トヨタ・クラウン クロスオーバーRS“アドバンスト”(4WD/6AT)/クラウン クロスオーバーG“アドバンスト・レザーパッケージ”(4WD/CVT)/クラウン クロスオーバーG“アドバンスト”(4WD/CVT)
みなぎる全能感 2023.03.06 試乗記 16代目で旧来のイメージを一新し、ガラリと生まれ変わった「トヨタ・クラウン」。その第1弾として登場した「クロスオーバー」は、果たしてその名に恥じないだけの走破能力を備えているのだろうか。冬の北海道で試してみた。FFと呼ばないで
自分のようなクルマ漬けの仕事をしていても「とうとうクラウンもFFになっちゃってなんか調子狂う感じだよねー」などと飲み屋でうっかり口にしてしまうのだけれども、新しいSH35系クラウン クロスオーバーは全グレードが4WDとなっている。
まさに自分のような口さがない輩(やから)にFFと揶揄(やゆ)されるのが嫌だなあと思ったからか、はたまた新たに挑戦する北米市場のスノーベルトや東海岸では4WDがマストとなっているからか。エンジニアに尋ねたらあきれ混じりの苦笑が返ってきた。まぁ走ってみてください、と。
場所は北海道の士別にあるトヨタのテストコース。初代「レクサスLS」の開発に歩を合わせるかたちで1987年に全面開業となった、同社の実験施設では最大規模となるコースである。特に冬季は低温環境でしか確認できない試験が積み上がるそのコースの運用が終わった週末を活用して、クラウン クロスオーバーの雪上試乗の機会を設けてくれたというわけだ。
クラウン クロスオーバーのパワートレインは2つ。共にフロントアクスル側はエンジン+モーターのハイブリッド、リアアクスルはモーターのみで駆動するが、グレードごとの仕様は大きく異なっている。
「RS」の側はトヨタとしては初採用となる「デュアルブーストハイブリッド」+「E-Fourアドバンスト」で、フロントアクスル側には駆動と回生を兼ねた高トルクモーターが1つ、6段ATのトルクコンバーターを取り払ったスペースに置かれている。これを2.4リッターターボユニットと多板クラッチを介して組み合わせることで強力なパワーを得るとともに、それに合わせるかたちでリアアクスルには水冷式モーターを組み合わせ、リアタイヤ側も大きな駆動力を継続的に発生できるようにしつらえている。システム出力は349PS。チューニングは違えど同様のシステムを採用する「レクサスRX500h」の、その車名が示すとおり5リッター級のアウトプットが売りとなっている。
変幻自在の前後駆動力配分
ベースグレードの側は従来の2モーター構成の「THS II」とリアアクスルにモーターを備えた「E-Four」となる。2.5リッターエンジンとの組み合わせによるシステム出力は234PS。こちらのリアモーターは空冷式だ。ともにバッテリーは現行「アクア」から採用されるバイポーラ型ニッケル水素電池で、これまでのニッケル水素電池に比べると通電面積が広いため出力や瞬発力が高められるのが特徴だ。
どちらも駆動ロジックは前後100:0のFFを基本とするものの、その状況は巡航時などの低負荷・高効率時に限られ、例えばドライ路の発進や緩い旋回時などでも積極的にリアモーターを用いて駆動をアシストしている。その配分は最大時で20:80と大幅にリア側に振り向けているのが特徴だ。さらに液冷化によってリアモーターを定常的に用いることができるRSのE-Fourアドバンストは、加速姿勢や旋回状況なども勘案しつつ40:60~60:40の間を積極的に使い分けている。
この新たな概念でチューニングされたモーター駆動4WDに組み合わせられるのが「DRS」=4輪操舵だ。最大4度という後軸舵角を、60km/h付近を境に同相と逆相を使い分け、アジリティーとスタビリティーの両面に寄与するという。ちなみに、これらの駆動メカニズムはトリムなどによることなく全車に標準装備。ゆえにグレードによる走りのキャラクターは、標準もしくはオプションで設定される3種類のタイヤサイズによってのみ異なることになる。
今回試乗したのは標準の21インチを履くRS、21インチと19インチを履くベースグレードという3種類だった。
効果絶大のDRS
21インチのRSに乗ってまず感心したのは、低ミュー下とは思えない舵角でもぐんぐんインを捉えていくライントレース性の高さだ。特殊なタイヤサイズにもかかわらずすでに最新の「ブリザックVRX3」が用意されていることにも驚いたが、それを履いていることを差し引いても、常識的な速度域ではアンダーステアが表れる気配すらない食いつきぶりはちょっと異様でもある。
この特性に大きく寄与しているのは間違いなくDRSだろう。それに加えて、駆動状況を示すメーター内のインジケーターをつぶさに確認していると、駆動制御の妙も見てとれる。クラウン クロスオーバーの制御ロジックは基本的に前述したとおりだが、ヨーレートや舵角、速度は随時捕捉、さらには雪上など路面状況の変化もADAS用カメラ映像で監視しており、低ミュー判定時には積極的に50:50に駆動配分を近づけて安定側に振り向けるパラメーターも加えられているという。
ベースグレードの21インチもクルマの動きはRSと大差なく、その操舵追従には驚かされる。インジケーターを確認するとパーシャルスロットルでのグリップ旋回時であっても、前後の駆動配分は細かく動きながら想定したアールを描くうえでしっかりアシストしていることがよく分かった。一方の19インチはスタッドレスの銘柄がひと世代前の「ブリザックDM-V3」だったことや、たわみ要素の違いなどもあって、21インチモデルのように物理法則を見失いそうなほどの路面トレース性は望めなかった。が、それでもこの車格や重量の4WDとしては立派なものである。ちなみにベースモデルのリアモーターは強制冷却機構を持たないが、雪上環境であれば温度的な課題もなく性能を安定して継続的に引き出せるという。
アクセルひとつでオーバーステアにも
と、ここまでは安定盤石のトヨタ的価値軸にのっとった話に聞こえるかもしれない。雪慣れした北国のドライバーや、腕に覚えのある方なら、雪上環境であえてオーバーステア状態を使って走りたくなる場面に出くわすこともあるだろう。
クラウン クロスオーバーのもうひとつの特徴は、E-Fourでありながらそういうきっかけをアクセル操作で生み出すことが可能ということだ。ドライブモードを「スポーツ」や「スポーツプラス」にすれば、ある程度のアングル維持まで許容しながらつづら折れのような場面をコンパクトに曲がることもできる。アングルがつきすぎるとVSCがガチッと介入して姿勢を正すので、故意に大振りしていくような運転さえしなければ危なっかしさはまったくない。
今回はテストコースということで、そのVSCをカットして大きく滑らせるような運転も試してみたが、ここで感心させられたのはRSの絶妙な駆動配分によるドリフトコントロール性の高さとさほど違わぬパフォーマンスを、ベースモデルのE-Fourでも味わえることだ。ドライのワインディングでより楽しめるのはもちろんRSだが、パワーに頼らない低ミュー環境ではベースモデルでもアクティブなハンドリング性能を発揮する。
後軸が動く、回る。その意味は日常環境で乗るぶんには伝わりづらい。なんならFFでもよかったんじゃないかと思うこともある。が、こうして悪環境で乗ると答えが分かりやすく見えてくる。歴史上、ここまで全能化したクラウンは前例がない。このクルマはクロスオーバーというコンセプトそのままに、出くわすあらゆる状況を縦横無尽に、そして快適に楽しく走るということが大事な提供価値として企てられたのだろう。そして思ったのは、トヨタの四駆はオマケみたいなもんだから……という認識はいよいよ改めなければならないということだ。ゲレンデで出くわすクラウン クロスオーバーは、侮らないほうがいい。
(文=渡辺敏史/写真=トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)
拡大 |
テスト車のデータ
トヨタ・クラウン クロスオーバーRS“アドバンスト”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4930×1840×1540mm
ホイールベース:2850mm
車重:1950kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:272PS(200kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:460N・m(46.9kgf・m)/2000-3000rpm
フロントモーター最高出力:82.9PS(61kW)
フロントモーター最大トルク:292N・m(29.8kgf・m)
リアモーター最高出力:80.2PS(59kW)
リアモーター最大トルク:169N・m(17.2kgf・m)
システム最高出力:349PS(257kW)
タイヤ:(前)225/45R21 95Q/(後)225/45R21 95Q(ブリヂストン・ブリザックVRX3)
燃費:15.7km/リッター(WLTCモード)
価格:640万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:---km/リッター
拡大 |
トヨタ・クラウン クロスオーバーG“アドバンスト・レザーパッケージ”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4930×1840×1540mm
ホイールベース:2850mm
車重:1790kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:186PS(137kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:221N・m(22.5kgf・m)/3600-5200rpm
フロントモーター最高出力:119.6PS(88kW)
フロントモーター最大トルク:202N・m(20.6kgf・m)
リアモーター最高出力:54.4PS(40kW)
リアモーター最大トルク:121N・m(12.3kgf・m)
システム最高出力:234PS(172kW)
タイヤ:225/45R21 95Q/(後)225/45R21 95Q(ブリヂストン・ブリザックVRX3)
燃費:22.4km/リッター(WLTCモード)
価格:570万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |
トヨタ・クラウン クロスオーバーG“アドバンスト”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4930×1840×1540mm
ホイールベース:2850mm
車重:1790kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:186PS(137kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:221N・m(22.5kgf・m)/3600-5200rpm
フロントモーター最高出力:119.6PS(88kW)
フロントモーター最大トルク:202N・m(20.6kgf・m)
リアモーター最高出力:54.4PS(40kW)
リアモーター最大トルク:121N・m(12.3kgf・m)
システム最高出力:234PS(172kW)
タイヤ:(前)225/55R19 99Q/(後)225/55R19 99Q(ブリヂストン・ブリザックDM-V3)
燃費:22.4km/リッター(WLTCモード)
価格:510万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】 2026.8.21 メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。
-
マツダCX-5 L(4WD)【試乗記】 2026.8.19 マツダの販売の中軸を担うミドルクラスSUV「CX-5」が、3代目にフルモデルチェンジ。その完成度にはどうしても期待してしまうところだが、実車の仕上がりはどうだったのか? 絶対に失敗の許されない、マツダの基幹車種の実力に触れた。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(FWD)【試乗記】 2026.8.18 クルマの進化か、充電インフラの進化か、それともCEV補助金拡充の効能かは定かではないが、ようやく日本の電気自動車(BEV)も普及期を迎えつつある。ことに「bZ4Xツーリング」は豊かな一充電走行距離と優れたドライバビリティーが自慢のトヨタの最新作だ。FWDモデルの仕上がりをリポートする。
-
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(4WD)【試乗記】 2026.8.17 BMWの新世代電気自動車の第1弾である「iX3」がいよいよ日本の道を走り始めた。さすが「ノイエクラッセ」をうたうだけあって、内外装だけではなく、運転感覚もまた新しい。「Mスポーツ」グレードの仕上がりをリポートする。
-
NEW
OEM車で自社製品らしさを出すために、多田さんだったら何をする?
2026.8.25あの多田哲哉のクルマQ&A他メーカーが開発したクルマを、自社製品として別の名前でユーザーに供給するOEM車。エンジニアの工夫次第で、オリジナルとは異なる独自の個性を出すことはできるのか? 元トヨタの車両開発者、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.8.25試乗記BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。 -
NEW
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】
2026.8.25試乗記カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。 -
NEW
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】
2026.8.24試乗記スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。 -
デビュー4年でどう変わる? 最新型「トヨタ・クラウン クロスオーバー」の詳細を予測する
2026.8.24デイリーコラム2022年7月のデビューから4年がたち、仕様変更が予告された「トヨタ・クラウン クロスオーバー」。では、どこがどう変わるのか? 最新型の発売を前に、さまざまな角度からポイントを予測してみよう。 -
トヨタRAV4アドベンチャー(前編)
2026.8.23思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「トヨタRAV4」に試乗。ご存じのとおり今やトヨタの屋台骨を支えるSUVであり、先代モデルではグローバルでの年間販売台数が100万台に到達。世界で最も多く販売されるトヨタ車の6代目だ。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。




















































