ルノー・日産・三菱自動車アライアンスが将来戦略を発表 EVとコネクテッド技術に注力

2022.01.28 自動車ニュース webCG 編集部
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ルノー・日産・三菱自動車アライアンスは2022年1月27日、2030年へ向けたロードマップに関するオンライン記者会見を開催。プラットフォームの共用化や、電気自動車(EV)、コネクテッド技術といった、各分野における戦略を発表した。

三菱が“ルノー製”の新型車を欧州に投入

記者会見には、ルノーの会長であるジャン・ドミニク・スナール氏をはじめ、ルノーのルカ・デメオCEO、日産自動車の内田 誠社長兼CEO、三菱自動車の加藤隆雄社長兼CEOらが参加。主にEVとコネクテッドモビリティーの分野について注力することが発表された。

商品開発の分野では、2020年5月に発表した「リーダーとフォロワー」の枠組みを強化。車種ごとにアライアンス内での共用化の度合いを定めた「Smart Differentiation(スマート差別化)」の取り組みを推し進めることで、プラットフォームの共用化率を現在の60%から2026年には80%以上に高めるとしている。

その取り組みの一環として、三菱はルノーと主要コンポーネンツを共有する2車種の新型車を欧州に投入。2023年の早い段階でルノーの最量販車種をベースにした新型「ASX」(日本名「RVR」)を、同年の終わりごろにさらにもう一台のモデルを投入し、欧州でのプレゼンスを高めていくと表明した。

競争力の高いコンパクトカー用EVプラットフォームを開発

パワートレイン電動化の分野では、今後5年間で総額230億ユーロ以上の投資を実施。2030年までに35車種の新型EVを投入するとしている。これらの新型車のうち、90%以上の車種には5つの共用EVプラットフォームが採用される予定で、既存のコンパクトカー用プラットフォーム「CMF-AEV」や商用車用の「LCV(小型商用車)EV専用プラットフォーム」に加え、本年中に、日本で販売される軽規格のEVによって「軽EVプラットフォーム」が、「日産アリア」や「ルノー・メガーヌE-Techエレクトリック」によって「CMF-EV」が実用化されることとなる。

このうち、CMF-EVにはEVのパワートレインに求められるすべての要素を統合・最適化した高性能な新型モーターや超薄型バッテリーを搭載。同プラットフォームは2030年までに15車種以上の新型車に採用され、最大で年間150万台が生産される計画だ。

さらに2024年には、新開発のコンパクトEV用プラットフォーム「CMF-BEV」が市場投入される。優れた空力性能を実現するというCMF-BEVは、現行の「ルノー・ゾエ」より消費電力を10%以上改善し、最大で400kmの航続距離を実現。同時に、ゾエより33%コストを低減できるとしている。このプラットフォームはルノー、アルピーヌ、日産の各ブランドで年間25万台分のEVのベースとなり、そこにはルノーの新型「R5」や、「日産マイクラ」の後継を担う新型コンパクトEVも含まれている。後者については日産がデザインを、ルノーが開発を担当し、フランス北部の「ルノー・エレクトリシティー」での生産が予定されている。

さらに、今後投入するEVにおいて高い競争力を実現するため、ルノーと日産はコアマーケットで共通のバッテリーサプライヤーを選択すると発表。共通のパートナー企業と協業してスケールメリットを高め、バッテリーコストを2026年に50%、2028年には65%削減するとともに、2030年までにアライアンス合計で220GWhのEV用バッテリー生産能力を確保すると発表した。

新技術の分野では、日産がリーダーとなって全固体電池(ASSB)の研究開発を推進。今日の液体リチウムイオンバッテリーと比べて、エネルギー密度を2倍に高めるとともに、充電時間を3分の1に短縮し、EVの利便性向上を図るという。このASSBについて、日産は2024年に横浜にパイロット工場を新設。2028年半ばまでに量産を開始し、将来的に1kWhあたり65ドルまでコストを下げることで、内燃機関車と同等の価格競争力を実現するとしている。

コネクテッドカーによって新しい価値を創造

EVの分野に加え、ルノー・日産・三菱自動車アライアンスでは自動車の知能化、デジタル化の分野でも技術を共有。プラットフォームと電子システムの共用化により、2026年までに45車種に運転支援技術を搭載し、1000万台以上を販売するとしている。

またコネクテッドモビリティーの分野では、2026年までに年間500万台以上の車両にクラウドシステムを搭載すると表明。今日においても、すでに300万台以上の車両が同アライアンスのクラウドとデータをやり取りしているが、上述の計画により、将来的にはマーケットを走る計2500万台の車両が、同クラウドにつながることとなる。またルノー・日産・三菱自動車アライアンスは、世界で初めて米グーグルのデジタルエコシステムを車両に搭載することも発表した。

これらの分野では、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転に関しては日産が開発のリーダーとなる一方で、電気・電子アーキテクチャーはルノーが技術開発を主導。電子機器のハードウエアとソフトウエアのアプリケーションを統合した一体型のアーキテクチャーを開発することで、パフォーマンスの最適化を図るという。

またソフトウエアに関しては、OTA(Over The Air)によるライフサイクル全体を通しての車両のパフォーマンスアップについても言及。モノやユーザー、インフラとの通信を可能とするコネクテッドモビリティーが、アライアンスの各社に新たな価値創造の機会を創出するとの説明がなされた。

中国ジーリーとのパートナーシップについても説明

プレゼンテーションの後に行われた質疑応答では、2021年8月に発表されたルノーと中国・浙江吉利控股集団(ジーリーホールディンググループ)との提携についても説明された。

ルノーがジーリーとの協業により、韓国のルノーサムスンでハイブリッドカーを生産するというこの発表は、ルノー・日産・三菱自動車アライアンスが追求するプラットフォームの共用化や、「リーダーとフォロワー」の枠組みなどから外れたものとなっている。

この施策についてルノーのデメオCEOは、日産の韓国市場撤退によって低下したルノーサムスンの生産稼働率の改善を図るためと解説。スナール会長も「将来、サムスンとの間で起こるかもしれない“嵐”を回避するための協業。アライアンスのメンバー各社が歓迎している。すべてうまくいけば、全員が恩恵を享受できる」と、その意義を説明した。

(webCG)

「日産マイクラ」の後継となる新型コンパクトEV。
「日産マイクラ」の後継となる新型コンパクトEV。拡大

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