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【スペック】全長×全幅×全高=3888×1665×1156mm/ホイールベース=2224mm/車重=795kg/駆動方式=MR/0.8リッター直2ディーゼルターボ(48ps、12.2kgm)+モーター(27ps、10.2kgm)(プロトタイプ)

フォルクスワーゲンXL1プロトタイプ(MR/7AT)【海外試乗記】

ハンパな“エコカー”じゃない! 2011.02.18 試乗記 河村 康彦 フォルクスワーゲンXL1プロトタイプ(MR/7AT)

1リッターで100km以上走る、未来のスーパーエコノミーカー「XL1」。市販に向けての装備が整いつつある、最新のプロトタイプカーに試乗した。
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9年ぶんの進化

ヨーロッパでの最新燃費測定法「NEDC」で、100km走行あたりの燃料消費量がわずかに0.9リッターという、フォルクスワーゲンが手がけたスーパーエコノミーカー。その試乗のため、まさにアジアカップの決勝戦が行われるというタイミングに、中東カタールまで出かけて来た。0.9リッター/100kmといえば、日本式表記で実に111.1km/リッターという値。ディーゼルエンジン搭載のハイブリッドモデルゆえ、燃料の単位消費量当たりのCO2排出量はガソリンの場合よりも増すものの、それでもその値は1km走行あたりわずかに24gだから、やはりそれはハンパな“エコカー”とは格が違うのだ。「そんなモデルのイベントを、なにゆえに『産油国』で行うのか?」という疑問ももっともだが、実はフォルクスワーゲン株の17%は政府系ファンドであるカタール投資庁が保有している。それもあり、フォルクスワーゲンは、このモデル「XL1」のワールドプレミアの場を、1月末に開催のカタールモーターショーとしたに違いない。

空気抵抗を極限まで低減させた造形のCFRP製ボディを採用する、コンパクトな2シーターのスーパーエコノミーカー――フォルクスワーゲン発のそんなモデルには、実はすでに9年近い歴史がある。
初代は2002年4月の株主総会の際に、本社ヴォルフスブルクから会場であるハンブルクまでの230kmの区間を、当時の取締役会長であるフェルディナント・ピエヒ氏が自らドライブしたことで話題となった、その名も「1リッターカー」。2代目は、それをベースに「量産モデルがどのようなデザインになるかを示唆する」と銘打たれた「L1」で、こちらは2009年秋のフランクフルトショーに出展されている。
そんな2台を踏み台に、さらなる量産化要件を盛り込んだというのが今回発表された「XL1」。前2者との最も大きなデザイン上の相違点は、タンデム(前後)式からオーソドックスなサイドバイサイド式へと変更された2シーターパッケージ。これも「車内でのコミュニケーションを考えると、やはりこちらがベターであろうという判断からの採用」と、やはり量産化への思いが連想されるものだ。

トランスミッションは7段のDSGを搭載する。
トランスミッションは7段のDSGを搭載する。 拡大
助手席は運転席より277mm後ろにオフセットされて配置される。
助手席は運転席より277mm後ろにオフセットされて配置される。 拡大
“プラグイン”による充電で、およそ35kmのEV走行が可能。
“プラグイン”による充電で、およそ35kmのEV走行が可能。 拡大
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量産化を強く意識した作り

こうしたパッケージング以外にも、ルーフ部分までを切り欠いた“ウイングドア”や2脚のシートの前後方向へのオフセットレイアウト、電気モーターと組み合わされた800ccディーゼルエンジンなどが、いずれも量産化を強く意識した結果に採用されたと解釈できるもの。ドアは「ガヤルドスパイダー並の全高の中で優れた乗降性を確保するため」と説明されるし、シートレイアウトは「パッセンジャー側をダッシュボードから遠ざけてエアバッグを不要とし、軽量化に貢献するため」。エンジンは「1.6リッター量産ユニットの半分にして、既成のテクノロジーを有効活用するため」といったコメント。現状ではワンオフのこのモデルだが、しかしその狙いは決して単なるコンセプトカーにはとどまらないというわけだ。

35km区間はEV走行が可能というプラグインハイブリッドモデルのXL1だが、そうした走行シーンでもフル加速が必要になると最高20kWと10.2kgmを発するモーターに同じく48psと12.2kgmを発するエンジン出力が上乗せされ、トータルでは14.3kgmのシステムトルクを発すると発表されている(システム出力は未公表)。実際、広くて空いたカタール首都のドーハの街中を、かなり自由に動力性能を試すことができたが、結果は「街乗りではEVモードだけでも十分。郊外路や高速に乗り入れた場合には、エンジンの補助も欲しくなりそう」というのが加速の実力だ。発表されている0-100km/h加速タイムは11.9秒。ちなみに、走行中にエンジンが始動し、加速力を上乗せし始める際のショックは気にならないが、ディーゼルエンジンをシート背後に搭載するゆえノイズの方は「それなり」の印象。タコメーターの動きを追わずとも、エンジンの始動と停止は一目(耳?)瞭然(りょうぜん)だ。

空気抵抗係数を示すCd値は0.186と、きわめて小さい。
空気抵抗係数を示すCd値は0.186と、きわめて小さい。 拡大
10リッターの燃料タンクを満タンにすると、EV走行とあわせて最長550kmほどの走行が可能だという。
10リッターの燃料タンクを満タンにすると、EV走行とあわせて最長550kmほどの走行が可能だという。 拡大
エンジンとモーターは、リチウムイオンバッテリーとともにドライバー後方にレイアウトされる。
エンジンとモーターは、リチウムイオンバッテリーとともにドライバー後方にレイアウトされる。 拡大

自在なコーナリングも魅力

そんなXL1の走りで感心させられたのは、しかしそうした動力性能面のみではなかった。振動を瞬時に減衰させるボディは予想をはるかに超える快適性を提供してくれるし、前輪側が95mm、後輪側でも115mm幅の、低転がり抵抗を意識し内圧も「3bar以上で使っている」という極めて細いタイヤを履くにもかかわらず、大きなラウンドアバウトをコーナーに模しての“ちょっと速いコーナリング”でも、想像以上に自在な旋回性を感じさせてくれたのだ。

つまりは、このXL1というスーパーエコノミーカーは、単に燃費性能に優れているのみならず、きちんと「Fun」を味わわせてくれる「夢あるクルマ」だということ。もはやこうなったならば今度は市販化を待つしかない! なによりもそう感じさせてくれるフォルクスワーゲンの“ニューモデル”だ。

(文=河村康彦/写真=フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン)


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空気抵抗を減らすためバックミラーは無く、カメラの映像が車内モニター(写真奥ドアパネル)に映し出される。
空気抵抗を減らすためバックミラーは無く、カメラの映像が車内モニター(写真奥ドアパネル)に映し出される。 拡大
XL1専用となるミシュランタイヤは、前95mm/後115mm(試乗時)という極細サイズ。ABS、ESPも装備される。
XL1専用となるミシュランタイヤは、前95mm/後115mm(試乗時)という極細サイズ。ABS、ESPも装備される。 拡大
河村 康彦

河村 康彦

フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。

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