【F1 2022】第19戦アメリカGP続報:レッドブルとフェルスタッペン、亡きオーナーにささげる勝利と栄冠

2022.10.24 自動車ニュース bg
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第19戦アメリカGPを制したレッドブルのマックス・フェルスタッペン(写真左から2番目)、2位に入ったメルセデスのルイス・ハミルトン(同左端)、3位でレースを終えたフェラーリのシャルル・ルクレール(同右端)。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
第19戦アメリカGPを制したレッドブルのマックス・フェルスタッペン(写真左から2番目)、2位に入ったメルセデスのルイス・ハミルトン(同左端)、3位でレースを終えたフェラーリのシャルル・ルクレール(同右端)。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大

2022年10月23日、アメリカはテキサス州オースティンのサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)で行われたF1世界選手権第19戦アメリカGP。この週末の話題をさらったのは、タイトル獲得目前、コストキャップ違反に騒然のレッドブルだった。

このレースで1-4フィニッシュを飾ったレッドブルは、2013年以来となるドライバーズ&コンストラクターズ両タイトルを獲得。ターボハイブリッド時代の巨人だったメルセデスの連覇を「8」で止めた。またレッドブルは、7月の第12戦フランスGPから8連勝を記録している。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
このレースで1-4フィニッシュを飾ったレッドブルは、2013年以来となるドライバーズ&コンストラクターズ両タイトルを獲得。ターボハイブリッド時代の巨人だったメルセデスの連覇を「8」で止めた。またレッドブルは、7月の第12戦フランスGPから8連勝を記録している。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大
2番グリッドからのスタートでトップに立ったフェルスタッペン(写真右端)が優勝。COTAでのフロントローからの勝率は100%である。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
2番グリッドからのスタートでトップに立ったフェルスタッペン(写真右端)が優勝。COTAでのフロントローからの勝率は100%である。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大
前戦日本GPで2連覇を達成したレッドブルのフェルスタッペンが今季13勝目をマーク。2004年のミハエル・シューマッハー(フェラーリ)、2013年のセバスチャン・ベッテル(レッドブル)が記録したシーズン最多勝記録に並んだことになり、残り3戦での記録更新に期待がかかる。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
前戦日本GPで2連覇を達成したレッドブルのフェルスタッペンが今季13勝目をマーク。2004年のミハエル・シューマッハー(フェラーリ)、2013年のセバスチャン・ベッテル(レッドブル)が記録したシーズン最多勝記録に並んだことになり、残り3戦での記録更新に期待がかかる。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大
歴代4位の出走回数記録である307戦目を迎えたメルセデスのハミルトン(写真前)は、今季初優勝かなわず2位フィニッシュ。今シーズン最後のマシンアップデートを持ち込んできたメルセデスに確かな感触を得たものの、予選になると気温の低下にマシンのセットアップが合わず、トップから0.591秒差で5位。ライバルのグリッド降格で繰り上がり、3番グリッドにおさまった。レースではトップのフェルスタッペンがタイヤ交換に手間取っている間に首位を奪ったものの、残り7周でレッドブルにオーバーテイクを許した。チームメイトのジョージ・ラッセルは4番手スタートから、接触による5秒ペナルティーを受けつつもファステストラップを記録、結果5位。(Photo=Mercedes)
歴代4位の出走回数記録である307戦目を迎えたメルセデスのハミルトン(写真前)は、今季初優勝かなわず2位フィニッシュ。今シーズン最後のマシンアップデートを持ち込んできたメルセデスに確かな感触を得たものの、予選になると気温の低下にマシンのセットアップが合わず、トップから0.591秒差で5位。ライバルのグリッド降格で繰り上がり、3番グリッドにおさまった。レースではトップのフェルスタッペンがタイヤ交換に手間取っている間に首位を奪ったものの、残り7周でレッドブルにオーバーテイクを許した。チームメイトのジョージ・ラッセルは4番手スタートから、接触による5秒ペナルティーを受けつつもファステストラップを記録、結果5位。(Photo=Mercedes)拡大

タイトル目前のレッドブルに垂れ込める暗雲、そして統帥の訃報

前戦日本GPで2年連続チャンピオンとなったマックス・フェルスタッペン。ホンダの地元である鈴鹿で王座にのぼりつめ、喜びもひとしおとなったであろうレッドブル陣営が次に目指すのは、2013年以来となる久々のコンストラクターズタイトル獲得だ。

ランキング首位独走中のレッドブルと2位フェラーリとの差は165点、アメリカGPでフェラーリがレッドブルより19点上回ってポイントを取れなければ確定という状況。フェラーリが1-2でも、レッドブルが3-4でゴールすればよかったのだから、時間の問題であることは誰も疑っていなかった。

そのレッドブルだが、喜んでばかりもいられない事態になっていた。日本GP直後、FIA(国際自動車連盟)は、2021年シーズンに各チームが予算制限ルール(いわゆるコストキャップ)内で活動できていたかの監査結果を発表。アストンマーティンが手続き上の違反、そしてレッドブルは手続き違反に加え「軽微(マイナー)な支出超過違反」があったことが明らかになったのだ。年間1億4500万ドル(約214億円)という制限下で“軽微”の範囲はその5%未満の超過だが、5%=およそ11億円と聞けば、決して“マイナー”とは言い難い。

昨季のレッドブルはメルセデスのルイス・ハミルトンと死闘を繰り広げ、最終戦アブダビGPでフェルスタッペンがチャンピオンとなった。今回のレッドブルの違反については、メルセデスのみならず、マクラーレンのザック・ブラウンCEOがFIAに書簡で厳罰を求めるなど、ドライバーを含めライバル陣営も厳しい目を向けており、罰金かポイント剝奪かといったFIAの制裁に注目が集まっている。

レッドブルは違反の認否を明確にしていないが、今後FIAに違反を認めればFIAによる制裁等の詳細が公表されることになり、またチームが認めない場合はコストキャップ判定委員会でさらなる審査が行われる。F1における歴史的なルールとなった予算制限、罰の程度によってはその有効性が問われかねないことは言うまでもないだろう。

アメリカGPウイークの土曜日には、エナジードリンクメーカー、レッドブルの共同創業者であり、同社のF1活動にも多大な影響を与えたディートリッヒ・マテシッツの訃報が入った。世界中のさまざまなスポーツ活動、特にF1においてはレッドブルとアルファタウリ(旧トロロッソ)のオーナーシップやドライバー育成などを支えてきた偉大なる後援者の死に、2015年にトロロッソからデビューしたフェルスタッペンは、「彼なしにはここにいることはなかった」と感謝と追悼の意を示していた。

良くも悪くも、今季18戦で14勝してきた最強チームが、この週末の話題をさらっていた。

フェラーリのルクレール(写真)は、パワーユニットの交換による10グリッド降格ペナルティーで12番グリッドからスタート。セーフティーカーのタイミングにタイヤ交換を合わせ込むことができ、表彰台圏内の3位まで上昇してゴール。後方からの挽回、さらに5戦連続のポディウムフィニッシュとなったが、タイヤのデグラデーションという跳ね馬が抱える問題にがっくりと肩を落としていた。ルクレールはドライバーズランキングで再び2位となり、3位セルジオ・ペレスに2点差をつけている。チームメイトでポールシッターのカルロス・サインツJr.は、スタートで出遅れた末にラッセルに追突され、前戦日本GPに続いて1周でレースを終えた。(Photo=Ferrari)
フェラーリのルクレール(写真)は、パワーユニットの交換による10グリッド降格ペナルティーで12番グリッドからスタート。セーフティーカーのタイミングにタイヤ交換を合わせ込むことができ、表彰台圏内の3位まで上昇してゴール。後方からの挽回、さらに5戦連続のポディウムフィニッシュとなったが、タイヤのデグラデーションという跳ね馬が抱える問題にがっくりと肩を落としていた。ルクレールはドライバーズランキングで再び2位となり、3位セルジオ・ペレスに2点差をつけている。チームメイトでポールシッターのカルロス・サインツJr.は、スタートで出遅れた末にラッセルに追突され、前戦日本GPに続いて1周でレースを終えた。(Photo=Ferrari)拡大

サインツJr.、今季3回目のポール

COTAでのアメリカGPも今年で節目の10回目を迎えた。今季はマイアミGP、また来年はラスベガスGPが加わり、ブラッド・ピットを主演としたハリウッドでのF1の映画化も進んでおり、さらに、今週末オースティンのコースに詰めかけたのは44万人にのぼったというのだから、かの地でのF1はかつてないほどの人気を博しているといっていいだろう。

バンピーな路面と強い風がドライバーたちを翻弄(ほんろう)するなか、予選ではフェラーリ対レッドブルの構図でポールが争われ、フェラーリのカルロス・サインツJr.が今季3度目の予選P1を獲得。0.065秒差でシャルル・ルクレールが2位につけフェラーリ1-2となったが、ルクレールはパワーユニット交換で10グリッド降格、12番グリッドに。代わって3番手タイムのフェルスタッペンが最前列からスタートすることとなった。

4番手タイムのセルジオ・ペレスのレッドブルも5グリッドダウンで9番グリッドに。これによりハミルトンが3番グリッド、ジョージ・ラッセル4番グリッドとメルセデス勢がそれぞれ繰り上がり、さらに好調アストンマーティンのランス・ストロールも2つアップして5番グリッドにつけた。

6番グリッドにおさまったマクラーレンのランド・ノリスの後ろには、アルファ・ロメオのバルテリ・ボッタス、ウィリアムズのアレクサンダー・アルボンが続き、アストンマーティンのセバスチャン・ベッテルがトップ10からレースに臨むこととなった。

レース後「このマシンは頑丈だね!」と語ったのはアルピーヌのフェルナンド・アロンソ(写真前)。前を走るランス・ストロールのアストンマーティンに乗り上げ、フロントが浮き上がった状態から路面にたたきつけられ、さらにガードレールにヒット。それでもピットに戻りタイヤとノーズを交換すると変わりない力走を続けて、なんと7位でフィニッシュしたのだ。しかしその後、ハースの指摘を受けたFIA(国際自動車連盟)の技術委員の見解から、10秒のストップ/ゴーペナルティーに相当する30秒が加算され15位に降格。事故のダメージで右ミラーが外れかかった状態で走行を続けていたことが危険であるということがその理由だった。この降格と、マクラーレンのランド・ノリスが6位でゴールしたことを合わせ、アルピーヌはコンストラクターズランキング4位をキープできたものの、5位マクラーレンとの差は6点にまで縮まってしまった。(Photo=Alpine F1)
レース後「このマシンは頑丈だね!」と語ったのはアルピーヌのフェルナンド・アロンソ(写真前)。前を走るランス・ストロールのアストンマーティンに乗り上げ、フロントが浮き上がった状態から路面にたたきつけられ、さらにガードレールにヒット。それでもピットに戻りタイヤとノーズを交換すると変わりない力走を続けて、なんと7位でフィニッシュしたのだ。しかしその後、ハースの指摘を受けたFIA(国際自動車連盟)の技術委員の見解から、10秒のストップ/ゴーペナルティーに相当する30秒が加算され15位に降格。事故のダメージで右ミラーが外れかかった状態で走行を続けていたことが危険であるということがその理由だった。この降格と、マクラーレンのランド・ノリスが6位でゴールしたことを合わせ、アルピーヌはコンストラクターズランキング4位をキープできたものの、5位マクラーレンとの差は6点にまで縮まってしまった。(Photo=Alpine F1)拡大
シンガポールGPで6位&8位、前戦日本GPでも6位と入賞が続いているアストンマーティン。イタリアGPまではランキング9位に沈んでいたが、過去2戦でランキング6位のアルファ・ロメオに7点差と迫る7位にまで上昇していた。アメリカGPでは、ランス・ストロール6番グリッド、セバスチャン・ベッテル(写真)10番グリッドと入賞圏内からスタート。ストロールはアロンソとの接触でクラッシュしリタイアとなる一方、ベッテルはセーフティーカーが好機となって上位に顔を出し、一時はレースリーダーとして走行。彼の通算リードラップ数は3500周を超えることとなった。タイヤ交換に手間取り順位を落としたが、ファイナルラップでハースのケビン・マグヌッセンと激しくやりあい見事8位。さらに前のアロンソがペナルティーで15位に降格したことで7位に繰り上がった。これでアルファ・ロメオとの差を1点にまで縮めたアストンマーティン。この勢いに、ベッテルの引退の決断は早すぎたのではないか、と思うファンも多いかもしれない。(Photo=Aston Martin)
シンガポールGPで6位&8位、前戦日本GPでも6位と入賞が続いているアストンマーティン。イタリアGPまではランキング9位に沈んでいたが、過去2戦でランキング6位のアルファ・ロメオに7点差と迫る7位にまで上昇していた。アメリカGPでは、ランス・ストロール6番グリッド、セバスチャン・ベッテル(写真)10番グリッドと入賞圏内からスタート。ストロールはアロンソとの接触でクラッシュしリタイアとなる一方、ベッテルはセーフティーカーが好機となって上位に顔を出し、一時はレースリーダーとして走行。彼の通算リードラップ数は3500周を超えることとなった。タイヤ交換に手間取り順位を落としたが、ファイナルラップでハースのケビン・マグヌッセンと激しくやりあい見事8位。さらに前のアロンソがペナルティーで15位に降格したことで7位に繰り上がった。これでアルファ・ロメオとの差を1点にまで縮めたアストンマーティン。この勢いに、ベッテルの引退の決断は早すぎたのではないか、と思うファンも多いかもしれない。(Photo=Aston Martin)拡大

スタートでフェルスタッペンがトップ、サインツJr.はリタイア

予選後にポールシッターのサインツJr.が口にしていた「レッドブルがフェラーリをつかまえる可能性」が、早々に示された。56周レースのスタート、抜群の滑り出しでフェルスタッペンがトップでターン1に進入。一方出遅れたサインツJr.は、後ろから来ていたラッセルと接触しスピン、ピットに戻ってリタイアとなってしまったのだ。この後ラッセルには接触の5秒加算ペナルティーが科され、表彰台のチャンスも遠のくことになった。

フェルスタッペンに続いたのは2位ハミルトン、3位ストロール、4位ラッセル、5位ベッテル、6位ノリス、7位ペレス。このなかでペレスは2周目に6位、程なくして5位、そして6周目には4位と着々とポジションアップし、12番手スタートのルクレールも6周目には7位まで挽回していた。

フェルスタッペンのリードが4秒以上に開いた13周目、2位ハミルトンがピットに入り、ミディアムタイヤからハードに履き替えると、翌周にはフェルスタッペン、ラッセル、さらに15周目にはペレスもハードにスイッチ。このタイミングでピットストップをがまんしたルクレールやベッテルは、18周目にボッタスがスピン、グラベルにつかまってリタイアしたことでセーフティーカーが導入されるという幸運に恵まれることになり、それぞれ上位にジャンプアップすることになる。

22周目にはレース再開となるも、ストロールのリアタイヤに乗り上げるかたちでアロンソが接触、アルピーヌのフロントが宙に浮いた後に路面にたたきつけられ、ガードレールにも当たるというヒヤリとする事故が発生し、再びセーフティーカーの出番が回ってきた。奇跡的にも大事にはならなかったアロンソは、そのままピットに戻りノーズを交換すると7位でゴール。しかしレース後、ミラーが外れかかった状態で走行を続けていたことを危険とみなされ、30秒加算のペナルティーで15位に降格されてしまうのだった。

アルファタウリの角田裕毅(写真前)は10位でフィニッシュ、アロンソの降格で9位となり、5月の第6戦スペインGP以来となる13戦ぶりの得点となった。予選ではトラックリミットを越えてタイム取り消しとなるも、マシンの調子には不満をあらわにしQ2敗退の15位。ギアボックス交換で19番手と後方からのスタートとなった。レースでは順調にポジションを上げ、終盤はウィリアムズのアレクサンダー・アルボンをオーバーテイクし、今季4回目の入賞を果たした。ピエール・ガスリーは、11番グリッドから13位完走。コンストラクターズランキング9位と低迷しているアルファタウリ、8位ハースとのポイント差は2点である。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
アルファタウリの角田裕毅(写真前)は10位でフィニッシュ、アロンソの降格で9位となり、5月の第6戦スペインGP以来となる13戦ぶりの得点となった。予選ではトラックリミットを越えてタイム取り消しとなるも、マシンの調子には不満をあらわにしQ2敗退の15位。ギアボックス交換で19番手と後方からのスタートとなった。レースでは順調にポジションを上げ、終盤はウィリアムズのアレクサンダー・アルボンをオーバーテイクし、今季4回目の入賞を果たした。ピエール・ガスリーは、11番グリッドから13位完走。コンストラクターズランキング9位と低迷しているアルファタウリ、8位ハースとのポイント差は2点である。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大
エナジードリンクメーカー、レッドブルの共同創業者であるディートリッヒ・マテシッツ(写真)が78歳で逝去した。1984年にタイ人チャリアオ・ユーウィッタヤーとレッドブルを創業した彼は、ビジネスの拡大とともに世界中のさまざまなスポーツ活動に積極的にかかわり、F1には1995年にザウバーのスポンサーとして参画。2004年末にフォードからジャガーチームを買収、翌年レッドブルとして参戦してからは、2010年からセバスチャン・ベッテルを擁して破竹の4年連続ダブルタイトル獲得、2021年にはマックス・フェルスタッペンが5つ目のドライバーズタイトルを取るほどの強豪チームへと育てあげた。また2006年にはミナルディを買収してトロロッソ(現アルファタウリ)としてジュニアチーム化、F1のグリッド減少に歯止めをかけたほか、オーストリアGPの復活や才能あるドライバーの輩出など、F1における貢献は枚挙にいとまがない。アメリカGP前には、彼の功績をたたえてセレモニーが行われ、「ダンケ・ディディ」のメッセージとともに、すずなりのスタンドからは大きな拍手が巻き起こった。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
エナジードリンクメーカー、レッドブルの共同創業者であるディートリッヒ・マテシッツ(写真)が78歳で逝去した。1984年にタイ人チャリアオ・ユーウィッタヤーとレッドブルを創業した彼は、ビジネスの拡大とともに世界中のさまざまなスポーツ活動に積極的にかかわり、F1には1995年にザウバーのスポンサーとして参画。2004年末にフォードからジャガーチームを買収、翌年レッドブルとして参戦してからは、2010年からセバスチャン・ベッテルを擁して破竹の4年連続ダブルタイトル獲得、2021年にはマックス・フェルスタッペンが5つ目のドライバーズタイトルを取るほどの強豪チームへと育てあげた。また2006年にはミナルディを買収してトロロッソ(現アルファタウリ)としてジュニアチーム化、F1のグリッド減少に歯止めをかけたほか、オーストリアGPの復活や才能あるドライバーの輩出など、F1における貢献は枚挙にいとまがない。アメリカGP前には、彼の功績をたたえてセレモニーが行われ、「ダンケ・ディディ」のメッセージとともに、すずなりのスタンドからは大きな拍手が巻き起こった。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大

リードするメルセデス、襲いかかったチャンピオン

2度目のセーフティーカーが26周目に引っ込むと、レースはフェルスタッペンを先頭に2位ハミルトン、3位ペレス、4位ルクレール、5位ラッセル、6位ベッテルといったオーダーで再開。この時点でピエール・ガスリーが7位、角田裕毅は8位とダブル入賞が期待できるポジションにいたアルファタウリ勢は、ガスリーがセーフティーカーでの車間距離違反によりペナルティーが加えられ結果14位となるも、角田は10位でチェッカードフラッグ。アロンソの降格で9位に繰り上がり、5月の第6戦スペインGP以来となる久々の入賞を遂げるのだった。

29周目、3位ペレスの真後ろにつけたルクレールはレッドブルにオーバーテイクをしかけたがコースオフ。次のラップでは3位の座を奪うことができたものの、フェラーリはタイヤのデグラデーション(劣化)に足を引っ張られ、さらに上を目指せないでいた。

そんな折、トップをひた走るフェルスタッペンに勝負を挑んだのは、今季まだ勝利のないシルバーアローだった。35周目、2位ハミルトンが2度目のピットストップでハードからハードへつなぐ一方、翌周にタイヤをミディアムに変えたフェルスタッペンは交換作業に手間取り、ハミルトンとルクレールに先行を許すかたちとなったのだ。

めずらしいチームのミスに「すばらしいね」と皮肉を口にするフェルスタッペンは、39周目にフェラーリを背後に追いやると、今度は4秒先の首位ハミルトンを追いかけた。

残り15周、ハミルトンとフェルスタッペンの差は2.7秒。一周あたり0.5秒前後詰めてくるレッドブルに対し、メルセデスもペースアップして踏みとどまらんとしていたが、ストレートが速いレッドブルと、逆に遅いメルセデスでは力の差が大きかった。あと7周というところでメルセデスのインをついたレッドブルがトップ奪還に成功。フェルスタッペンは最終的に5秒も差をつけて、真っ先にゴールするのだった。

今季初Vを逃したハミルトンが2位、ルクレール3位、そしてペレスが4位に入り、これでレッドブルのコンストラクターズタイトルが確定。さらにフェルスタッペンは、ミハエル・シューマッハーとベッテルが持つシーズン最多勝記録「13」に並び、今季残る3戦でひとつでも勝てば新たなレコードを手にすることができるまでになった。

「この勝利をディートリッヒに」と亡き恩人にささげたのはフェルスタッペン。2013年以来となるダブルタイトルを獲得したレッドブルのメンバー、またライバルの奮闘ぶりも、このスポーツをこよなく愛した男は目を細めて見守っていたに違いない。

次の第20戦メキシコGP決勝は、10月30日に行われる。

(文=bg)

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