もうすぐ発売「デリカミニ」 人気の秘密はどこにある?
2023.01.23 デイリーコラム見たらコロリと欲しくなる
東京オートサロン2023で実車を見るまでは、比較的冷めていた。「しょせんは『デリカ』風味の“なんちゃって”だろ?」と。だが会場で「三菱デリカミニ」の実車をつぶさに見て、考えを変えた。「これはイイかもしれないし、なんなら自分も1台欲しいかも……!」と。
三菱デリカミニとは散々各所で報道されているとおり、2023年5月に発売される予定の三菱製スーパー軽ハイトワゴン。「DAILY ADVENTURE(日常に冒険を)」をテーマとした内外装デザインはSUVテイストを強く感じさせる意匠で、前後バンパーの「DELICA」ロゴや黒いホイールアーチ、スキッドプレートをモチーフにしたバンパー装飾などにより、デリカシリーズならではのタフなイメージが表現されている。
パワーユニットは排気量0.66リッターの自然吸気エンジンと同ターボエンジンの2種類で、ともにマイルドハイブリッド機構を搭載。駆動方式はFFと4WDを用意し、後者については165/60R15サイズの大径・高偏平タイヤと専用チューニングのショックアブソーバーの組み合わせにより、砂利道などの未舗装路でも安定して走れる走行性能を実現しているという。さらには「グリップコントロール」や「ヒルディセントコントロール」も標準装備し、悪条件下でのドライブを支援するサポート機能も充実している――というのは2023年1月13日付のwebCGニュースのほぼコピペだが、そんな三菱デリカミニの走行性能や走行フィールについては(まだ試乗車がないので)まったくわからず、想像してみるほかない。
決め手は「程よい苦味成分」
筆者が「これはイイかもしれないし、なんなら自分も1台欲しいかも……!」と思ったのは、「デザインの良さと存在感の強さ」が事前の想像をはるかに超えていたからだ。
三菱デリカミニと競合するのは「スズキ・スペーシア ギア」と「同スペーシア ベース」、および「ダイハツ・タント ファンクロス」あたりであろう。
三菱デリカミニのエクステリアデザインをスズキ・スペーシア ギアと比較するのであれば、デリカミニのデザインは「程よい苦味成分」において、スペーシア ギアを上回っている。スペーシア ギアのポップなかわいさもかなりすてきではあるのだが、アウトドアシーンにおいてはデリカミニの苦味成分のほうが「より効く感じ」をユーザーに与えるはずなのだ。
商用車カテゴリーではあるが、同じくスズキの「スペーシア ベース」と比べるのであれば、スペーシア ベースの巨大なフロントグリルは“強さ”を想起させるなかなか良きものではある。だが軽カテゴリーにおける強さの主張には、どこか滑稽さも伴うものだ。しかしデリカミニのデザインにおける強さの主張=苦味成分はあくまで程よいレベルのものであるため、そこには滑稽さを感じにくいのである。
そういった意味では、ダイハツ・タント ファンクロスのフロントデザインは「オフロードイメージ車としてちょうどいいあんばいの強さ」であると思えるため、三菱デリカミニと好勝負を展開する。だが、そこでも(筆者の脳内における)勝者はデリカミニだ。タント ファンクロスは、その特徴である6連のフルLEDヘッドランプがどこかチャラいというか、“舗装路っぽさ”を感じさせてしまうのだ。
そしてさらに存在する三菱デリカミニのストロングポイントは、歴代デリカとの“血筋感”である。
ブロックタイヤで悪路に行かないユーザーに
デリカミニが、歴代デリカの機構面をどれほど継承しているかは定かではなく、まぁおそらくはほとんど継承していないのだろう。
また「4WD車では大径タイヤを装着して最低地上高を高めるとともに、専用チューニングのショックアブソーバーを採用。荒れた路面でも安心感のある操縦性と快適な乗り心地を実現している」とのことではあるが、それにしたってカテゴリーとしての限界はあるため、デリカミニは決して「スズキ・ジムニー」のようなニュアンスで荒野を駆け巡ることができる軽自動車ではない(たぶん)。
だがしかし、正式な車名として堂々とうたわれる「デリカ」の名と、前後バンパーに誇らしげに刻まれた「DELICA」のロゴに、われわれの幻想はいや応なしに刺激されるのだ。「このクルマが本格オフローダーではないことは知っているが、それでも他の“なんちゃって”よりは、やってくれるのではないか……?」と。人は主に事実ではなく幻想に基づいて生きているため、三菱デリカミニの実力がその幻想を派手にぶっ壊すほど低レベルなものでない限り、それで十分なのである。
また三菱デリカミニには「化粧映えがかなりいい!」というストロングポイントもある。
webCGのFacebookページにて、編集部のほった君が「車高を上げてブロックタイヤを履かせたら、大抵のクルマはカッコよくなるもの」という意味のことを言っていた。それは確かにそのとおりではあるのだが、三菱デリカミニにトーヨータイヤの「オープンカントリー」というブロックタイヤを履かせた場合の“飛距離”は、他の類似車が同様のことを行った場合の比ではないというのが、筆者の率直な印象だ。
極めてあんばいと趣味が良いエクステリアデザインに対し、三菱デリカミニのインテリアデザインは現状やや物足りないというか、つまらないように、筆者には感じられる。だがそこについても「カスタム次第の伸びしろ部分である」ととらえれば、購入後の楽しみも増えるというものだろう。
ハードコアな山岳走行をするのではなく、ブロックタイヤに換装したうえで「ちょっとした山や河原などへ行ってコーヒーなどを入れ、静かでぜいたくな時間を過ごす」というような使い方。そんな使い方を志向するユーザーに三菱デリカミニはバカ売れしそうであり、そういう筆者も冒頭で申し上げたとおり「これはちょっと欲しいかも……!」と、強烈に思っている真っ最中だ。
(文=玉川ニコ/写真=webCG/編集=関 顕也)
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玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
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