トヨタGRMNヤリス“サーキットパッケージ”プロトタイプ(4WD/6MT)/GRMNヤリス“ラリーパッケージ”プロトタイプ(4WD/6MT)
あぁ快感! 2022.07.07 試乗記 モータースポーツでの知見を生かし、高性能ハッチバック「GRヤリス」をさらにレベルアップさせたというトヨタの限定モデル「GRMNヤリス」。“究極”と形容される走りの質を、オンとオフ両方の道でチェックした。骨格からして違う
限定販売台数500台に対して、実に1万人もの購入希望者が殺到したという“GRヤリスのフルチューンドバージョン”GRMNヤリスは、すでに抽選も終わり、幸運にも購入権を引き当てた人には、この夏以降に納車が始まる予定となっている。
筆者はすでにGRMNヤリスをサーキットで走らせる機会を得ていたのだが、今回は最終仕様の、いわば市販スペックとなった車両をあらためて試すことができた。それも“Circuit Package(サーキットパッケージ)”を袖ヶ浦フォレストレースウェイで、そして初対面の“Rally Package(ラリーパッケージ)”をダートコースでというぜいたくな機会とあって、喜々として参加したのだった。
GRMNヤリスの詳細については、すでに多くの方がご存じだろう。簡単におさらいしておくならば、その最大の見どころはやはりボディーということになる。
そもそもGRヤリスは、競技での使用を前提にヤリスより大幅に強化されたボディーを持っている。GRMNヤリスではそこにスポット溶接545カ所、構造用接着剤塗布長12mを追加することで、さらに剛性を高めているのだ。これは数値を追いかけたものではなく、“サーキットパッケージ”が標準装着する、Sタイヤ並みのグリップ力を持つヨコハマタイヤの「アドバンA052」を履きこなすべく手を入れていった結果としてのスペックである。
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これでもかのモディファイ
やはりWRCをにらんで開発された1.6リッター直列3気筒ターボエンジンは、最高出力こそGRヤリスと変わらない272PSだが、最大トルクが20N・m増しの390N・mとされている。さらに、6段MTはクロスレシオ化、ファイナルギアのローギアード化を実施。そして1、3、4、5速とファイナルへのSNCM材(ニッケルクロムモリブデン鋼鋼材)の使用、ショット処理によって強度を高めている。これはスーパー耐久や全日本ラリーなどのモータースポーツの、まさに実戦で鍛えた成果だ。
ほかにも、GRヤリスではアルミ製のボンネット、そしてそもそもCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製がおごられているルーフは、新工法のより軽量な綾織CFRP製に。リアシートは取り払われ、代わりに補強ブレースが入れられている。シートはレカロ製のサイドエアバッグ付きフルバケットに。そして前後に機械式LSDを装着する。
最初に試した“サーキットパッケージ”は、前述のとおりアドバンA052を専用のBBS製鍛造8.5Jアルミホイールとの組み合わせで採用するほか、ビルシュタイン製減衰力調整式ダンパー、専用リアウイングなどを装着する。また、4WDシステムの「GR-FOUR」は、トラックモード選択時の前後駆動力配分を50:50から45:55に改めた専用セッティングとされている。
踏むほどに曲がっていく
サーキットコースでのその走りは、やはり痛快としか言いようのないものだった。まるで競技用のロールケージを組んだクルマかのようなボディーの剛性感は素晴らしく、おかげでクルマとの対話がとにかく濃密にでき、結果として精度の高いコントロールが可能になる。コーナリング速度がとんでもなく速いのに、時間がゆっくり流れているような気がしたのは、きっとそのおかげだろう。
特に印象的なのはステアリングの饒舌(じょうぜつ)な操舵感。フロントタイヤのグリップと相談しながら切り込んでいくと、サスペンションは意外やしなやかに沈み込んで挙動を伝達しながらタイヤを路面に貼りつかせていく。ここでしっかりと曲げてからアクセルを踏み込めば、機械式LSDのおかげもあってまさに4輪でクルマを前に前にけん引していく。むしろ、踏むほどに曲がっていくとなると、余計に右足に力が入ってしまうのだ。
実は以前に乗った個体よりも生産精度が高まったおかげで、ボディーの剛性も向上していたというこの車両。おかげでアンダーステアが強まったかもしれないとのことだったが、確かにここまできたら、もっとヤンチャでもいいのかもしれない。あるいは前後駆動力配分が30:70になるスポーツモードを試してみるべきだったと気づいたが、あとの祭り。これは実際に手に入れられたオーナー諸氏に託したい。
ダートでは4輪ドリフトも
オフロードコースに用意されていた“ラリーパッケージ”は専用のショックアブソーバーとショートスタビリンクセット、アンダーガード、ロールバーをセットしたもの。試乗車はそれにオフロード用タイヤ&ホイールなどを装着していた。このあたりはユーザーが自由に選べるようにという配慮だ。
走りだして感じたのは、サーキットでと同じようにその時々のクルマの状況がより密度濃く伝わってくるということ。同時に、操作に対する反応がより正確性を増していて、極端に言えばGRヤリスでは修正舵を当てることを前提に大ざっぱに切り込んでいたところで、舵角を一発で決められるのだ。正直、オフロードでこれほどボディー剛性向上の意味を体感できるとは想像していなかった。
トルクアップしたエンジンとクロスレシオのギアボックスも、やはりクルマとの一体感を高めることにつながっている。そして気持ちとしてありがたかったのがギアの強化。操作が慌ただしくなるオフロードでは、おかげで臆(おく)せずギアを放り込めるようになった。
なお、電子制御4WDシステムのGR-FOURについては、ベース車と“ラリーパッケージ”では前後駆動力配分がGRヤリスと同様の50:50とされているトラックモードで走った。30:70のスポーツモードのほうがリアを振り出すのは容易だが、トラックモードならアングルがついてからもアクセルを戻さず踏み続けることで、豪快な4輪ドリフトにも持ち込める。気持ちの切り替えが必要だが、実際にできてみると、これはもう文句なしの快感だった。
走ることだけを考えて徹底的に磨き上げられたGRMNヤリスだけに、希少な限定車ではあるけれど、購入できた方には、こんなふうに思い切り走らせて楽しんでほしい。今回の試乗であらためて浮かんだのは、月並みだがそんな結論だ。そうしたらいよいよこのクルマ、ますます手放せない存在になるはずである。
(文=島下泰久/写真=トヨタ自動車/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
トヨタGRMNヤリス“サーキットパッケージ”プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4030×1815×1475mm
ホイールベース:2560mm
車重:1260kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.6リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:272PS(200kW)/6500rpm
最大トルク:390N・m(39.8kgf・m)/3200-4600rpm
タイヤ:(前)235/40R18 95Y/(後)235/40R18 95Y(ヨコハマ・アドバンA052)
燃費:--km/リッター
価格:846万7000円/テスト車=--
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
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トヨタGRMNヤリス“ラリーパッケージ”プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3995×1805×1455mm
ホイールベース:2560mm
車重:--kg(ディーラーオプションの選択による)
駆動方式:4WD
エンジン:1.6リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:272PS(200kW)/6500rpm
最大トルク:390N・m(39.8kgf・m)/3200-4600rpm
タイヤ:(前)205/65R15 94Q/(後)205/65R15 94Q(ダンロップ・ディレッツァ88R)
燃費:--km/リッター
価格:837万8764円/テスト車=--
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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