「レクサスRX」の“売り方”に見る自動車セールスの諸問題
2022.12.12 デイリーコラム価格までレベルアップ!?
レクサスにとって真の大黒柱となるモデルが「RX」。1998年に北米で発売されて以来、累計で350万台以上を販売。現在はブランドを展開する95の国と地域で扱われており、数の面では弟分の「NX」とツートップを構成しています。日本でも2代目までは「ハリアー」として、3代目以降はRXとして展開されてきたのはご存じのとおりです。
その5代目となる新型が7年ぶりのフルモデルチェンジを受けて、2022年11月、国内で販売開始となりました。が、今までとはちょっと異なる反応が見られます。それは大きく分けて2つ、価格と納期です。
まずは価格。単純に先代RXの価格帯は524万~796万円だったのに対して、新型は664万~900万円。桁が違うとは言わずとも100万円レベルの値上がりにも見えなくはありません。
とはいえ新型は、GA-Kプラットフォームを採用しパワートレインも一部刷新されるなど、コンストラクションが大幅に変わっているのも事実。加えて一番の売れ筋となりそうな2.5リッターハイブリッドの「RX350h」が、供給問題から日本市場にラインナップされていないことも影響しています。
売れ筋の近しい同士を比べてみると、先代の「RX300“バージョンL”」と新型の「RX350“バージョンL”」との価格差は49万円。エンジンが2リッターターボから2.4リッターターボにスイッチされてATも6段から8段に、インフォテインメントやADASの強化、そして異常な円安のなか、ダンピングを指摘されない程度の内外バランスも鑑みてあげると、まぁ納得できる価格差かなぁとも思わなくもありません。ちなみにこの両グレード、前型に対して馬力は上がっているのに車重は軽くなっていますから、それだけでも動力性能は新型がひと回り上であることが予想されます。
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「一見さん」だけいらっしゃい
そしてもうひとつが今回の話のポイントでもある納期。半導体の問題もようやく落ち着きがみえてきて、2023年あたりからは完成車生産も前向きに検討できるようになってきたという話もありますが、部品の供給不足もネックとなっており、人気車種の販売は厳しい状況が続いています。
新型RXもしかりでして、年単位の“待ち”は確実と目されているようです。現在、その工場出荷めどについては「各販売店にお問い合わせください」の扱いになっており、増産もままならないことは暗に察せられます。
そんななか、新型RXのオフィシャルサイトを見ると、一般販売のほかに抽選販売の枠が500台分あることが記されています。で、この枠に応募できる条件というのが一風変わっているのです。それは「初めてレクサス車の購入を検討されている方」というもの。具体的条件は下記のようになります。
- レクサス車を現在所有していないこと、または、過去に所有したことがないこと。
- レクサス車以外の自動車を本車両に対する下取りに入れること。
- 残価設定販売やリース、KINTOなどローン契約を介して購入すること。
- 個人名義で抽選申し込みすること。
- 以上の全項目の合致を誓約する書面を販売店に提出すること。
……と、字面にするとちょっと物々しい感じ。そして当選時には販売店にて直接対面での商談が求められ、契約できるグレードや装備には縛りもあり……と、表面だけを見ると、なにさまですかとツッコまれそうな内容です。でも現在の市況を知る人なら、このややこしい話が、二重・三重の転売防止策であることに気づくかと思います。
暗躍する「転売ヤー」
いやいやiPhoneやロレックスならまだしも、クルマで転売ってどういうこと? と言われるかもしれませんが、実際に特定の銘柄はそういう状況にありまして、コロナ禍で商品が安定供給できなくなったこの2年ばかりはそれが顕著になっています。定価と市価の乖離(かいり)した一部の輸入車は1台転がすだけで数百万円の利ざやが抜けますし、有名ミニバンの特定エンジン&グレードともなれば、組織化した転売業者が束で新車を発注し東南アジアに流す、なんて事例もあるほどです。
転売はよほど悪質なものでもなければ法律で取り締まることが難しい一方で、まわりまわって自らのブランド価値の毀損(きそん)につながりますから、メーカー側も必死でそれを阻止しようとします。ましてやRXのように国際的に人気の車種は彼らの格好の的。入手のスピードによって利ざやも大きく変動しますから、あちらさんも本気でかかってくることでしょう。
そういう良からぬやからにではなく、純粋にRXに、レクサスに乗ってみたいというお客さんにできるだけ早くブツを届けたい。このややこしい販売方法は、現在の販売現場がひねり出した苦肉の策ということになるのでしょう。拙も先日、1年以上かけて応募しまくっていた「PS5(PlayStation 5)」販売の抽選にやっとこさ当選しましたが、『グランツーリスモ7』の購入時特典の使用期限は既に終わっており、1億相当の(ゲーム内で使える)クレジットがパーになりました。転売ヤーの皆さんが群がるようなアイテムとは無縁の人生ですが、そのウザさを身をもって知ったところです。
(文=渡辺敏史/写真=トヨタ自動車、webCG/編集=関 顕也)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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