【F1 2021】メキシコシティGP続報:完勝のフェルスタッペン、19点リードで残り4戦へ
2021.11.08 自動車ニュース![]() |
2021年11月7日(現地時間)、メキシコのアウトドローモ・エルマノス・ロドリゲスで行われたF1世界選手権第18戦メキシコシティGP。予選で劣勢の流れを変えフロントローを独占したメルセデス勢だったが、レースではレッドブルの速さがひときわ光り輝き、終始脇役に追いやられた。
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予測困難かつ混戦模様の残り5戦
前戦アメリカGPでマックス・フェルスタッペンが今シーズン8勝目を飾り、ルイス・ハミルトンに対するリードを12点に広げた。メキシコシティGPを含む残り5戦で獲得できる最大のポイントは、優勝の25点×5=125点に、ファステストラップの1点×5=5点、さらに次のブラジルGP改めサンパウロGPで予定される、今年3度目にして最後のスプリント予選でポールを取れば3点、合計133点もあるのだから、タイトルの行方はまだまだ分からない。
また、今季最後の3連戦の締めくくりにはカタールGP、続く第21戦はサウジアラビアGPと、F1初開催の地が2つもあり、多分に不確定要素をはらんだラスト5戦となる。
そして、レッドブルとメルセデスによる、近年まれにみる接戦である。アメリカGPでは、メルセデス有利と思われながらもフェルスタッペンがポールを取り、レースではフェルスタッペンのタイヤセーブ能力により辛うじてハミルトンを抑えきったものの、チェッカードフラッグまで手に汗握る戦いが続いていた。
メキシコは、コースが標高2300mという高地にあるため気圧が低く、パワーに加えダウンフォースも激減する特殊な環境にある。セッティングで最大のダウンフォースを狙ったとしても得られるグリップはごくわずか。同じように最大限のダウンフォースを要求される今年のモナコGPではレッドブルが速く、メルセデスは絶不調と明暗が分かれたが、だからといってメキシコでレッドブルが強さを発揮するだろうという安易な予測はできなかった。
ホンダにとって、メキシコといえば1965年に「RA272」をドライブしたリッチー・ギンサーが初勝利した記念の場所。F1最終年も終盤に差しかかった第18戦、ホンダの集大成の走りを見せることができたか。
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メルセデス、驚きの形勢逆転劇でフロントロー独占
3回のプラクティスのうち2回目と3回目はレッドブルがトップを取り、特に予選直前の3回目では0.651秒遅れでハミルトンが3位と、レッドブルが優勢を保ち予選へ。しかし、温度上昇とともに急に安定感と速さを増したメルセデス勢が、その勢いを止めたのだった。当人たちも驚く形勢逆転劇で、バルテリ・ボッタスが今季3度目のポールポジションを奪い、その0.145秒差でハミルトンが2位。メルセデスがフロントローを独占してしまったのだ。
一方のレッドブルはまさかの2列目。フェルスタッペンはポールに0.350秒およばず3位、地元の大声援を受けたセルジオ・ペレスは4位だった。最後のアタック、ペレスが前を行き、フェルスタッペンにスリップストリームを使わせようとしていたのだが、2台の前にいたアルファタウリの角田裕毅が道を譲ろうとわざわざコースを外れ、角田の後ろでダウンフォースを失ったというペレスもコースオフ、さらにイエローフラッグを気にしてフェルスタッペンもペースを落としてしまった。この混乱で最後のラップは不発に終わったレッドブルだったが、そもそも予選が進むにつれてタイヤのグリップ不足が起きていたことも事実であった。
パワーユニット交換によるグリッド降格が決まっていた角田は3戦連続してQ3に進出、自身は9位から17番グリッドに落ちるも、ピエール・ガスリーにスリップストリームを与えて、チームメイトを予選5位に導いた。フェラーリ勢は、カルロス・サインツJr.6位、シャルル・ルクレール8位。その最大のライバルであるマクラーレンは、ダニエル・リカルドが7位に食い込むも、ランド・ノリスはパワーユニット交換で18番グリッドに降格した。アストンマーティンのセバスチャン・ベッテルが繰り上がって9番グリッド、アルファ・ロメオのキミ・ライコネンは10番グリッドからレースに臨むこととなった。
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スタートで3台横並び フェルスタッペンがトップに
メキシコは、ロシアに次いでスタート後のストレートが1km近くと長い。この直線勝負を制し、勝利を手繰り寄せたのがフェルスタッペンだった。
71周レースのスタートでは、メルセデスの2台にフェルスタッペンを加えた3台が横並びとなり、最もアウト側にいたフェルスタッペンが、ブレーキングを遅らせてトップ奪取に成功した。メルセデス勢は、フェルスタッペンの進路を2台でふさぐという作戦だったが、真ん中のボッタスが不用意にスペースを空けてしまったのがまずいけなかった。さらにボッタスはリカルドと接触、大きく順位を落とし、シルバーアローの陣営は戦略上の大事な1台を失ってしまった。
その後ろでは、2位ハミルトン、3位ペレス、4位ガスリー、5位ルクレールと続くも、エステバン・オコンを挟むようなかたちで、角田裕毅のアルファタウリ、そしてミック・シューマッハーのハースがともにアルピーヌと接触しセーフティーカー。今週末好調だった角田は惜しくもここでリタイアを喫した。
5周目にレース再開。1位フェルスタッペン、2位ハミルトン、3位ペレスと、レッドブルの2台にサンドイッチされた孤軍奮闘のハミルトンは、作戦上も一気に不利な立場に追いやられたが、しかしボッタスが上位に残っていたとしても戦況は好転していなかったかもしれない。それほどこの日のレッドブルの走りは盤石で、前方がクリアなフェルスタッペンは10周して3.3秒、15周目には5.5秒とリードを広げ、ハミルトンは無線で思わず「彼らは速すぎる」とこぼすほどだった。
さらに3位ペレスも元気だった。「ハミルトンとの差を詰めよ」との無線の指示に、2秒あったギャップを1.5秒まで縮め、後方からチームメイトを援護。メルセデスは30周目にハミルトンをピットに呼び、ミディアムタイヤからハードに交換、第2スティントに望みをつなげたのだが、ハミルトンの苦戦は続くことになる。
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レッドブル1-3、ホンダがトップ4に3台
フェルスタッペンがミディアムからハードに履き替えたのは34周目のこと。これで暫定トップとなったペレスは、持ち前のタイヤマネジメント力を発揮し、スタート時に履いていたミディアムで40周目まで力走しピットイン。これで1位フェルスタッペン、9.5秒後方に2位ハミルトン、さらに9.8秒遅れて3位ペレスという順位となった。
レッドブルとしては、ハミルトンより10周分フレッシュなハードタイヤを履くペレスに仕事をさせ、1-2を狙いたいところ。実際、残り20周で2位ハミルトンと3位ペレスの差は5秒台まで縮まり、あと15周で2秒、そしてラスト11周になって1秒を切ってきた。
「タイヤもエンジンも問題なし」とするレッドブル陣営に対し、「タイヤがオーバーヒートしてる」と訴えるハミルトン。サーキットに詰めかけた大観衆は力強い声援で母国のヒーローの背中を押すも、相手は7冠王者、しぶとさは折り紙付きである。結局、敵なしのフェルスタッペンは16.5秒もの大差をつけ今季18戦して9勝目を飾り、ハミルトンは1.2秒差で2位を死守。ペレスはメキシコ人初の母国表彰台を決め、観客は狂喜乱舞するのであった。
2列目スタートから1-3フィニッシュ。1-2はならずとも、予選での大敗から一転、レッドブルはそのポテンシャルを最大限に生かして快勝を遂げた。フェルスタッペンのポイントリードは12点から19点に拡大。そしてコンストラクターズチャンピオンシップでは、レッドブルが首位メルセデスに1点差まで詰め寄ることができた。
笑顔のレッドブル陣営に比べ、完敗のメルセデスは当然沈みがち。「とにかく全力で走った」というハミルトンにはなすすべがなかった。チームはポイント圏外にいたボッタスに新しいソフトタイヤを与え、それまでフェルスタッペンが持っていたファステストラップのボーナス1点獲得を阻止するぐらいしか手だてがなく、これが結果的にコンストラクターズランキング首位を、たった1点で守っている状況につながっている。
そして、ホンダにとってはF1最終年で1-3表彰台、さらにガスリーが力走して4位フィニッシュと、トップ4に4台が入るという結果でメキシコをあとにすることとなった。今季これまで標高の高いレッドブル・リンク、スパ・フランコルシャンで勝利しているホンダ。高地で強いというならば、800mの標高に位あるブラジル、サンパウロにも期待が持てそうだが、混戦の2021年シーズンはどのようなクライマックスを用意しているのか。
今年最後の3連戦の真ん中はそのサンパウロGP。決勝は11月14日に行われる。
(文=bg)