富士スピードウェイ再開発でモータースポーツ復権なるか?
2022.04.25 デイリーコラム“接点”がなさすぎる
「クルマの買い方が変わってきている」という話はよく聞く。スマートフォンで気になるクルマの情報について十分に確認し、販売店は注文、あるいは実車を引き取りに行くためにだけ利用するという買い方だ。企業側がユーザーとコミュニケーションをとる際は、“スマホファースト”で情報を整理するのがトレンドである。
一方で、「タッチポイントが求められている」という話もよく聞く。タッチポイントとは企業と顧客が接する場のことで、リアルな商品に触れる場や機会を指す。2020年にポルシェが電動4ドアスポーツカーの「タイカン」を発表したのに合わせて、また、最近では日本再上陸を果たすヒョンデが電動車の発売に合わせて東京・表参道でポップアップストア(期間限定の店舗)を展開した。商品やブランドと消費者のリアルな接点を設けることが、ブランドの価値を浸透させ、商品の魅力を伝えるのに有効だと認識しているからだ。モータースポーツにはその、タッチポイントが決定的に足りていない。現実に触れる機会がなければ、好きか嫌いかの判断すらできず、盛り上がりようがない。
トヨタ自動車と富士スピードウェイ、東和不動産(2022年4月27日に「トヨタ不動産」に社名変更)が「富士モータースポーツフォレスト」のプロジェクトについて概要を発表した際、タッチポイントのことが頭に浮かんだ。現代の若者は(若者には限らないが)、スマホから得る情報だけで満足する一方でリアルな接点を求めている。接点があれば、理解が深まる。既存のモータースポーツファンの満足度を高めるだけでなく、新たなファンの掘り起こしにつながるプロジェクトになりそうだと感じた。
富士モータースポーツフォレストは、富士スピードウェイを中心に、ホテルやモータースポーツミュージアム、開かれたレーシングチームのガレージ、温浴施設やレストランなどで構成される。2022年秋に開業する「富士スピードウェイホテル」と「富士モータースポーツミュージアム」が先陣を切り、2023年以降にレーシングチームのガレージなどが順次開業する予定だ。開発を担当する東和不動産は富士スピードウェイが開業60周年を迎える2026年を「重要な年」と位置づけていることから、2026年をターゲットにプロジェクトは完成に近づいていくはずだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
みんなをワクワクさせなければ
“フォレスト“のポイントはアクセスに優れていること。一部のトンネル工事が難航しているため「2023年度の開通は困難」と、NEXCO中日本は新東名高速道路・新秦野IC~新御殿場IC間の開通見通しについて説明しているが、同区間が開通したあかつきにはスマートICとなる小山PAと富士モータースポーツフォレストが直結する。便利なことこの上ない。
モータースポーツに人が集まらないのは、アクセスの悪さが一因なのは明白だ。その原因が取り除かれることで、リアルなモータースポーツに触れるためのハードルがはるかに低くなる。それだけでもまず、フォレストに対する期待は大きい。その後で、モータースポーツが継続的な盛り上がりを見せるかどうかは、コンテンツ次第だろう。「何やっているかわからないけど、行けば何かしら楽しめるはず」というムードをつくり出すことが重要だ。
富士スピードウェイホテルがハイアットの運営であることから、フォレストは富裕層向けのプロジェクトなのではないかと危惧する声も耳にするが、そうはならないと信じている。確かに、スーパースポーツカーのオーナーに対するホスピタリティーが求められているのは事実で、富士スピードウェイホテルはそうした富裕層向けの受け皿になる可能性はある。
だがそれは、フォレストが持つ一面にすぎず、本質は、いろんな層の大人や子供にモータースポーツの魅力を発信し、継続的なファンになってもらうことにあるはずだ。筆者の勝手な想像だが、プロジェクトの旗振り役である豊田章男氏(トヨタ自動車社長・東和不動産会長。そしてあるときはレーシングドライバー「モリゾウ」)はその言動から、モータースポーツを一部のお金持ちだけが内輪で楽しむものという考え方を嫌悪しているように見受けられる。だとすれば、決してラグジュアリー一辺倒の施設群にはならないはずだ(なってほしくない)。
フォレストのような、アクセスに便利なモータースポーツ系タッチポイントの整備は大賛成。「行ってみようかな」と思わせる魅力的な二の矢、三の矢の情報発信に期待したい。
(文=世良耕太/写真=トヨタ自動車、GTA、webCG/編集=関 顕也)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

世良 耕太
-
気づけばすでに4モデル スバルのBEV戦略と水平対向エンジンの未来を考えるNEW 2026.6.4 「ソルテラ」に続き、「トレイルシーカー」「アンチャーテッド」「ゲッタウェイ」と、いつの間にか4モデルが顔をそろえたスバルのBEV。伝統的な水平対向エンジンやシンメトリカルAWDはこの先どうなるのか? スバルの未来戦略を探る。
-
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感 2026.6.3 「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。
-
新生アルピナは成功するか? その将来とBMWとの関係について考える 2026.6.1 具体的なデザインスタディーも公開され、いよいよ市場展開が見えてきた新生アルピナ。将来的な成功の“確度”やいかに? BMWによる新たなアルピナ像について、両ブランドに詳しい西川 淳が詳しく解説する。
-
つまずきを糧に成功をつかみ取れ! 新型「CX-5」に宿るマツダの変革と覚悟 2026.5.29 既存のマツダ車とは一線を画す乗り味で、メディアをおどろかせた新型「マツダCX-5」。マツダの最量販車種は、なぜ3代目で大転換を迫られたのか? 賛否両論を巻き起こした“あのクルマ”との関係は? 新しくなったCX-5に宿る、マツダの覚悟と変革に迫る。
-
「日産テラノ」がPHEVで復活 往年のビッグネームを継承するSUVの特徴を分析する 2026.5.28 日産自動車が「北京モーターショー2026」で、往年のビッグネームを継承する新型SUV「テラノPHEVコンセプト」を世界初公開した。初代「テラノ」で採用された「3スロット」を想起させる車両のデザインに加え、日産が新型テラノで狙うグローバル戦略に迫る。
-
NEW
第290回:商用バンで砂漠を行く親子が向かうのは天国か地獄か 『シラート』
2026.6.4読んでますカー、観てますカー失踪した娘を探して親子はモロッコの砂漠へ。砂漠で開催されていたレイブパーティーが最高潮に達した頃、軍隊がやってきて中止させられる。親子が乗るFFの商用バンは次のパーティー会場にたどり着けるのか……。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.4あの多田哲哉の自動車放談ひさびさに日本市場に戻ってきた、ホンダを代表するSUV「CR-V」。最新世代の仕上がりを、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどう評価する? まずは、ワインディングロードを走らせた第一印象から。 -
NEW
第964回:フィアットグッズのコレクターから学ぶ人生訓
2026.6.4マッキナ あらモーダ!イタリア在住の大矢アキオが、トリノで著名なフィアットグッズのコレクターを取材。若き日の苦労を経て大成した人物が語る、人生で大切なものとは? フィアットやイタリアの歴史を物語る、貴重なコレクションの数々とともに紹介する。 -
NEW
気づけばすでに4モデル スバルのBEV戦略と水平対向エンジンの未来を考える
2026.6.4デイリーコラム「ソルテラ」に続き、「トレイルシーカー」「アンチャーテッド」「ゲッタウェイ」と、いつの間にか4モデルが顔をそろえたスバルのBEV。伝統的な水平対向エンジンやシンメトリカルAWDはこの先どうなるのか? スバルの未来戦略を探る。 -
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。







