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ホンダ・シビックLX(FF/CVT)

これぞシビック 2021.12.01 試乗記 フルモデルチェンジしたホンダのグローバルコンパクトカー「シビック」に試乗。2040年には内燃機関を全廃するという同社だが、ハイブリッドに先駆け発売された1.5リッター直4ターボモデルのステアリングを握り、エンジン屋の誇りを確かめた。

こんな二枚舌は大歓迎

新型シビックが走りだした。先代はハッチバックとセダンだったが、11代目の日本仕様はハッチバックのみ。でも、大正解だと思う。

樹脂製の大きなテールゲートを持つハッチバックは、斜め後ろから見ると、思わず目を奪われるほどきれいでカッコイイ。弓なりのショルダーラインを見ていて思い出したのは、80年代に人気を博したスポーツクーペ「CR-X」だった。試乗車がまとう「ソニックグレーパール」と呼ばれるマットっぽいブルーグレーのボディーカラーも、このカタチによく似合っている。

2022年にはハイブリッドの「e:HEV」も出ると予告されているが、第1弾は1.5リッター4気筒ターボである。新型「ヴェゼル」だと、純エンジンモデルはイタリアのバール(カフェ)における紅茶みたいな扱いになっているのに、シビックの場合、エスプレッソにあたるe:HEVはあと回しになる。

しかも、今度の純エンジンモデルには、先代に引き続き、MTモデルも残されている。2040年にはハイブリッドを含むエンジン車を全廃するといち早く宣言した日本車メーカーにしては、ちょっと腰が引けてるように思えるが、こういう二枚舌なら大歓迎だ。見るべきは未来でも、われわれは現実を生きている。クルマは“買い物”で、買えないものをつくられても困るのである。

試乗したのは2グレードあるうちの標準モデル「LX」のCVT(319万円)である。

2021年8月5日に発表された最新の「ホンダ・シビック」。同年9月3日に販売が開始された。1972年に登場した初代から数え、今回のモデルが11代目となる。
2021年8月5日に発表された最新の「ホンダ・シビック」。同年9月3日に販売が開始された。1972年に登場した初代から数え、今回のモデルが11代目となる。拡大
ホンダは北米市場で「シビック」の「セダン」と「ハッチバック」を販売しているが、日本ではハッチバックのみを導入。大きく開くテールゲートは、自由な造形のために樹脂製とされた。
ホンダは北米市場で「シビック」の「セダン」と「ハッチバック」を販売しているが、日本ではハッチバックのみを導入。大きく開くテールゲートは、自由な造形のために樹脂製とされた。拡大
ハニカムメッシュのフロントグリルと9灯式のフルLEDヘッドランプが組み込まれたフロントマスク。今回の試乗車のボディーカラーは「ソニックグレーパール」と呼ばれる有償色で、これを含め外装色は全5種類から選択できる。
ハニカムメッシュのフロントグリルと9灯式のフルLEDヘッドランプが組み込まれたフロントマスク。今回の試乗車のボディーカラーは「ソニックグレーパール」と呼ばれる有償色で、これを含め外装色は全5種類から選択できる。拡大
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4550×1800×1415mm、ホイールベースは2735mm。従来モデルより全長が30mm、ホイールベースが35mm延ばされている。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4550×1800×1415mm、ホイールベースは2735mm。従来モデルより全長が30mm、ホイールベースが35mm延ばされている。拡大

緻密なインテリアの造形

新型の謳い文句は「爽快シビック」だ。今どきまたずいぶんベタなキャッチフレーズだなあと思ったが、走りだすと、そのとおりだった。新型シビックはファーストタッチから実にさわやかなクルマである。

まず、低く構えた低重心感がイイ。この感じは、上級セダンの現行「アコード」にもあるが、シビックはさらにそれを極めていて、しかも身のこなしが軽い。ライトウェイトスポーツカー的な低さと軽さすら感じさせる。

さわやかな運転感覚は、コックピットの居住まいからもきている。まっすぐで細い左右フロントピラーのおかげで、前方の視野が隅々まで広い。このあたりのしつらえは「心地よさ」を謳った現行「フィット」譲りである。取り付け位置を後退させて、ドアに直付けしたドアミラーに右折時の死角が少ないのもうれしい。

シンプルなアナログ表示の計器盤や水平基調のダッシュボードもすっきりさわやかだ。新趣向は助手席側まで延びる横長のハニカムパネルで、エアコン吹き出し口はその奥に隠れている。

先代のシビックハッチバックはイギリスからのお取り寄せだったが、英国生産の撤退で新型は埼玉県の寄居工場でつくられる。インチの国では気にならなかったんですけど的に、旧型で散見されたデザインやつくりの大雑把さはすっかりなくなった。

すっきりとデザインされた水平基調のコックピットまわり。インフォテインメントシステム「Honda CONNECT」を内蔵する9インチ液晶ディスプレイは、全車に標準で装備されるアイテム。
すっきりとデザインされた水平基調のコックピットまわり。インフォテインメントシステム「Honda CONNECT」を内蔵する9インチ液晶ディスプレイは、全車に標準で装備されるアイテム。拡大
フロントドアのアウターパネルに取り付けられたドアミラー。車内からの視界の確保と、死角の削減に役立っている。
フロントドアのアウターパネルに取り付けられたドアミラー。車内からの視界の確保と、死角の削減に役立っている。拡大
上級モデル「EX」が10.2インチのフル液晶パネルであるの対して、今回試乗した「LX」では、7インチの液晶パネルとアナログスピードメーターの組み合わせとなる。
上級モデル「EX」が10.2インチのフル液晶パネルであるの対して、今回試乗した「LX」では、7インチの液晶パネルとアナログスピードメーターの組み合わせとなる。拡大
エアコン吹き出し口のルーバーは、インストゥルメントパネル表面に見えるパンチングメタルガーニッシュの奥におさめられている。
エアコン吹き出し口のルーバーは、インストゥルメントパネル表面に見えるパンチングメタルガーニッシュの奥におさめられている。拡大

フレンチコンパクトにあと一歩

1.5リッター直列4気筒ターボは先代からのキャリーオーバーである。182PSの最高出力や240N・mの最大トルクなど、アウトプットもほぼ同じだ。

ボア×ストローク=73.0×89.4mmというロングストロークユニットのわりに、グイグイくるトルク型のエンジンではないが、もともとそんなタイプはホンダのコンパクトエンジンにはなかったか。1360kgのボディーを軽快に走らせるパワーユニットである。

CVTには7段のステップが切られていて、フルスロットルで加速すると、有段変速する。Dレンジで走行中にシフトパドルを引けば、D7に替わり、DCTやスポーツATのようなマニュアルモードで走れる。だが、シフトアップやシフトダウン時のダイレクト感はCVTだと限界がある。と思ったら6段MTも選べるのがシビックのいいところだ。

ピターッと低いシビックは、当然、曲がりもファン・トゥ・ドライブである。標準グレードのLXでも、18インチホイールの見た目が変わるだけで、235/40のタイヤサイズは上級グレードの「EX」と変わらない。

ただ、新型シビックで残念なのは高速域での乗り心地だ。タウンスピードでは問題なく快適なのに、高速道路での継ぎ目通過など、入力が大きくなると、サスペンションのストローク感が売り切れて、乗り心地の落ち込みが大きい。

さわやかに意のままに走れるという点では、「ルノー・ルーテシア」や「プジョー208」に似ていると思ったが、足まわりのフトコロの深さはフレンチコンパクトに及ばないと感じた。

1.5リッター直4直噴ターボ「L15C」型エンジンは、最高出力182PS/6000rpm、最大トルク240N・m/1700-4500rpmを発生。従来型ユニットをベースに、加速応答性とリニアな出力特性に磨きをかけたという。
1.5リッター直4直噴ターボ「L15C」型エンジンは、最高出力182PS/6000rpm、最大トルク240N・m/1700-4500rpmを発生。従来型ユニットをベースに、加速応答性とリニアな出力特性に磨きをかけたという。拡大
CVTレシオとエンジン回転数を段階的に制御することで、有段トランスミッションのような変速を実現するCVTを搭載。シフトレバー後方に「SPORT/Normal/ECON」の3つのモードを切り替えられるドライブモードスイッチが配置される。
CVTレシオとエンジン回転数を段階的に制御することで、有段トランスミッションのような変速を実現するCVTを搭載。シフトレバー後方に「SPORT/Normal/ECON」の3つのモードを切り替えられるドライブモードスイッチが配置される。拡大
今回の試乗車は、「LX」グレードに標準で装備される10本スポークデザインのアルミホイールに、235/40R18サイズの「グッドイヤー・イーグルF1アシンメトリック2」タイヤを組み合わせていた。
今回の試乗車は、「LX」グレードに標準で装備される10本スポークデザインのアルミホイールに、235/40R18サイズの「グッドイヤー・イーグルF1アシンメトリック2」タイヤを組み合わせていた。拡大
先代モデルにも使用されていた新世代プラットフォームをブラッシュアップ。高剛性の軽量素材や構造用接着剤が拡大採用された。サスペンションは従来型と同じく前ストラット式、後ろマルチリンク式となっている。
先代モデルにも使用されていた新世代プラットフォームをブラッシュアップ。高剛性の軽量素材や構造用接着剤が拡大採用された。サスペンションは従来型と同じく前ストラット式、後ろマルチリンク式となっている。拡大

ターボエンジンの魅力は健在

ワンモーションアーチラインの屋根の下は、後席にも十分なスペースが確保されている。座面が高くて見晴らしがいい分、頭上空間にそれほど余裕はないものの、足もとは広い。

荷室の面積もたっぷりしている。テールゲートはルーフの奥まった位置から開くので、開口面積が大きく、かさのある重量物の出し入れもやりやすい。

荷室を隠すトノカバーはロール式で、横方向に伸ばして、持ち手を右の側壁に引っ掛ける。グッドアイデアだなと思ったが、何度か伸縮させたら巻き取り機構がスタックして、引き込まれなくなってしまった。

約360kmを走って、燃費は10.9km(満タン法)だった。パワフルさの実感からすると、もう少し走ってもいいかなと思った。「タイプR」ならともかく、ノーマルシビックで無鉛ハイオク指定というのも先代からの難点だ。燃料経済性のアドバンテージは、来るハイブリッドにおまかせ、ということなのかもしれないが。

だが、e:HEVが加わっても、この1.5リッターターボモデルの魅力はあせないような気がする。低さと軽さがもたらすドライブフィールの新鮮さは、2021年に出たクルマのなかでも白眉だと思う。

百聞は一乗にしかず。クルマ好きなら、ディーラーなどで試乗してみることをお勧めします。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

「シビックLX」の前席。「プライムスムース」と呼ばれるしっとりとした質感の素材とファブリックのコンビネーション表皮が採用される。
「シビックLX」の前席。「プライムスムース」と呼ばれるしっとりとした質感の素材とファブリックのコンビネーション表皮が採用される。拡大
前席との距離を35mm広げ、後席の居住空間を拡大。ルーフの高さは先代モデルよりも50mm下げられたが、ヘッドクリアランスは同等で、快適性は損なわれていないという。
前席との距離を35mm広げ、後席の居住空間を拡大。ルーフの高さは先代モデルよりも50mm下げられたが、ヘッドクリアランスは同等で、快適性は損なわれていないという。拡大
荷室と荷室下収納を合わせた容量は、クラストップレベルとなる452リッター。ロールスクリーン式のカーゴエリアカバーが標準で装備される。
荷室と荷室下収納を合わせた容量は、クラストップレベルとなる452リッター。ロールスクリーン式のカーゴエリアカバーが標準で装備される。拡大
低さと軽さがもたらすドライブフィールが新型「シビック」の美点。そのハンドリングは、フレンチホットハッチの味つけにも似ている。
低さと軽さがもたらすドライブフィールが新型「シビック」の美点。そのハンドリングは、フレンチホットハッチの味つけにも似ている。拡大

テスト車のデータ

ホンダ・シビックLX

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4550×1800×1415mm
ホイールベース:2735mm
車重:1360kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:182PS(134kW)/6000rpm
最大トルク:240N・m(24.5kgf・m)/1700-4500rpm
タイヤ:(前)235/40R18 95Y/(後)235/40R18 95Y(グッドイヤー・イーグルF1アシンメトリック2)
燃費:16.3km/リッター(WLTCモード)
価格:319万円/テスト車=322万8500円
オプション装備:ボディーカラー<ソニックグレーパール>(3万8500円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー フロント用 16GBキット<DRH-204WD>(3万9600円)/フロアカーペットマット<プレミアムタイプ>(4万8400円)

テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:3949km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(5)/山岳路(3)
テスト距離:356.2km
使用燃料:32.7リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.9km/リッター(満タン法)/11.7km/リッター(車載燃費計計測値)

ホンダ・シビックLX
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