ADASのあるクルマづくりの長所と短所について

2023.04.18 あの多田哲哉のクルマQ&A 多田 哲哉
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先進運転支援システム(ADAS)の普及によるクルマづくりのメリットとデメリットを教えてください。安全性能が高まるということのほかに、どんな点で好ましいか。逆に失われるもの、マイナス要素としては、どんな点があるのでしょうか?

ADASというと、皆さんはまず、自動追尾してくれるクルーズコントロール(ACC)みたいなシステムを想像されると思います。私自身はといえば、それが搭載されていないクルマは買いたくないと考えているほどです。

そのACCの機能を全面的に信用するかどうかは別として、このシステムのおかげで、車両の側方や後方にドライバーがより多くの注意を払えるようになったのは確かだと思います。これらを運転の補助装置として上手に使って、今まで気がつかなかったところに意識を向けられるようになるのは、好ましいことですね。

デメリットがあるとすれば――これはクルマをつくる側の話ですが――ADASの採用に際してはカメラやセンサーのレイアウトに配慮しなければならないため、車両のデザインに大きな影響がある、ということでしょうね。当然カスタマイズの余地も小さくなりますし、ローダウンやリフトアップ、バンパーの交換などは、ADASの機能にとって致命的なことになりかねません。そうした位置が少しずれてもカメラ側で補正するという研究も、行われてはいるのですが……。

とはいえ、ADASが普及していくこと自体は、間違いなく望ましいものだと思います。

多田 哲哉

多田 哲哉

1957年生まれの自動車エンジニア。大学卒業後、コンピューターシステム開発のベンチャー企業を立ち上げた後、トヨタ自動車に入社(1987年)。ABSやWRカーのシャシー制御システム開発を経て、「bB」「パッソ」「ラクティス」の初代モデルなどを開発した。2011年には製品企画本部ZRチーフエンジニアに就任。富士重工業(現スバル)との共同開発でFRスポーツカー「86」を、BMWとの共同開発で「GRスープラ」を世に送り出した。トヨタ社内で最高ランクの運転資格を持つなど、ドライビングの腕前でも知られる。2021年1月に退職。