファタウリとともにコースオフ、予選4位とやや残念な結果に。気を持ち直して臨んだレースでは、ボッタスの脱落で3位に上がり、2位ハミルトンをゴールまで追ったものの抜けずに3位。「1-2フィニッシュできなかったのはちょっと残念だ」とは言いつつ、メキシコ人初の母国表彰台に沸く観衆の声援に応える力走を披露した。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
「チェコ」の愛称で親しまれるメキシコのヒーロー、ペレス(写真)。母国で自身初ポールを狙ったものの、最後のアタック中に前の角田裕毅に近づきすぎダウンフォースを失い、アルファタウリとともにコースオフ、予選4位とやや残念な結果に。気を持ち直して臨んだレースでは、ボッタスの脱落で3位に上がり、2位ハミルトンをゴールまで追ったものの抜けずに3位。「1-2フィニッシュできなかったのはちょっと残念だ」とは言いつつ、メキシコ人初の母国表彰台に沸く観衆の声援に応える力走を披露した。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大

メルセデス、驚きの形勢逆転劇でフロントロー独占

3回のプラクティスのうち2回目と3回目はレッドブルがトップを取り、特に予選直前の3回目では0.651秒遅れでハミルトンが3位と、レッドブルが優勢を保ち予選へ。しかし、温度上昇とともに急に安定感と速さを増したメルセデス勢が、その勢いを止めたのだった。当人たちも驚く形勢逆転劇で、バルテリ・ボッタスが今季3度目のポールポジションを奪い、その0.145秒差でハミルトンが2位。メルセデスがフロントローを独占してしまったのだ。

一方のレッドブルはまさかの2列目。フェルスタッペンはポールに0.350秒およばず3位、地元の大声援を受けたセルジオ・ペレスは4位だった。最後のアタック、ペレスが前を行き、フェルスタッペンにスリップストリームを使わせようとしていたのだが、2台の前にいたアルファタウリの角田裕毅が道を譲ろうとわざわざコースを外れ、角田の後ろでダウンフォースを失ったというペレスもコースオフ、さらにイエローフラッグを気にしてフェルスタッペンもペースを落としてしまった。この混乱で最後のラップは不発に終わったレッドブルだったが、そもそも予選が進むにつれてタイヤのグリップ不足が起きていたことも事実であった。

パワーユニット交換によるグリッド降格が決まっていた角田は3戦連続してQ3に進出、自身は9位から17番グリッドに落ちるも、ピエール・ガスリーにスリップストリームを与えて、チームメイトを予選5位に導いた。フェラーリ勢は、カルロス・サインツJr.6位、シャルル・ルクレール8位。その最大のライバルであるマクラーレンは、ダニエル・リカルドが7位に食い込むも、ランド・ノリスはパワーユニット交換で18番グリッドに降格した。アストンマーティンのセバスチャン・ベッテルが繰り上がって9番グリッド、アルファ・ロメオのキミ・ライコネンは10番グリッドからレースに臨むこととなった。

アルファタウリの角田裕毅(写真)は、パワーユニット交換によるグリッド降格というハンディを背負うも、初日から上位に食い込む速さを見せ、3戦連続して予選Q3に進出。ピエール・ガスリーにスリップストリームを使わせ、チームメイトの予選5位獲得に貢献した。しかしレースとなると、スタート直後の混乱に巻き込まれ、アルピーヌのエステバン・オコンとの接触で0周リタイア。同じレッドブル系ドライバーのアレクサンダー・アルボンをメンターに、後半戦は安定感を増してきている角田にとっては惜しい結果となった。一方ガスリーは、レッドブル、メルセデスに次ぐ4位入賞を果たし、アルファタウリは、コンストラクターズランキングで5位アルピーヌに同点で並ぶこととなった。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
アルファタウリの角田裕毅(写真)は、パワーユニット交換によるグリッド降格というハンディを背負うも、初日から上位に食い込む速さを見せ、3戦連続して予選Q3に進出。ピエール・ガスリーにスリップストリームを使わせ、チームメイトの予選5位獲得に貢献した。しかしレースとなると、スタート直後の混乱に巻き込まれ、アルピーヌのエステバン・オコンとの接触で0周リタイア。同じレッドブル系ドライバーのアレクサンダー・アルボンをメンターに、後半戦は安定感を増してきている角田にとっては惜しい結果となった。一方ガスリーは、レッドブル、メルセデスに次ぐ4位入賞を果たし、アルファタウリは、コンストラクターズランキングで5位アルピーヌに同点で並ぶこととなった。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大

スタートで3台横並び フェルスタッペンがトップに

メキシコは、ロシアに次いでスタート後のストレートが1km近くと長い。この直線勝負を制し、勝利を手繰り寄せたのがフェルスタッペンだった。

71周レースのスタートでは、メルセデスの2台にフェルスタッペンを加えた3台が横並びとなり、最もアウト側にいたフェルスタッペンが、ブレーキングを遅らせてトップ奪取に成功した。メルセデス勢は、フェルスタッペンの進路を2台でふさぐという作戦だったが、真ん中のボッタスが不用意にスペースを空けてしまったのがまずいけなかった。さらにボッタスはリカルドと接触、大きく順位を落とし、シルバーアローの陣営は戦略上の大事な1台を失ってしまった。

その後ろでは、2位ハミルトン、3位ペレス、4位ガスリー、5位ルクレールと続くも、エステバン・オコンを挟むようなかたちで、角田裕毅のアルファタウリ、そしてミック・シューマッハーのハースがともにアルピーヌと接触しセーフティーカー。今週末好調だった角田は惜しくもここでリタイアを喫した。

5周目にレース再開。1位フェルスタッペン、2位ハミルトン、3位ペレスと、レッドブルの2台にサンドイッチされた孤軍奮闘のハミルトンは、作戦上も一気に不利な立場に追いやられたが、しかしボッタスが上位に残っていたとしても戦況は好転していなかったかもしれない。それほどこの日のレッドブルの走りは盤石で、前方がクリアなフェルスタッペンは10周して3.3秒、15周目には5.5秒とリードを広げ、ハミルトンは無線で思わず「彼らは速すぎる」とこぼすほどだった。

さらに3位ペレスも元気だった。「ハミルトンとの差を詰めよ」との無線の指示に、2秒あったギャップを1.5秒まで縮め、後方からチームメイトを援護。メルセデスは30周目にハミルトンをピットに呼び、ミディアムタイヤからハードに交換、第2スティントに望みをつなげたのだが、ハミルトンの苦戦は続くことになる。

この週末、フェラーリをけん引したのはカルロス・サインツJr.(写真)で、予選でも6位と好位置を獲得。シャルル・ルクレールはグリップしないマシンに悩み8位からスタートすることとなったが、レースではルクレールが5位、サインツJr.6位でゴール。両ドライバーのダブル入賞に加え、コンストラクターズランキング3位の座を争うマクラーレンが苦戦したこともあり、3.5点あった差を逆転させ、13.5点差でフェラーリが3位に上がった。(Photo=Ferrari)
この週末、フェラーリをけん引したのはカルロス・サインツJr.(写真)で、予選でも6位と好位置を獲得。シャルル・ルクレールはグリップしないマシンに悩み8位からスタートすることとなったが、レースではルクレールが5位、サインツJr.6位でゴール。両ドライバーのダブル入賞に加え、コンストラクターズランキング3位の座を争うマクラーレンが苦戦したこともあり、3.5点あった差を逆転させ、13.5点差でフェラーリが3位に上がった。(Photo=Ferrari)拡大
コンストラクターズランキング3位だったマクラーレンは、フェラーリに3.5点差と近づかれていたが、メキシコで逆転を許すことになる。ダニエル・リカルドがフェラーリの間に割って入る予選7位を取るも、スタートでボッタスと接触しポイント圏外にはじき出され12位完走、無得点に終わった。僚友ランド・ノリス(写真)は、パワーユニット交換による降格で後方18番グリッドからスタート。45周目まで長い第1スティントを走り、10位入賞で1点を追加。コンストラクターズランキングは4位に落ちてしまった。(Photo=McLaren)
コンストラクターズランキング3位だったマクラーレンは、フェラーリに3.5点差と近づかれていたが、メキシコで逆転を許すことになる。ダニエル・リカルドがフェラーリの間に割って入る予選7位を取るも、スタートでボッタスと接触しポイント圏外にはじき出され12位完走、無得点に終わった。僚友ランド・ノリス(写真)は、パワーユニット交換による降格で後方18番グリッドからスタート。45周目まで長い第1スティントを走り、10位入賞で1点を追加。コンストラクターズランキングは4位に落ちてしまった。(Photo=McLaren)拡大

レッドブル1-3、ホンダがトップ4に3台

フェルスタッペンがミディアムからハードに履き替えたのは34周目のこと。これで暫定トップとなったペレスは、持ち前のタイヤマネジメント力を発揮し、スタート時に履いていたミディアムで40周目まで力走しピットイン。これで1位フェルスタッペン、9.5秒後方に2位ハミルトン、さらに9.8秒遅れて3位ペレスという順位となった。

レッドブルとしては、ハミルトンより10周分フレッシュなハードタイヤを履くペレスに仕事をさせ、1-2を狙いたいところ。実際、残り20周で2位ハミルトンと3位ペレスの差は5秒台まで縮まり、あと15周で2秒、そしてラスト11周になって1秒を切ってきた。

「タイヤもエンジンも問題なし」とするレッドブル陣営に対し、「タイヤがオーバーヒートしてる」と訴えるハミルトン。サーキットに詰めかけた大観衆は力強い声援で母国のヒーローの背中を押すも、相手は7冠王者、しぶとさは折り紙付きである。結局、敵なしのフェルスタッペンは16.5秒もの大差をつけ今季18戦して9勝目を飾り、ハミルトンは1.2秒差で2位を死守。ペレスはメキシコ人初の母国表彰台を決め、観客は狂喜乱舞するのであった。

2列目スタートから1-3フィニッシュ。1-2はならずとも、予選での大敗から一転、レッドブルはそのポテンシャルを最大限に生かして快勝を遂げた。フェルスタッペンのポイントリードは12点から19点に拡大。そしてコンストラクターズチャンピオンシップでは、レッドブルが首位メルセデスに1点差まで詰め寄ることができた。

笑顔のレッドブル陣営に比べ、完敗のメルセデスは当然沈みがち。「とにかく全力で走った」というハミルトンにはなすすべがなかった。チームはポイント圏外にいたボッタスに新しいソフトタイヤを与え、それまでフェルスタッペンが持っていたファステストラップのボーナス1点獲得を阻止するぐらいしか手だてがなく、これが結果的にコンストラクターズランキング首位を、たった1点で守っている状況につながっている。

そして、ホンダにとってはF1最終年で1-3表彰台、さらにガスリーが力走して4位フィニッシュと、トップ4に4台が入るという結果でメキシコをあとにすることとなった。今季これまで標高の高いレッドブル・リンク、スパ・フランコルシャンで勝利しているホンダ。高地で強いというならば、800mの標高に位あるブラジル、サンパウロにも期待が持てそうだが、混戦の2021年シーズンはどのようなクライマックスを用意しているのか。

今年最後の3連戦の真ん中はそのサンパウロGP。決勝は11月14日に行われる。

(文=bg) 

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