輸入車の値上げが続いた2022年、どのブランドが売れていた?
2023.01.16 デイリーコラム大幅値上げはタダじゃすまない
世の中には「値上げをしようが何をしようが売り上げが下がらないどころか、むしろ増収になったりする」というお店があるいっぽう、「ちょっと値上げをすると、途端に客足が遠のく」というお店もある。
そしてそれは輸入車においてもまったく同様だ。ご承知のとおり2022年、多くの輸入車は新車価格がどえらく上昇したわけだが、それが販売台数にどう影響したかは、ブランドによって異なる。値上げに伴って販売台数をどえらく減少させたブランドがあるいっぽう、値上げの影響をみじんも感じさせない、絶好調なブランドもあるのだ。
要は「商品力・ブランド力の強弱」ということかと思うが、輸入車ブランド各位のみならずわれわれも、人生における自身の商品力・ブランド力はぜひとも向上させたいものである。なぜならば、自分自身に猛烈な商品力さえあれば、自営ビジネスにおいても転職市場においても「不景気? 年金破綻? それって何のことですか?」と涼しい顔をしていられるからだ。
ということで、日本自動車輸入組合(JAIA)が集計した2022年1月~12月の「外国メーカー車新規登録台数および前年比」をカーガイとしての視点で眺めるとともに、今後の人生戦略の参考にしてみたいと思う。
まず、2022年の大幅値上げに伴って台数を大きく減らしたブランドの代表格はジープだ。前年比は実に69.1%。……もしも私が営業本部長であったなら、思わず切腹したくなる数字である。
販売の中心となる「ジープ・ラングラー アンリミテッド」は、2020年の販売台数は前年比+18%と好調で、2021年も、4月と8月に少々の値上げを行ったものの、依然好調ではあった。だが2022年。「アンリミテッド サハラ」の場合で6月に23万円の値上げを行い、その2カ月後にすぐさま103万円もの大幅値上げを行ったことで、「顧客が寄りつかないお店」に変わってしまったもようだ。
原材料費の高騰や為替レートの変動など、ジープの大幅値上げには「仕方なかった」という部分もかなり大ではある。とはいえ「103万円の値上げをしても、顧客は喜んでついてきてくれるはず」との見通しがあったなら、結果として“過信”だった。われわれも、自尊のマインドを持つことはもちろん重要だが、過信だけはしないように気をつけたいものである。
わざわざ買いたいクルマかどうか
2022年中に値上げをした輸入ブランドのなかでは、ジープ以外でもBMW、アウディといったドイツ勢の前年比が低下している。アウディの92.1%はまあいいとしても、BMWの86.0%という前年比には、もしも私が営業本部長だったらおなかをこわすだろう。
アウディもそうだが、特にBMWについては深刻というか微妙な問題がある。
BMWは明確にプレミアム寄りなブランドであるにもかかわらず、そのブランドは今、けっこうコモディティー化してしまっている。「猫も杓子(しゃくし)も白の現行型『3シリーズ』」的な状況が、特に東京23区などの大都市圏で出来上がってしまったため、BMWというブランドにバリューを感じにくくなっているのだ。機械としてのBMW車は昔と変わらずハイバリューだが、機械の価値や出来にいちいちこだわるのはハードコアなカーマニアのみ。多くのユーザーは“イメージ”でのみ購買行動を決定するため、「猫も杓子も」になってしまったのはまあ許すとしても、それが値上げされたとなると「それなら、わざわざ買わなくても……」と思ってしまうのである。
完全に成熟市場となった日本では、この「わざわざ買いたい」という気持ちを相手方にどれだけ感じさせられるかが、相対的にプレミアム寄りなプロダクトである輸入車や、われわれ自身のビジネス上の生死を分ける。それが「わざわざ買いたい」と思うようなものでないとしたら、誰が割高な輸入車など買うだろうか。そして誰があなたのお店で買い物をしたり、あなたという人材を巨大な転職市場からピックアップするだろうか。
唯一無二のものが勝つ
BMWほどではないが、前年の91.5%にまで落ちてしまったフォルクスワーゲンについても、(輸入車としては)あまりにも数が売れてしまった過去があるためにブランドイメージが希釈され、「値上げをすると売れにくくなる」という構造を内在するに至った。「拡販」と「ブランドイメージの向上」という相反する問題を今後どう解決していくべきかは、私ではなく、経営学修士をお持ちの偉い各位にお任せしたいが、いずれにせよ微妙で頭の痛い問題である。
これらブランドのほかプジョー、ジャガー、ランドローバーなどが値上げによって(?)前年より数を減らしたのに対し、値上げをしたにもかかわらず前年の登録台数を上回ったのが下記のブランドだ。
- ランボルギーニ:124.9%(数字は前年比。以下同)
- フェラーリ:115.1%
- ルノー:112.4%
- ベントレー:108.3%
- アバルト:106.3%
- BMW MINI:105.5%
- キャデラック:104.3%
……見てのとおり、どれも「似たようなモノや代わるもの」がほかにないがゆえに「わざわざ買いたい」または「これを買うしかない」と、人に思わせるブランドばかりである。結局のところ、勝ち筋とは「ワン&オンリーな存在」になるほかないのだ。
とはいえワン&オンリーなレアキャラになると、それに伴って「市場規模が小さくなる」という副作用も起こりうる。その場合はフェラーリやランボルギーニ、あるいはベントレーのように「少ない数が売れるだけでもちゃんともうかる客単価に設定し、その単価に見合うだけのバリューを提供する」という必要はあり、それはそれでけっこう難しいオペレーションではあるのだが。
いずれにせよ「外国メーカー車新規登録台数」のデータをとっかかりに、私を含む全人類のビジネス人生がより良きものとなることを、祈念いたします。
(文=玉川ニコ/写真=ステランティス ジャパン、アウディ ジャパン、メルセデス・ベンツ日本、マセラティ ジャパン、ロールス・ロイス・モーターカーズ、webCG/編集=関 顕也)

玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
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