レクサスIS500“Fスポーツ パフォーマンス”(FR/8AT)
快楽のマシン 2022.09.08 試乗記 レアな存在になりつつある自然吸気の大排気量エンジンを積む、レクサスの高性能セダン「IS500“Fスポーツ パフォーマンス”」。運転好き期待の一台はどんなクルマに仕上がっているのか? ひと足先にアメリカ国内で試乗した。「IS F」ではないのがミソ
2022年7月21日に発表されたレクサスIS500“Fスポーツ パフォーマンス”の国内導入が、同年8月25日、正式にスタートした。まずは500台限定の特別仕様車“Fスポーツ パフォーマンス ファーストエディション”の商談抽選申し込みが始まったところである。
いわゆるDセグメント級FRスポーツセダンのISに大排気量の5リッターV型8気筒自然吸気ユニットを積み込んだこのクルマ、多くの人が思うのは、きっと「なんで『IS F』じゃないの?」ということだろう。実際、そのエンジンは改良こそ著しいものの、IS Fに使われていた、そして現在も「RC F」が搭載している2UR-GSE型そのものである。一体なぜ、このクルマはIS FではなくIS500を名乗るのか。そして“Fスポーツ パフォーマンス”とは何なのか。
理由のひとつは、Fを名乗るとクルマがどうしてもサーキット向けという雰囲気になってしまうこと。そうではなく、あくまでISシリーズの上級版として、ゆとりを持って走ることができて、濃ゆいドライビングプレジャーを味わうことができるクルマにしたいという思いが開発側にはあったようだ。
さらに言えば、かつてIS Fがライバル視していた「メルセデスAMG C63」や「BMW M3」といったクルマは、今や過給エンジンを得てオーバー500PSの世界に突入している。数値的にこれらにはかなわないクルマにIS Fの名を使うと、期待ハズレと思わせてしまうのではという危惧は、当然あったに違いない。Fの名前は、いつの日かそれにふさわしいクルマが出る日まで温存しておく。それが故のIS500という車名であり、またFではなく“Fスポーツ パフォーマンス”なのだという推察は、おそらくそう外れてはいないだろう。
中身も見た目もスペシャル
もっとも、全長を50mm伸ばしたうえで、フードが大きく隆起した車体前部におさめられたそのエンジンは、かつてのIS Fの最高出力423PS、最大トルク510N・mに対して、それぞれ481PS、535N・mへと大幅なパワーアップを実現している。トランスミッションは広範囲のロックアップにより最短0.2秒の変速スピードを実現した8段SPDS(スポーツダイレクトシフト)で変わらない。
これだけのパワーを後輪だけで受け止め、路面に伝達するためにシャシーにも大幅に手が入れられている。サスペンションはスプリングレートが高められ、AVS、EPSは制御定数を変更。リアにはトルセンLSDも装備される。さらに、ベースとなるISではフロントだけのパフォーマンスダンパーが、リアにも追加された。ボディーのたわみをしっかり減衰させて、潤沢なパワーとトルクを逃さずトラクションへと変換するためだ。
タイヤは19インチサイズの「ブリヂストン・ポテンザS001L」という銘柄で、ENKEI製の専用アルミホイールとの組み合わせとなる。その奥に見えるブレーキローターはフロント356mm、リア323mmの大径タイプとされている。
室内の雰囲気は見慣れたISそのものだが、“Fスポーツ”専用のスポーツシートは表皮がいわゆるシンセティックレザーであるウルトラスエードとL Texというコンビネーションとされ、運転席、助手席ともにベンチレーション機能も備わる。ウルトラスエードはほかにもメーターフードやアームレストなど各部にあしらわれ、スポーティーな雰囲気を演出。ステアリングホイールもディンプル加工された本革とこのウルトラスエードの組み合わせだ。
下から上まで満たされる
スタートスイッチを押すと、液晶メーターのオープニング画面もIS500専用になっている。こういう演出はベタだけれどうれしい。今の時代には存在感のあるセレクターレバーをDレンジに入れて発進である。
事前にもちろん想像していたが、実際にはその期待値以上にパワートレインの存在感が大きいクルマだ。V型8気筒5リッター自然吸気ユニットは、低回転域ではさほど大きな音を響かせたりはしないものの、豊かなトルクによって余裕のドライブを可能にしてくれる。低速からすぐにロックアップさせる8段SPDSのおかげで、アクセル操作に対する反応はダイレクト。ゆっくり走らせていても、エンジンの息吹をたっぷり味わうことができる。
もちろん、本領を発揮するのはさらに回転を高めた時だ。右足に力を入れていくと液晶パネルの中の回転計の針は軽やかに躍りだし、同時に重層なサウンドが豪快に響き始める。そこからはもう一気! 音色をハイトーンへとうつろわせながら吸い込まれるようにトップエンドに到達したかと思うと電光石火のシフトアップで次のギアに入り、また同じように駆け上がっていく……という繰り返しは快感の一言。病みつきになる。
このエンジンの快感は、それこそIS Fでも同じように味わえたといえるわけだが、IS500“Fスポーツ パフォーマンス”はクルマをねじ伏せるようにするのではなく、クルマと対話しながら走らせて、その快感を引き出せるのが大きな違いといえるかもしれない。
洗練され過ぎていないのがいい
フットワークは、しなやかな仕立てだ。サスペンションはよく動いて、荒れた路面でもクルマが必要以上に暴れたりしないし、なにより確かな接地性が保たれ続ける。ステアリングを切っていった時のロール感も自然だし、アクセルを踏み込んでいった時のリアから押し出されるような感覚も心地よく、いかにもFRらしい。ボディーや、おそらくマウント類もしっかり固められて、それを土台に足が自在に動いている。そんな走りはオールラウンド性が高いし、快適でもある。まさに、IS Fとは違った世界がある。
確かにステアリングフィールには古くさい感じがなくはないし、ブレーキのタッチや利きにも物足りなさはある。このあたりは基本設計の古さなのだろうが、しかし評価者としてではなくひとりのクルマ好きとしては、この洗練され過ぎていない感じも嫌いじゃない。試乗は短時間だったが、とにかく夢中になって走り回ってしまったのだった。
Fではなく“Fスポーツ パフォーマンス”とすることで、価格もリーズナブルに抑えられたIS500。同じエンジンのRC Fに比べて、その「ファーストエディション」(900万円)でも150万円以上安いのだ、実際。締め切りの2022年9月15日を前に、すでに商談申し込みは殺到しているということだが、レクサスはこのクルマを限定車だけにとどめず、レギュラーモデルも設定する。まさにIS500は、レクサスから世界のクルマ好きへのギフトといっていい一台ではないだろうか。
(文=島下泰久/写真=トヨタ自動車/編集=関 顕也)
テスト車のデータ
レクサスIS500“Fスポーツ パフォーマンス”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4760×1840×1435mm
ホイールベース:2800mm
車重:1720kg
駆動方式:FR
エンジン:5リッターV8 DOHC 32バルブ
トランスミッション:8段AT
最高出力:481PS(354kW)/7100rpm
最大トルク:535N・m(54.6kgf・m)/4800rpm
タイヤ:(前)235/40R19 92Y/(後)265/35R19 94Y(ブリヂストン・ポテンザS001L)
燃費:9.0km/リッター(WLTCモード)
価格:850万円
オプション装備:--
※数値はすべて国内仕様車のもの。
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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