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話題の「三菱デリカミニ」が出だし好調! それで軽市場は今後どうなる?

2023.02.13 デイリーコラム 玉川 ニコ

いずれ三菱の顔になる!?

2023年5月に発売が予定される「三菱デリカミニ」の先行予約状況は、かなり好調であるらしい。受け付け開始の同年1月13日から1月31日までの約2週間で4000台の受注があったというのだ。

2023年1月に最も多く出た三菱車はといえば、2183台の「eK」シリーズ(「eKクロスEV」は除く)で、次点は1685台が登録された「アウトランダー」。そのほかには、大ベテラン「デリカD:5」(同1571台)以外にめぼしいモデルはないがゆえに、デリカミニは、今後の三菱を支える“屋台骨”になる可能性だってある。

そして三菱デリカミニは、三菱自動車だけではなく2023年の軽乗用車市場全体を底上げする起爆剤――というほどではないかもしれないが、「まずまずの材料」になるだろうと、筆者は読んでいる。

デリカミニに先行して発売された同種の軽オフローダー(風味)である「ダイハツ・タント ファンクロス」との間で若干のカニバリ(食い合い)が起こる可能性はあるだろう。つまり、この種のクルマを欲するライトなアウトドア志向者の購買行動が、タント ファンクロスとデリカミニとの間で二分されてしまうということだ。

いや二分どころか、ボディータイプは若干異なるものの古豪である「スズキ・ハスラー」や、商用車枠の「スズキ・スペーシア ベース」といった強豪も存在するため、5月に発売されるデリカミニの登録台数が、そっくりそのまま軽乗用車市場の数字を押し上げるとは考えにくい。当然ながら、それらとのカニバリも起きるわけだ。

だが、そんな若干の食い合いなどものともしないペースで、世の中の「軽度なアウトドア志向」は進んでいる。

2023年1月13日に予約注文受け付けが始まった、三菱の新型軽「デリカミニ」。ベースとなっているのは「eKクロス スペース」で、タフなルックスと多機能性で人気を集めている。
2023年1月13日に予約注文受け付けが始まった、三菱の新型軽「デリカミニ」。ベースとなっているのは「eKクロス スペース」で、タフなルックスと多機能性で人気を集めている。拡大
兄貴分の「デリカD:5」(写真左)とのツーショット。「デリカ」の名称こそ共通しているものの、こうして見ると両者はさほど似ていない。
兄貴分の「デリカD:5」(写真左)とのツーショット。「デリカ」の名称こそ共通しているものの、こうして見ると両者はさほど似ていない。拡大
「デリカミニ」のライバルと目される「ダイハツ・タント ファンクロス」。こちらのデビュー時の先行受注数は「2カ月で7000台」で、数字のうえでは今回のデリカミニといい勝負だった。
「デリカミニ」のライバルと目される「ダイハツ・タント ファンクロス」。こちらのデビュー時の先行受注数は「2カ月で7000台」で、数字のうえでは今回のデリカミニといい勝負だった。拡大
「デリカミニ」のボディーカラーは全12種類と豊富。写真の「アッシュグリーンメタリック」とは対照的な、赤系やオレンジ系のカラーも選択できる。
「デリカミニ」のボディーカラーは全12種類と豊富。写真の「アッシュグリーンメタリック」とは対照的な、赤系やオレンジ系のカラーも選択できる。拡大
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“タフな軽”には追い風

家族でおめかしして都心の商業施設などへ出かけるのも悪くないが、それ以上に、Coleman(コールマン)やTHE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)などのちょっとすてきなギアやウエアとともに、クルマで河原やキャンプ場などに行き、他者とあまり近接することなくお湯を沸かして茶をしばきたい――というような志向が亢進(こうしん)している昨今では、若干のカニバリを上回る勢いで「デリカミニ的な軽乗用車」が売れることになるのだ。

ここで多くの人が疑問に思うのが「そのとき売れるのは“軽”なのか? いわゆる普通車のクロスオーバーモデルではないのか?」ということだろう。

もちろん、普通乗用車枠のクロスオーバーSUVもよく売れるだろう。「どれが何台売れる」などという“予言”はできないが、まぁCセグかBセグあたりの国産クロスオーバーSUVが堅調に売れ続けるだろうことは間違いない。

しかし、だからといって「そのぶんだけ軽のオフローダー(風味)が売れなくなる」という可能性はほとんどない。なぜならば、

  • 一般的家庭における可処分所得の減少傾向
  • どこまで上がり続けるともわからぬ社会保険料と各種の税金
  • 前述した「軽度なアウトドア志向」の亢進
  • 軽乗用車全般の基本品質の向上
  • 自動車趣味における「本格志向」の低下傾向

といった諸条件を鑑みると、「クルマは軽でいいし、軽を買うならオフロードっぽいやつがいいよね」と考えるユーザーが――増えるかどうかは別として――大きく減ることはほぼ考えられないからである。

だが、さらにここでwebCGをお読みの各位が思うのは「……軽でいいの? まぁ軽でもいいんだけど、オフロードに行きたいなら『ジムニー』とかの本格派にしたほうがいいんじゃない? 生活ヨンクじゃどうにもならないでしょ?」ということだろう。

ご指摘にはもっともな部分が大ではあるものの、同時に間違ってもいる。

「デリカミニ」で気軽にキャンプ、のイメージ。気負わずに乗れるオフロード風味の軽乗用車は、こうした“軽度のアウトドア”にぴったりだ。
「デリカミニ」で気軽にキャンプ、のイメージ。気負わずに乗れるオフロード風味の軽乗用車は、こうした“軽度のアウトドア”にぴったりだ。拡大
コールマンなどのしゃれたアウトドアグッズを積んで、いざフィールドへ。荷室の容量は、後席を前後にスライドさせたり背もたれを倒したりすることで調節できる。
コールマンなどのしゃれたアウトドアグッズを積んで、いざフィールドへ。荷室の容量は、後席を前後にスライドさせたり背もたれを倒したりすることで調節できる。拡大
外観に比べると、タフな要素はさほど多くない「デリカミニ」のインテリア。現代の軽乗用車らしく、収納は豊富に用意されている。
外観に比べると、タフな要素はさほど多くない「デリカミニ」のインテリア。現代の軽乗用車らしく、収納は豊富に用意されている。拡大
後席には、ミニバンを思わせるピクニックテーブルも。
後席には、ミニバンを思わせるピクニックテーブルも。拡大
後席はなんと、前後に320mmもスライドできる。背もたれのリクライニングも可能だ。
後席はなんと、前後に320mmもスライドできる。背もたれのリクライニングも可能だ。拡大

本格派までは必要ない

オンロード/オフロードを問わず、自動車に“本格”を求めるユーザーの数は今や少なく、そしてキャンプ等の野外アクティビティーにおいても、スズキ・ジムニーが必要になるほどの“本格”を求める人の数は少ない。大半の人が、路面が整備されたオートキャンプ場やちょっとした河原などで、家族で楽しく茶や焼きそばを囲んだなら、それで十分以上のハピネスを感じることができるのだ。

最低地上高がちょっと高くてオフロード車っぽいアピアランスがあれば十分であり、さらに生活ヨンクが付加されていれば、もう十分以上なのだ。「いや、お前は豪雪地帯のことを何もわかってない!」と声を荒らげる方もいらっしゃろう。だが、大変申し訳ないが、それは市場全体を俯瞰(ふかん)した場合は「特殊なケース」と言わざるを得ず、全体のトレンドとはまた別の話だ。

基本的には、以上の流れで2023年の軽乗用車市場は(たぶん)拡大することになるわけだが、さらに2023年中には王者「ホンダN-BOX」や古豪「ダイハツ・ムーヴ」もフルモデルチェンジするのではないかとうわさされている。そのため、いよいよ「軽乗用車市場がシュリンクする要因はどこにもない」と言うほかなくなってくるのである。

最後に「当たるも八卦(はっけ)当たらぬも八卦」ではあるものの、発売済みであるダイハツ・タント ファンクロスと、5月に発売される三菱デリカミニの「どちらがより売れるか?」を予想してみたい。

難しいところだが……「話題性とデザイン性でデリカミニがタント ファンクロスを大きくリードするものの、三菱自動車のディーラー数の少なさがたたり、結局は僅差でダイハツ・タント ファンクロスの勝利」といった展開になるだろうか。

まぁここについてはあまり自信がないが、いずれにせよ、両モデルともよく売れることだろう。

(文=玉川ニコ/写真=三菱自動車、webCG/編集=関 顕也)

アウトドアといっても、大半の人は本格オフローダーを使ったエクストリームなアクティビティーなど求めていない。ちょっとした未舗装路を走るくらいなら「デリカミニ」で十分なのだ。
アウトドアといっても、大半の人は本格オフローダーを使ったエクストリームなアクティビティーなど求めていない。ちょっとした未舗装路を走るくらいなら「デリカミニ」で十分なのだ。拡大
がっちりしたデザインの15インチホイールは、「デリカミニ」のタフなイメージづくりに大きく貢献している。ちなみに最低地上高は、FF車が155mmで4WD車が160mm。
がっちりしたデザインの15インチホイールは、「デリカミニ」のタフなイメージづくりに大きく貢献している。ちなみに最低地上高は、FF車が155mmで4WD車が160mm。拡大
はっ水加工が施された「デリカミニ」のシート。タフ系をうたうからには、こうした機能的な装備は欠かせない。
はっ水加工が施された「デリカミニ」のシート。タフ系をうたうからには、こうした機能的な装備は欠かせない。拡大
タフなイメージが演出される一方で、運転支援系の機能もしっかり盛り込まれている。写真は、上から見たように車両周辺の様子を映し出せる「マルチアラウンドモニター」の表示画面。
タフなイメージが演出される一方で、運転支援系の機能もしっかり盛り込まれている。写真は、上から見たように車両周辺の様子を映し出せる「マルチアラウンドモニター」の表示画面。拡大
「デリカミニ」の正式発売は2023年5月。自然吸気モデルとターボモデルがラインナップされる。
「デリカミニ」の正式発売は2023年5月。自然吸気モデルとターボモデルがラインナップされる。拡大
玉川 ニコ

玉川 ニコ

自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport EX」。

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