スズキ・ソリオS(FF/CVT)【試乗記】
個性をもっと! 2011.01.21 試乗記 スズキ・ソリオS(FF/CVT)……175万5600円
「軽では足りない、ミニバンでは大きい」というユーザーがターゲットだという新型「スズキ・ソリオ」。その走りと使い勝手を試してみた。
改名しないの?
「ソリオ」といえば、もともとは軽乗用車「ワゴンR」をワイドにして登録車として売り出した「ワゴンRワイド」の流れをくむモデルだ。途中、「ワゴンRプラス」「ワゴンRソリオ」と名前を変え、2005年からこの名前に落ち着いているソリオはまるで出世魚のようだが、2010年12月のフルモデルチェンジでは、期待に反して(!?)同じ名前で登場。反面、中味は劇的に変わっており、個人的には改名したほうがよかったんじゃないかと思うくらいだ。しかし、スズキの中では“せっかく浸透してきた名前を捨てるのはもったいない”という意見が強かったようだ。
それはさておき、ソリオがどのくらい変わったかというと、“コンパクトハイトワゴン”というキーワードこそ共通だが、ワゴンRの面影は消え失せ、むしろ同社の「パレット」をワイドにしたようなスタイルに生まれ変わっている。つまり、両側スライドドアを備えた、背の高いコンパクトワゴンである。実際はパレットの幅を広げたわけではなく、新たなプラットフォームをつくったというのがスズキの言い分だが、買う側にとってはそんなことはそれほど重要ではなく、見栄えのするフロントマスクと便利なスライドドアを手に入れたことを喜ぶ人は多いに違いない
日本のミニバンでは必須アイテムといえるスライドドアをソリオに採用したのは、ミニバンから乗り替えるユーザーを取り込みたいという理由からだ。7人分のシートは要らないから全長は短くてもいいけれど、広くて天井の高いラゲッジスペースと便利なスライドドアは手放せない……。そんな“ダウンサイザー”がターゲットというわけだ。さらに、軽自動車からのステップアップ組にも狙いを定めるのが、新しいソリオなのだ。
たしかに広いし、居心地もいい
実車を目の当たりにした印象は、軽のワゴンRやパレットとは違い、横幅が広がったぶん、とてもバランスよく見えるし、安定感も十分で、端的にいえばよくまとまっている。それだけに弟たちのような強い個性は感じられず、街ですれ違っても、「あのクルマ、なんだっけ?」ということになりかねない。出しゃばりすぎたデザインよりはいいと思うけど。
エクステリアでは驚かなかった私だが、室内を覗いてびっくり。その広さに唖然とした。軽のパレットでも広いと感じるのだから、全幅が145mmワイドなソリオなら呆気にとられるのも無理はない。後席のスペースも目を見張るほどで、シートスライドを一番前に出しても十分に余裕があるし、一番うしろなら楽に足が組めるほどだ。天井も高く、私には持て余すくらいの広さだが、ミニバン慣れした人たちには、これくらいのインパクトが必要なのだろう。一方、ラゲッジスペースは、3710mmの全長からすれば妥当な広さで、荷物が多いときには後席を少し前にスライドさせたり、後席を倒したりすることでスペースの拡大が可能。スペースの確保のうまさは、お世辞抜きにお見事である。
さらに印象を良くしたのは、インテリアの上質さだ。最近のスズキに共通の嫌みのないデザインや質感の高いダッシュボードに加えて、見た目も触り心地も文句ないシートやドアトリムなど、広さだけでなく、居心地の良さも、ソリオの美点として挙げておきたい。
そつのない仕上がり
走らせてみると、これまた嫌みがない。搭載される1.2リッターエンジンは、スイフトと同じK12B型で、91psと12.0kgmの実力の持ち主だ。最近はやりの副変速機付きのCVTが組み合わされて、別段速いわけではないが、街中を走るかぎり流れに乗り遅れる心配はないし、アクセルを深く踏めば、3000rpmを超えたあたりから、力強さも感じられるほどだ。低回転でアクセルをポンと踏んだときにワンテンポ遅れるような動きが見られたのが少し気になったが、トータルでは実用性はまずまずといえる。
乗り心地は快適で、背が高いクルマによく見られるボディの揺れも気になるほどではない。街中中心の試乗だったため、高速でどんな挙動を示すのかは確認できなかったが、大きく外すことはないだろう。
このように、そつなく仕上がったソリオは、軽自動車よりも余裕があり、ミニバンよりも扱いがラク。便利なファミリーカーとして4人家族にはぴったりというところで、あとは、トータルコストの安い軽自動車や、いざというとき7〜8人乗れるミニバンに勝てるだけの魅力をうまく打ち出せれば、成功に結びつくのではないだろうか。
(文=生方聡/写真=荒川正幸)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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