マセラティMC20チェロ(MR/8AT)【海外試乗記】
地上の楽園 2022.11.08 アウトビルトジャパン イタリアが生んだ天空のボディービルダー。「マセラティMC20チェロ」は、太陽に向かって開かれているだけでなく、マッスルカーのなかでも最もイタリア的な存在だ。そんな630PSのスパイダーをシチリアで初ドライブ!※この記事は「AUTO BILD JAPAN Web」より転載したものです。
天国以外のなにものでもない
「MC20」に続き、マセラティはMC20チェロで、地上の楽園を発表する。なぜなら、イタリア語から翻訳された「チェロ(Cielo)」は、天国以外のなにものでもないからだ。そして、それはあらゆる面で真実なのだ。
チェロは、50km/hまでならわずか12秒でルーフを開閉することのできるスパイダーであるだけでなく、センターコンソールの10.25インチスクリーンにタッチすると、PDLC(ポリマー分散液晶)技術によってまるで魔法のようにルーフを暗くしたり、透明にしたりすることができるようになっている。
21万6000ユーロ(約3200万円)からというこのスーパーカーを購入できる人にとっては、本当の天国といえるだろう。オーナーは、車内のアイスコーヒーを見る、道ゆく人の視線を感じることだろう。マセラティのデザイナーは、イタリア版マッスルカーともいうべきクルマをつくることに成功した。クーペとは異なり、ショルダー部つまりマッドガードはリアでさらに3cmほどフレアしている。背面にはボディービルダーの僧帽筋をイメージした2つのコブがある。
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ステロイドなんか必要ない
そして、それこそがイタリア人の秘密である。彼が放つパワーは、ステロイドやアナボリックステロイドをたっぷり使ったかのような印象を与えないのだ。筋肉質な表面を破壊するような、威圧的なスポイラーなどの空力的な付加物は一切ない。そんなものは必要ない。このままでも100km/hを超えるとリアアクスルに100kgのダウンフォースを確保することができるのだ。
そしてこのスポーツカーを動かす心臓は? それはクーペにも搭載されているマセラティの自社開発エンジン「ネットゥーノ」である。90度6気筒ツインターボは、3リッターの排気量から630PSのパワーを引き出し、730N・mの最大トルクを発生させる。5つの走行モードにより、パッセンジャーに優しい乗り心地優先の走りから、スポーティーな走行まで、ドライバーが意のままに決めることができるようになっている。デフォルト設定では「GT(グランツーリスモ)」モードでスタートする。
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スポーツモードで楽しむ
より一層楽しみたいときは、非常に狭いセンターコンソールにある大きなロータリーコントロールを右に少し回すと「スポーツ」になる。8段デュアルクラッチトランスミッションは、6段のギアしか使用しない。7速と8速はオーバードライブで、燃費を気にするときに使うギアだ。走りを楽しむうえでギアは6枚で十分だ。ギアを、スピーディーにミリ秒単位で上下させる、それが快感なのだ。
さらに、ドライブモードスイッチをもう一段階右に回すか、2秒間押し続けるだけで、さらにモードを変化させることができる。そのモードは「コルサ」、つまりレーシングモードで、クルマがひたすら速く走りたがる。F1の技術である2本のスパークプラグによるプレチャンバー燃焼システムは、両段にわたって点火し、排気バルブは常に開いた状態になっている。また、電動ルーフによって65kg重量が増したにもかかわらず、チェロがいかに優れたバランスを持っているかも明らかになった。
カーボンブレーキはドライバーにコントロールを委ねるセッティングになっていて、1.6tのシエロを急停止させるには、かなりの踏力が必要だ。
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0-100km/はわずか2.9秒
ちなみに、ここで言う全速力とは、320km/h以上のことだ。2.44kg/PSというパワーウェイトレシオで、停止状態から100km/hに到達するまでわずか2.9秒、200km/hには9.2秒で到達する。トラクションコントロールはレースモード、サスペンションやギアシフトの設定もレースモードだ。いずれにせよ、アルカンターラ表皮のステアリングホイール上のカーボンパドルを操ることによりシフトポイントを自分で操作するのが今風だ。
ターボは夢のように素直に息を吹き込む。まるで250kgを持ち上げるボディービルダーのような重い息づかいだ。人工的な添加物なしに、2本の強大なテールパイプからのギアシフトが、聞きたい人の耳にも、聞きたくない人の耳にも届くのだ。人によってはやりすぎだと思うかもしれない。でも、それがチェロには合っている。そのキャラクターは、走行プログラムやドライバーの意思によって、静かな鳴き声から熱狂的な咆哮(ほうこう)まで、さまざまに変化する。
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ESC-Offを楽しむならサーキットで
「コルサ」の上には、「ESC-Off」と呼ばれるシンプルなもうひとつのドライビングプログラムがある。もちろん、横滑り防止機能はすべて解除される。右足で荷重をかけすぎると、タイヤを鳴らしながらスピンするのは間違いない。サーキット以外ではおすすめできないモードだ。また、ドライバーの前にある10.25インチのデジタルスクリーンには、ブレーキ力とアクセルペダルで呼び出したパワーがパーセントで表示される。
デジタルのスクリーンは、センターコンソールにあるものはドライバーのほうを向いているが、視界を確保するために少し低い位置にある。また、ミニマリズムを追求したインテリアは、やや疎ましく感じられるほどだ。氷と表現されるダッシュボードのツートンカラーのアルカンターラトリムも、その助けにはならない。しかし、ステアリングホイールは、それ以上に印象的だ。前述のリッチ感やそれによるグリップ感だけでなく、左スポークの下にある青いスタートボタンもその理由だ。
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純エンジン車のマセラティを望むなら
また、ステアリングホイールのボタンで地上高を上げることも可能だ。これはオプションだが、シチリア島でのテストドライブ時には非常に役に立った。40km/hまではフロントアクスルが50mm高くなる。速度を超えると、また下がる。
マセラティは、当然のことながらMC20とMC20チェロのおかげでブランドが上昇気流に乗ることを望んでいる。近い将来には純電気自動車のMC20も登場し、フロントとリアのモーターによってエミッションフリーの全輪駆動スポーツカーとなる予定だ。そして、それが、トライデントの未来なのだろう。つい先ごろ、2025年からはe-carのみを製造するという発表があった。
だから、もう1台、本当の内燃機関のマセラティのスーパースポーツカーで、ルーフの開くモデルが欲しいのであれば、MC20チェロを狙うべきだろう。
(Text=Holger Preiss/Photos=Maserati SpA)
記事提供:AUTO BILD JAPAN Web(アウトビルトジャパン)
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AUTO BILD 編集部
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