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メルセデスAMG GT53 4MATIC+(4WD/9AT)

走りだせば敵なし 2022.07.04 試乗記 生方 聡 ボディーサイズや“AMG”のネーミングに恐れを抱く人もいるかもしれないが、こと「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」に関しては扱いにくい点はほとんどない。それでいながら、AMGを名乗るにふさわしい運動性能が備わっているのだから、まさに間違いのない一台だ。

似て非なる2台

路上で遭遇する機会はめったにないものの、SUPER GTやスーパー耐久といったレースで速さを見せつける「メルセデスAMG GTクーペ」。そのイメージを受け継ぐエクステリアデザインにより、強い存在感を示すのが、メルセデスAMG GT 4ドアクーペだ。

ひとくちにAMGといっても、スポーティーなデザインの「AMGライン」から、「メルセデスAMG A45 S 4MATIC+」のような高性能エンジンを積むハイパフォーマンスグレード、そして、頂点に位置づけられるメルセデスAMG GTとさまざまなモデルが存在するのはご存じのとおり。なかでも特別なのが、メルセデスAMGが独自に開発したメルセデスAMG GTで、現在は2ドアのクーペまたは「ロードスター」と、4ドアクーペが設定されている。

ただ、ややこしいのは、2ドアと4ドアとではクルマの成り立ちが異なっていること。2ドアが、アルミスペースフレームのシャシーやフロントミドシップのエンジンレイアウト、ドライサンプ式のエンジン潤滑機構などを採用する生粋のスーパースポーツであるのに対して、4ドアはメルセデス・ベンツの後輪駆動モデルを進化させたクルマであり、メルセデスAMG GTクーペよりも、むしろ「メルセデスAMG CLS53 4MATIC+」に近いといえるだろう。

今回の試乗車は「メルセデスAMG GT53 4MATIC+」で、車両本体価格は1839万円。2022年1月に国内導入が発表された最新モデルだ。
今回の試乗車は「メルセデスAMG GT53 4MATIC+」で、車両本体価格は1839万円。2022年1月に国内導入が発表された最新モデルだ。拡大
ボディーの全長は5050mmにも達する。「4ドアクーペ」を名乗るものの、実際にはリアに巨大なハッチゲートを備えた5ドアクーペである。
ボディーの全長は5050mmにも達する。「4ドアクーペ」を名乗るものの、実際にはリアに巨大なハッチゲートを備えた5ドアクーペである。拡大
縦ルーバーが特徴的な「パナメリカーナグリル」はほかのメルセデスAMGモデルでもおなじみのアイコニックな意匠。
縦ルーバーが特徴的な「パナメリカーナグリル」はほかのメルセデスAMGモデルでもおなじみのアイコニックな意匠。拡大
リアエンドには高速走行時に自動で展開するスポイラーが格納されている。キャビンのスイッチで任意の操作も可能。
リアエンドには高速走行時に自動で展開するスポイラーが格納されている。キャビンのスイッチで任意の操作も可能。拡大
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漂うスーパースポーツのオーラ

しかし、実車を目の当たりにすると、メルセデスAMG GTクーペを特徴づける「パナメリカーナグリル」と呼ばれる大型グリルや、ファストバックスタイルのリアビューなどを採用する迫力のエクステリアに加えて、2ドアよりも500mm増した全長のおかげで、メルセデスAMG GTクーペ以上の威圧感を覚える。これが背後から迫ってきたら、早々と道を譲ってしまうのは、私だけではないはずだ。

エクステリアデザインに比べると、メルセデスAMG GT 4ドアクーペのコックピットはおとなしい印象。メーターパネルやダッシュボードのデザインはCLSをベースとしており、それをさらに豪華に仕上げたつくりだ。それでいて、メルセデスAMG GTクーペ同様、V8エンジンをモチーフにしたセンターコンソールを採用し、また、液晶パネルが備わるAMGドライブコントロールスイッチが装着された太いステアリングホイール、ヘッドレスト一体型のスポーツシートなどが、走りへの期待を高めてくれるのも事実だ。

言い遅れたが、今回試乗したのは、現在日本で販売されるメルセデスAMG GT 4ドアクーペのうち、よりパワフルなエンジンを積む「AMG GT53」。2019年2月の日本導入当時は、4リッターV8ツインターボを積む「AMG GT63 S」と、3リッター直列6気筒ターボの「AMG GT43」、そしてAMG GT53の3グレード構成だったが、2022年からは6気筒のAMG GT43とAMG GT53の2グレードに変わっているのだ。

パワーユニットは48Vマイルドハイブリッドの3リッター直6エンジン「M256」。ターボに加えて低回転域の過給を担当する電動スーパーチャージャーが搭載されている。
パワーユニットは48Vマイルドハイブリッドの3リッター直6エンジン「M256」。ターボに加えて低回転域の過給を担当する電動スーパーチャージャーが搭載されている。拡大
V8エンジンをモチーフにしたというセンターコンソールが主張するインテリア。ホワイトがまばゆい内装色は「マキアートベージュ/マグマグレー」。
V8エンジンをモチーフにしたというセンターコンソールが主張するインテリア。ホワイトがまばゆい内装色は「マキアートベージュ/マグマグレー」。拡大
出自は「CLS」などに近い「AMG GT 4ドアクーペ」だが、シフトセレクターは「AMG GTクーペ」と同じくセンターコンソールに備わっている(CLSはコラムレバー式)。
出自は「CLS」などに近い「AMG GT 4ドアクーペ」だが、シフトセレクターは「AMG GTクーペ」と同じくセンターコンソールに備わっている(CLSはコラムレバー式)。拡大

パワフルで扱いやすい直列6気筒エンジン

GT53に搭載されるのは、「M256」と呼ばれる直列6気筒直噴ガソリンターボエンジン。エンジン単体で最高出力435PS、最大トルク520N・mを発生する一方、48V電源システムとISG(一体型スタータージェネレーター)、容量1kWhのリチウムイオンバッテリーを組み合わせたマイルドハイブリッドシステム、さらに、電動スーパーチャージャーにより、エンジンの高効率化と優れたエンジンレスポンスを目指している。

実際に走らせてみると、高性能のM256エンジンに気難しさはなく、実に扱いやすく、トルクあふれる性格が与えられていた。低回転から思いのほかエンジンのレスポンスが良く、軽くアクセルペダルを踏むだけで、間髪入れずにクルマが前に押し出される感じだ。エンジン回転計の下部に「EQ」の表示があり、加速時にはISGがエンジンをアシストしていることがわかるのだが、さらにM256では低回転域で電動スーパーチャージャーを使うことで、ターボラグを解消。AMGダイナミックセレクトを「コンフォート」から「スポーツ」や「スポーツ+」に変更すると、アクセル操作に対するレスポンスはさらに鋭くなるが、コンフォートでもストレスとは無縁で、より大排気量の自然吸気エンジンのような頼もしさを堪能できる。

一方、アクセルペダルを大きく踏み込むと、体感的には3000rpm手前あたりからエンジンが勢いづき、6500rpmのレッドゾーン入り口まで力強い加速が続く。4WDの4MATIC+が組み合わされるおかげで、フルスロットルを与えてもクルマの挙動は安定しており、安心してM256エンジンのハイパワーを使い切れるのがうれしい。

駆動方式は「AMG 4MATIC+」=4WD。前後トルク配分は50:50~0:100の間で可変する。
駆動方式は「AMG 4MATIC+」=4WD。前後トルク配分は50:50~0:100の間で可変する。拡大
センターコンソール右側のスイッチ類。一番前の統合ドライブモードセレクターを先頭に、トランスミッション、サスペンション、トラクションコントロールの設定を個別に切り替えるボタンが並ぶ。
センターコンソール右側のスイッチ類。一番前の統合ドライブモードセレクターを先頭に、トランスミッション、サスペンション、トラクションコントロールの設定を個別に切り替えるボタンが並ぶ。拡大
こちらはセンターコンソールの左側。先頭がオーディオのボリュームで、後ろにアイドリングストップのオン/オフ、リアスポイラーの展開/格納、エキゾーストシステムの設定スイッチが続く。
こちらはセンターコンソールの左側。先頭がオーディオのボリュームで、後ろにアイドリングストップのオン/オフ、リアスポイラーの展開/格納、エキゾーストシステムの設定スイッチが続く。拡大
上下2分割の横スポークが特徴的なステアリングホイール。ホーンボタン右下のダイヤルがドライブモードセレクターで、左のダイヤルではサスペンションやトランスミッションなどの設定を呼び出して個別に変えられる。
上下2分割の横スポークが特徴的なステアリングホイール。ホーンボタン右下のダイヤルがドライブモードセレクターで、左のダイヤルではサスペンションやトランスミッションなどの設定を呼び出して個別に変えられる。拡大

大きいのに小さい

日常では全長5mのクルマに縁遠い筆者にとって、メルセデスAMG GT 4ドアクーペのボディーサイズには正直なところストレスを覚えるが、それは駐車場での話。ひとたび走りだせば、そのサイズがほとんど気にならなくなるほど、クルマとの一体感が味わえる。しかも、予想以上にクルマの動きが軽く、ひとまわり小さいボディーを操っている感覚なのだ。

試乗当日はあいにくの雨模様でワインディングロードを攻める勇気はなかったが、ペースを抑えていてもその素直なハンドリングを感じ取ることができた。「AMGライドコントロール+エアサスペンション」を標準装着するGT53は、オプションの21インチタイヤを履くにもかかわらず、路面からのショックを軽くいなし、快適な乗り心地をキープ。高速走行時の直進安定性やフラットな挙動も実に好ましく、コーナーでも直線でも理想的な走りを見せてくれた。

一方、余裕あるサイズのボディーだけに、後席のスペースや荷室は広い。前席の下に爪先が入りにくいとか、荷室の開口部とフロアまでの段差が大きいなど気になる点もあるが、アッパーミディアムサルーンとして文句のない機能性を誇っている。

初めて見たときにはエクステリアのいかつさに圧倒されたものの、実際にステアリングを握ってみると、メルセデスAMG GT53 4MATIC+は実に魅力的かつ実用的なスポーツサルーンだった。

(文=生方 聡/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)

足まわりはエアサスペンションをベースにした「AMGライドコントロール+エアサスペンション」。最新モデルでは最小側と最大側の減衰力のレンジを広げることで快適性とスポーツ性能を同時に強化している。
足まわりはエアサスペンションをベースにした「AMGライドコントロール+エアサスペンション」。最新モデルでは最小側と最大側の減衰力のレンジを広げることで快適性とスポーツ性能を同時に強化している。拡大
ダイヤモンドステッチ入りのフルレザーシートはオプションで選べる。ヘッドレストもサイドサポートもかなりの高さがある。
ダイヤモンドステッチ入りのフルレザーシートはオプションで選べる。ヘッドレストもサイドサポートもかなりの高さがある。拡大
クーペスタイルではあるものの、後席は大人が余裕をもって座れる空間だ。ホイールベースが2950mmもあるので足元はご覧のとおりに広い。
クーペスタイルではあるものの、後席は大人が余裕をもって座れる空間だ。ホイールベースが2950mmもあるので足元はご覧のとおりに広い。拡大
荷室の容量は456~1324リッター。ハイトはないが、絶対的な奥行きの広さで容量を稼ぎ出している。
荷室の容量は456~1324リッター。ハイトはないが、絶対的な奥行きの広さで容量を稼ぎ出している。拡大

テスト車のデータ

メルセデスAMG GT53 4MATIC+

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5050×1995×1440mm
ホイールベース:2950mm
車重:2100kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ+スーパーチャージャー
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:435PS(320kW)/6100rpm
エンジン最大トルク:520N・m(53.0kgf・m)/1800-5800rpm
モーター最高出力:22PS(16kW)
モーター最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)
タイヤ:(前)275/35ZR21 103Y XL/(後)315/30ZR21 105Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツ4 S)
燃費:9.5km/リッター(WLTCモード)
価格:1839万円/テスト車=2016万9000円
オプション装備:AMGダイナミックプラスパッケージ(85万7000円)/パノラミックルーフ(28万円)/フルレザー仕様<ナッパレザー、ダイヤモンドステッチ入り>(34万3000円)/スペクトラルブルーマグノ<マットペイント>(29万9000円)

テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1745km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:468.1km
使用燃料:55.5リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:8.4km/リッター(満タン法)/8.3km/リッター(車載燃費計計測値)

メルセデスAMG GT53 4MATIC+
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生方 聡

生方 聡

モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースレポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。

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